第2話

 鬱蒼と茂る木々は僅かな空間を巡って上へ上へと陣取り合戦を行っている。


 昼間なのにも関わらず日光は届かず、薄暗いジメジメとした空間が広がっていた。


 ここは大陸の南の森。通称”忘れ去られたロストフォレスト”。


 この土地に踏み入れる者はいない。一部の学者を除いて。この土地にまつわる伝説がそうさせているのだ。


 この土地には未知の文明を持つ街があり、それを守るように強力なモンスターが住み着いているというものだ。


 実際この地には尋常じゃない魔力が漂っている。他の土地と明らかに違う。


 また、忘れ去られたロストフォレストを訪れて戻ってきた人間は1人もいないのだ。


 もしかしたら強力なモンスターに殺されたのかもしれないし、未知の文明の街で不自由のない生活を送っているのかもしれない。


 真実は誰もわからない。誰も返ってきていないのだから。


 俺も忘れ去られたロストフォレストの魅力に取り憑かれた1人だ。


 自分でも馬鹿げていると思う。でも好奇心には抗えなかった。


 後ろから着いて来ているのは護衛。


 忘れ去られたロストフォレストに突入する上で2人雇った。


 ヒュッ


 音が後ろから聞こえた。


 その音が聞こえた時、俺にはどうすることもできなかった。


 首のあたりの鋭い痛みと熱はかろうじて感じているが、他の感覚は次々になくなっていく。


 視界は暗くなりさっきまで感じていた鉄の匂いもしなくなった。


「じゃあな、貴族の蛆虫」


 ぼんやりとしていく意識の中、最後まで残った聴覚は聞きたくもない言葉をしっかりと捉えた。



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