第3話

『ねぇ、起きた?起きたよね』


 無邪気な声が頭に響く。


 どうやら気を失ってしまっていたらしい。いつのまにか洞窟の中にいる。


 首は痛いし、頭も何だかボーっとしている。身体に力が入らず、ピクリとも動かない。


 洞窟も森の中よりもさらにジメジメしていて気持ちが悪い。


『気分はどう?』


(最悪だ…ん?)


 声が出なかった。


『おーい、無視?』


 声の主は俺の後ろにいるらしい。


 身体が動かせないから姿も見えないし、声が出ないことも伝えられない。


『あっ、そっか。声出ないか。じゃあテレパシー使ってみて。念じる感じで出来るから』


 テレパシーは、初級魔法の1つで相手に思考を送りつけることができる。グループ戦闘で重宝する魔法だ。


(でも俺魔法使えないんだよ)


『そんなことないよ。いい感じ。出来てるよ』


(え?)


 これまで魔法が使えたことなんて一度もないし、これからもないと思っていた。


 何でテレパシーが使えているんだ?


 魔法は才能が全て。生まれた時から決まっている。


 魔法は魔法回路に魔力を流すことで発動する。


 魔力は丹田で作られている。魔力量は威力に比例するため魔力は魔法使いの力量を測る指針である。


 でもそれだけではダメだ。きちんと流せる魔法回路がないと意味ない。


 魔法回路は身体に刻まれていて、刻まれている魔法回路によって発動できる属性が変わる。


 魔法回路と魔力、両方が優れていなければ強力な魔法は使えない。


 俺は魔力がない。生まれつきだ。


 だから、俺が魔法を使えるはずがなかった。


 でもそんな驚きはすぐに吹っ飛んだ。


(ギィヤァァァァァァァァー)


 いきなり上がった悲鳴は静寂で満たされた洞窟の中で響くことはなかった。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る