ふらふら
星多みん
彼は夜道を歩く
ふらふらと歩いている時の事です。ゆらゆら提灯が前からこちらに向かっているのが見えましてね。
自分は『はて、あれはなんだろうか、幻だろうか』と思いつつも、ゆらゆらと揺れている灯りを目で追うこと、提灯が前方二メートルに差し掛かった時に、頭から電流が流れた感じがしたのですよ。
何かを察知したのでしょうね。自分はそう、急いで一本道の横にある茂みに隠れて、ちーこな声で「あれは死者の祭りだ」と言うんです。
徐々に近づいて来たのか、右耳からは笛に弦楽器、ええ色々な和楽器の綺麗な音楽聞えて来ましたよ。綺麗でしたが、人間様からすれば死後の世界の何気ない雑音みたいなもので、見つかれば殺されると本能と一緒に体の震えを押さえましたよ。
まだか、まだか…… そう思うこと数分、もっと長かったかも知れませんが、ふと好奇心から目を開けてみたんです。最初は何も見えませんでしたが、次第にうーすらと華やかな祭りが見えるんです。
そこには先日死んだはずの同志の山田さんも居て、何よりも楽しそうで、この世のものじゃない魅力から発された特別で秘密の祭り。自分はそれを見て、こう思ったんです。
『これなら命なんていらないや』って、
勿論そんなことが無いですよ。何を隠そう、自分は昔からヤンチャで一寸先は死みたいな事をして母に怒られていましたからね。でもですね、その時は本当に、そう思って立ち上がろうとしたんです。
ところで、何故にしたなのか、ずーと覗いていた自分は気が付いたんですよ。祭りは確かに楽しそうでしたけど、何かに怯えている様な気がしてね。それがあって魚の小骨が喉につっかえたように躊躇ってしまいまして『さぁ、どうしようか。このままでは祭りが終わってしまう』と熟考している時です。
さっきまで気にならなかった左耳から唸り音が聞えましてね。自分はそれを自然な流れで見たのです。いや、見てしまい全身に鳥肌が立ちました。
大きな口か門かは分かりませんが、ただ分かっているのはそれは名状しがたいナニカは皆が恐怖していることで、それに祭りの人は向かっていること。それと、目を背けたくても出来ないこと。
故に、ええ。自分はいつか何処かにある目と合ってしまうのではないかと不安になりましたが、そんなことはなく夜明けと共に祭りと共に消えるのを確認したら、急いで町に向かいました。でも母には「そんなつまらない話をしてないで、いつまでもふらふらしないで、早く真面目に働きなさい」と一蹴された後に説教を食らいました。
今はそれを幻だと思っていますが、ふらふらと何も志さない奴は山田みたく、怠惰の暴食に飲み込まれてしまうのではないかと。そう思うようになっては、自分は真面目に人に語りかける仕事を淡々としています。
ふらふら 星多みん @hositamin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます