第21話
『人格融合…』
(あぁ。あくまで想像の域を出ない話ではあるが可能性はかなり高い)
感覚の共有に魔力の共有。思考の共有まで行われるとすると気になるのが人格についてだ。
2つの人格が溶け合い、1つの人格を形成する。その場合、その人格は本当に俺たちのものと言えるのだろうかという話だ。
『いいよ。やっても』
(いや、今の状態でやるつもりはない)
思っていたよりも精神状態が不安定のようだ。そんな状態で行えば間違いなくこいつの人格は俺の人格に取り込まれてしまう。
『別にいいよ。そもそも死んでるんだし』
(それでも魔王を倒した勇者かよ)
『勇者だからこそだよ』
そう吐き捨てるように言った。そして興奮したように捲し立て始めた。
『勇者はいきなり他人のために命をかけろって言われる。こっちのことなんて気にもしないで。それがどんなに辛いかわからないだろ』
そんなことは俺にわからない。俺は誰かの期待を受けることなんてなかったから。
全く逆の生活をしていた人間のことなんてわからない。
『ずっとパーティーの仲間達のことを考えてたんだ』
落ち着いてきたのかさっきまでよりも口調が穏やかになった。
『見たことのない守る人より身近な人のために戦う方がやる気が出るから。それなのに、仲間を辛い目に合わせた』
涙は出ない。だって首から上がないから。感情が発露することなく鎧の中を巡るだけ。
(くだらねぇ)
そんな感情に俺は興味はない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます