第5話
(俺は死んだのか?)
『そうだね。君を見つけた時には首だけだったよ』
おそらく身体は護衛の奴らが持って帰ったか、モンスターが食ったのだろう。
理由はわからないが記憶と意識を残したままモンスターとして復活したらしい。そうとしか考えられない。
『大丈夫?』
デュラハンは頭のない身体で俺の顔を覗き込む。顔色はわからないが心配してくれているようだ。
(大丈夫だが、その身体でどうやって俺のことを知覚してるんだ?)
頭がないから目も耳も鼻もない。そんな状態で俺のことを知覚出来ているのはおかしな話だ。
『うーん、改めて考えると何だろう。まあ、気配?みたいな感じかな。何となくわかるんだ』
なるほど。あり得ない話でもない。
視覚を失うと他の感覚が鋭くなることがある。それと同様に視覚、聴覚、嗅覚を捨てることで残った触覚が遥かに鋭くなっているのかもしれない。
一般的なデュラハンも敵をきちんと認識できている。これまで気にもしていなかったがとても興味深い話だ。
(すぐにでも帰って研究したいところだな)
『君は研究者なんだね』
そういえば挨拶がまだだった。
(挨拶が遅れて申し訳ない。私はルズベリー王国、公爵家。デュエスト家当主バルガズルの次男。ディエスト・サッドマインです)
『おっと貴族様だったのか。それは申し訳ない。度重なるご無礼をお許しください』
(やめろよ。気持ち悪い)
『冗談だよ』
そう言って鎧を震わせる。笑っているようだ。俺もつられて笑い出す。
これからどうしようか。
モンスターになったせいでこれまで通りとはいかないだろう。たとえ誤魔化せたとしてもまた命を狙われるかもしれない。
まあ今は忘れよう。これからのことはゆっくり考えればいい。
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