第12話

(もう大丈夫そうだ)


 小脇に抱えていた魔族の子供を下ろした。子供は手も震えている。どうやら怯えているようだった。


 魔族は人間よりも魔力に対する感覚が鋭い。おそらく俺達の人でも魔族でもない異質な魔力を感じとっているのだろう。


『もう大丈夫だよ』


 テレパシーで声をかけると子供はビクッと身体を震わせた。


「お前は何なんだ?人間じゃないし、奴隷の俺を連れ去るし。奴隷の紋章もお前がやったんだろ」


「そうだなぁ。私達もよくわからないんだよ。強いて言うならモンスターなのかな?どう思う?」


「モンスター!?何が狙いだ!知能のあるモンスターは強いのは知ってるぞ」


 明らかに俺に対する問いをスルーした結果、誤解を生んでしまったらしい。


 これは俺には答えられない問いだ。それに子供は苦手だから関わりたくない。


『狙いなんてないよ。ただ君を助けたかったんだ』


 子供は疑いと恐怖が混ざった目でこっちを見続けている。これまでの厳しい生活の中で育まれた警戒心は天性の人たらしである勇者にも手強いらしい。


(これからどうするつもりだ?)


 子供には聞こえないようにテレパシーで話しかける。


『決まってないよ』


 一切後悔をしていないその清々しい声。思わず心の中でため息をついた。


 あまりに人が良すぎる。


(なら俺に任せてくれ。心当たりがある)


『本当?』


(ああ。でもその前に寄りたいところがある)


 チラリと子供の方を見る。いきなり話さなくなったのを怪しむように見ていた。

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