秘密の教会

第7話

「いらっしゃい」


「1つどうだい、まけるよ」


「こっちも買ってってくれ」


 賑やかな市場の中を1人のガタイのいい人が進んでいく。その身体には紺色の外套が纏われている。


 フードを目深に被っているため顔はよく見えない。


「お兄さん、1つどうだい?」


 綺麗な白髪をした老人が話しかける。その手には真っ赤な果実が握られている。


 男はチラリと目線を老人に向けた。そして、

フードに手を当てて軽くお辞儀をし足早にその場を後にした。



『いやー危なかった。本当にこれで大丈夫?』


(問題ない。声をかけられたんだ。浮いていない証拠だ)


 薄暗い路地の裏。人目のつかない所で紺色の外套のフードを外す。


『あぶない』


 フードを外した拍子に落ちた首を慌ててキャッチする。その時除いた鎧は僅かに差し込む日光を受けて黒光していた。


(気をつけろよ)


 全身から血の気を引くのを感じた。


 死なないと言っても痛みも感じるし、何より怖すぎる。


(さっさと用事を済ませてこの村を出ようぜ)


 ここは忘れ去られた森ロストフォレストからほど近い田舎の村だ。人口も300人ぐらいだろうか。


 忘れ去られた森ロストフォレストから取れる珍しい品々の貿易を行なっているようで、他の村よりかは豊かな暮らしをしているようだ。


 この村にはこれからの旅を進めるために必要なものを準備するために立ち寄った。


 この村でしなければならないのは冒険者としてギルドへの登録と、洋服の新調だ。


 俺たちが羽織っている外套は忘れ去られた森ロストフォレストで拾った物。


 デュラハンは鎧を外したくないらしい。


 だから、鎧を着ても怪しまれないように冒険者という役職とそれに合う服が欲しい。


 そういうわけで、今に至る。


 路地裏から出て再び人の流れに身を委ねた。


『ねぇ、あれ何?』

 

 


 

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