第2話 灰色の海①

幽霊くんからもらった切符、それからカメラと、自分でもよくわからないけどあいつと写った写真を鞄に入れ、早速週末出かけてみることにした。

不思議なことにもらった切符は使え…るはずもなく、同じ行先の切符を自分で買った。


なんてことのない殺風景な海だ。エメラルドに輝くことも無く、かといって深い青でもない。

濃い緑色に汚れかけの灰色の海だ。

この海は露店やら何やらが軒を連ねる観光地になりそびれたのか、いじけたように波を打っていた。

家族連れや釣りをする人、それなりに人がいるから寂しい雰囲気はない。

海の家的なのもあったから、焼きそばとビールを頼んで食べた。でもこの美味しそうな昼食は写真に収めようとは思わなかった。

ただひたすら「うまっ」を心の中で連呼しながら、ガツガツと食べ進める。

カメラを持ってるわけだし、このいじけた海をいい感じに撮ってあげようかなと思い立ち、浜辺を歩く。

歩いていると、高校生くらいの男の子とそのおじいちゃんらしき人影が波打ち際ぎりぎりで道路の方を見ていた。


海に来たのだから、海を見ればいいのに。


そんなことを思えたのも、彼らが透き通っていると気づくまで。

幽霊なんだ、あの人たちも。

もしかしてあの幽霊犬の飼い主?とも思ったけど、何となく「ワンッ《違う》」と言ってる気がした。



「あの、海見ないんですか。まあ、凄い綺麗なわけじゃないですけど」



自分でも驚きが隠せない。

俺は今、幽霊に話しかけている。

幽霊犬みたいに明確に会話は出来なかった。ただ、二人は首を横に振って足元の波打ち際を見つめては、浜辺を見ている。

溺れた…とかかな。

二人は遊泳する格好をしてるし、もしかしたらそのまま戻って来れなくなっちゃったのかもな。

海で死ぬと浜辺に上がれないのか?と心の中では考えながら、ごく自然に「撮りましょうか?」と言っていた。

驚いたようだったけど、こくんこくんと嬉しそうに頷く二人。

高校生くんの方が指さした先を見ると、丁度ビニール袋を振り回す女の子と花を持った母親、二人を追いかける父親が歩いてくるところだった。



「ご家族ですか?」



うんうんと頷くので、凄く緊張したけどその家族に被写体になってほしいと頼んだ。あっさり了承を得られたので、カメラを覗き込み五人を写す。

恐ろしいことに女の子が「お兄ちゃんとおじいちゃんも後ろでピースしてるかも」なんて言うから、顔が引きつった。

ほんとにピースしてるよ、二人とも。



「はい、チーズ」

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