第10話

 魔族は人間とは近しくも遠い種族。


 身体の中に魔力を宿し、強靭な肉体と回復力を有す。


 魔法は魔族が作り出した技。本来は魔法は魔族しか使えない。魔法が使える人間がいるのは魔族の血が混ざっているからだ。


 そんな魔族を相手に人間の勝ち目はなかった。でもこの時期、人間側にはイレギュラーが存在していた。


 勇者と同行していた騎士、魔法使い、聖職者。彼らの参戦は盤面を全てひっくり返した。


 魔王討伐を目標としていた彼らにとって魔族は敵ではなかった。


『そんなはずがない。あいつらも魔王国の体勢を知っていたはず。あれは魔王あいつの独裁だった』


(なら、彼らは俺たち《人間》を選んでくれたんだろう)


『うっ』


 それっきり何も言わなくなってしまった。ただ、足を運ぶことなくずっと魔族で奴隷の少年の方に視線を送り続けているようだった。


 超えてはいけない一線は理解しているらしい。奴隷は所有物。正当な理由がない限り勝手に連れ去ることができない。


(気になるのか)


 沈黙が帰って来る。


(じゃあ、あいつ連れ去るか)


 身体がビクッと動く。


『そんなことしたら犯罪者になるよ?』


(だから何だ。俺もお前も死人だ。バレた所で問題ないだろ)


『でも服従の呪いはどうする。解呪できないんだろ?』


 奴隷は主人に逆らわないよう服従の呪いがかけられる。そして、一般的に解呪ができないとされている。


(大丈夫だ。解呪は俺がする)


 


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