第6話
(つまりこう言うことか?目の前にいるお前は昔話に出て来る勇者で、魔王と相打ちになって死んだって話は真っ赤な嘘。本当は魔王を倒した後に暗殺されて、ここで捨てられた死体からデュラハンになった)
『そうそう。まさか魔王と相打ちってことになっていたとはね』
今語り継がれている話では魔王と相打ちになったことになっている。ルズベリー王国でも勇者の葬式が行われた記録も残っていた。
デュエスト家は腐っても由緒正しい貴族家。かなりの量の記録が地下に眠っていた。そこは俺にとって宝の山だった。
おそらく、勇者の死によって再び世間が恐怖に包まれるのを避けたかったのだろう。もしくは…
(もしかしてお前を殺したのって…)
『その話はやめよう』
悲しそうな声が俺を遮った。
『そんなこと考えても意味がないよ。今、こうして奇妙な形でも生きているんだ。それで十分だよ』
そっか。そうだよな。
自分が殺された相手について興味の無いヤツなんているはずが無い。
俺が今考えたことなんかよりも長い間1人で考えていたはずだ。俺なんかが口を挟んでいい話ではない。
(すまない。考えが足りなかった)
自分の中で罪悪感と落胆が渦巻いていた。
『気にしないでよ。それより街って今どうなっているの?』
さっきまでと変わらない明るい声を聞いて心が少し晴れた気がした。さらに曇ったような気もした。
(お前、切り替えすごいな。俺ならあんな話の後そんなに明るく話せない)
『最初からこんな感じじゃないよ。最初は怒りとか悲しさとかでもう大変だったんだから。ほら、こんな感じでさ』
(プッ)
慌てた様子で身振りを交えて感情を表現するゴツい鎧の姿に思わず吹き出してしまった。
過ごした時間も短いし顔も見たこともない。でもこの人が優しいのはよく伝わって来る。
少し心が痛む。
『でもこんな身体になって考える時間も嫌になる程あった。長い間考える中で自分の中で納得行くところが見つかったんだ』
(そんなの見つかるんだ)
『うん。1人の死で沢山の人が安心して過ごせるならいいかなぁ〜ってね。だから今の生活について知りたいんだ』
(じゃあ見に行こうか)
『えっ?』
素っ頓狂な声と共に鎧の踊りが止まる。
(見に行こうぜ?街の様子)
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