第3話 最強美少女たち、降臨!?
「うおおおおー!! スゲー! 美少女オールスターがここに来るのかー」
男子棟の会議室に飢える野郎たちのアホな声が響いている。アホと言ってもいつもの見知った生徒会メンバーなわけだが。
昨日の電話の内容をおさらいしつつ、副会長である
内容はというと、
「歴代の美少女選抜者たちがこ、こここ……」
「落ち着け、
会計の上田は普段俺たちの前では滅多に取り乱すことが無い。それが美少女選抜が来ると聞いただけでこのザマだ。何もかもが叶わないと知りながらも、上田にとって天と地がひっくり返る出来事だったに違いない。あるいはよほど飢えていたとか。
普段は幽霊メンバーな彼らも似た反応を見せていて、言語能力すら失ってしまっている。この中で正常なのは俺と北門、それとかろうじて下道くらい。
「すげぇっすねー……この部屋に美少女たちが降臨するなんて」
「大げさだな。別に全身が光ってるわけでも無いし、とびっきりの笑顔を無駄に振りまいてくれるわけでもないんだぞ?」
どうせあの礼儀知らずな優勝者と金髪推し女が来るだけだろう。アレらに敬う必要なんて無いと思うが……
「……美少女さんたちはともかく、生徒会長として僕たちに何か言っておくことはある?」
「強いていうなら、理性だけは保っとけくらいだな。言っとくが美少女に夢なんて
「それは厳しいね……翔輝って本当に興味無いんだね」
「普段が普段だからな」
語彙力がほぼ無いのもいれば礼儀知らずもいるから別に興味なんて持ちようも無いだろ。
「あ、女子たちが来るまでまだ時間があるけど、どうする? 掃除しとく?」
生徒会メンバーの中で唯一、副会長の北門がまとも思考だ。美少女だからと慌てないし、俺以外のメンバーたちにも冷静に対応する。
といっても女子棟に行きたがらないところをみれば、女子が苦手あるいは……
「……別にいいんじゃないか? 掃除なんかしたらそれこそ相手の思うつぼだぞ? なぁ、下道」
「そ、そっすね。調子づかせるとトイレとかロッカーの問題がもれなくついてくるっす」
「そういうことだからホコリだらけの会議室で迎えてやろうぜ」
「い、異議なし」
「僕は一応気にしといたからね?」
ホコリが所々に見えるだけで、会議室全体がおそろしく汚いわけじゃない。そういう意味でもそこまで心配する必要は無いはずだ。
放課後の貴重な時間を潰すこと十分後。廊下から何やら賑やかな声をさせながら、会議室のドアが勢いよく開かれた。
「うっわーー……汚っったなーい!!」
部屋に入ってすぐに声を上げたのは、金髪女子の九賀だ。あの時もそうだったが、この女子はかなりの行動力があるとみた。男子に慣れているのか、汚いと言いながらも目標を捕捉したかのように、部屋の中に突き進んで来る。
「すみませーん、こんな部屋だってこと聞いて無いんだけどー?」
九賀が突撃して近づいたのはホワイトボード前に立っていた副会長だった。俺を除く他のメンバーはきっちりと椅子に座っていて、とっさに反応が出来ずに固まっていたからだ。
「ごめんなさい。掃除をする時間が取れなくて、僕は生徒会メンバー副会長の
何て礼儀正しい奴なんだ。
「えっ、あ……私、推し女の九賀みずき……です」
「よろしくお願いしますね、九賀さん」
この反応は惚れたな。
「見つめ合ってるところ悪いけど、俺は――」
「は? あの時の失礼男が何でここにいるわけ? 美少女選抜優勝者すら知らないくせに、場違い感半端ないんですけどー?」
「そりゃひどいな。なぁ、純。副会長から衝撃の事実を教えて差し上げてやってもいいぞ」
同じクラスの友達でもある純のことは、教室以外では北門と呼んでいる。だがこういう時に呼べば純はもちろんのこと、相手も何かに気づくはずだ。
「ま、まさか……フツメンが生徒会長――そ、そうだ、呼ばないと!」
すぐに真実に気づいてくれたようで、まだ部屋に入って来ない女子たちを慌てて呼びに行ってくれた。
「不意打ちすぎない? 翔輝」
「構わないだろ。相手さえ気づけばこっちのペースだからな」
「でもやっぱり掃除しとけばよかったね……」
「次があったらそうしよう」
廊下に消えた九賀はまだ戻って来ず、例の美少女も姿を見せない。そんな状況はお構いなしと言わんばかりに、廊下からの制止を振り切って別の美少女が部屋へと入ってきた。
その美少女は部屋の中を一通り見回した後、俺に向かって声を上げた。
「コホン! あたし……あたくしは霞ノ宮から参りました最強美少女、草壁新葉ですのよ! 様子を伺っていましたけれど、失礼極まりない男子はそこの翔輝……正気を持ってない男子で合っておりますの?」
一体何時代のどこの令嬢なんだ?
どうせ緊張して台本通り言えなくて、適当なアドリブで誤魔化してるんだろうけどな。案の定あたふたしながら次が言えない新葉が廊下を気にしている。
そこに、
「……失礼しますね、生徒会長さん」
「――! 構いませんよ。とりあえずそこのびしょ……令嬢もどきを落ち着かせてもらえると助かります」
新葉の取り乱しを予期していたかのように部屋の中にすぐ現れたのは、
「ありがとう、南くん。少しだけお時間くださいね」
「いえ、こちらこそ。それが迷惑かけてて申し訳ないです。
「承知してますよ、生徒会長さん」
相変わらず綺麗な人だ。美少女というより綺麗なお姉さんと言っていい。
「翔輝会長。い、今のは誰っすか?」
「翔輝。最初の不思議な美少女もそうだけど、今の人って……モデルの
「す、すげぇぇぇぇ!! マジでオールスターがぁぁぁぁぁ」
「上田は落ち着け。今のはアレだ。美少女選抜の準優勝のアレだ。アレを連れて行ったのは純の言うとおり、モデルをしてる先輩だ」
美少女選抜とかよりも七先輩と話す方が緊張するのは確かだな。
「そうだったんだ。どうりで見たことあると思ってたよ。でも、翔輝とは知り合いみたいな感じだったけど?」
いちいち説明しなくても、もうそろそろ真打ち美少女が入って来るはずだ。
「お待たせしてごめんなさい! 生徒会長さ――」
何だ?
推し女から俺のことを聞いたんじゃなかったのか?
開いた口が塞がらないと言わんばかりなこの反応はまるで――
「――世の中、おかしなことが色々ありますからね。そうだろうと思ってました……あなたもそうですよね? 普通の低スペック男子さん」
おい、追加されてるぞ。新葉の入れ知恵か?
「すみません、名前何でしたっけ?」
「…………この――」
「はい? あぁ、思い出せそうです。セミなんとかさんだ!」
「面白いですね、そこの人……」
「いえいえ、それほどでも」
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