第21話

『人格融合…』


(あぁ。あくまで想像の域を出ない話ではあるが可能性はかなり高い)


 感覚の共有に魔力の共有。思考の共有まで行われるとすると気になるのが人格についてだ。


 2つの人格が溶け合い、1つの人格を形成する。その場合、その人格は本当に俺たちのものと言えるのだろうかという話だ。


『いいよ。やっても』


(いや、今の状態でやるつもりはない)


 思っていたよりも精神状態が不安定のようだ。そんな状態で行えば間違いなくこいつの人格は俺の人格に取り込まれてしまう。


『別にいいよ。そもそも死んでるんだし』


(それでも魔王を倒した勇者かよ)


『勇者だからこそだよ』


 そう吐き捨てるように言った。そして興奮したように捲し立て始めた。


『勇者はいきなり他人のために命をかけろって言われる。こっちのことなんて気にもしないで。それがどんなに辛いかわからないだろ』


 そんなことは俺にわからない。俺は誰かの期待を受けることなんてなかったから。


 全く逆の生活をしていた人間のことなんてわからない。


『ずっとパーティーの仲間達のことを考えてたんだ』


 落ち着いてきたのかさっきまでよりも口調が穏やかになった。


『見たことのない守る人より身近な人のために戦う方がやる気が出るから。それなのに、仲間を辛い目に合わせた』


 涙は出ない。だって首から上がないから。感情が発露することなく鎧の中を巡るだけ。


(くだらねぇ)


 そんな感情に俺は興味はない。

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