Undeader's memory story ~ 死霊昔話~
サクセン クヌギ
2体のアンデット
第1話
「来たぞ」
人間の悲鳴に似た声が上がる。
家の上には弓を構えている者、魔法を発動しようとする者が待ち構えている。
目の前には白色の鎧に剣を構えた騎士が陣を展開していた。
おそらくこの国の全ての戦力が集結しているのだろう。悪くない腕の持ち主もいるようだが彼らの目には恐怖が浮かんでいる。
「すまないが指揮官を呼べ。出来れば話し合いで解決したい」
(さっさと片付ければいいだろ)
『それじゃ後々面倒くさいでしょ?』
しばらくして1人の男が出てきた。ガタイのいい身体で大剣を担いでいる。
「私がこの部隊を指揮しているアレイだ。要求とは何だ」
「王に合わせろ。王が持っているとある物が欲しい」
騎士たちの間にどよめきが起こる。
(そんな面倒くさい言い方じゃなくて首って言えばいいのに)
そんなことを言えば戦いになるのは目に見えている。少しでも可能性を潰さない言い方をしたまでだ。
もちろん、聞き入れられるとは思っていないが。
「すまないがそれは出来ない。ただそれを私たちが持って来ることは可能だ。それではダメだろうか」
「それは出来ない」
騎士の間に緊張が走った。
一触即発。どちらかが動けば戦いが始まる。沢山の人が死ぬ。
(行くぞ)
先に動いた。魔法の発動の準備の開始。戦いの火蓋は切って下された。
「弓兵、放て」
アレイの声が響く。
屋根から放たれた矢の雨のほとんどは鎧に跳ね返された。だが数本は鎧の隙間から身体を貫く。
『矢は効かないのに』
「魔法兵、放て。
頭上に出現する多くの魔法。前からは兵士たちがじわじわと距離を詰め出した。
(いいぞ)
魔法兵の頭上に展開されていた魔法は紫色の雷にかき消され、地上にいた兵士達も吹き飛ばされている。
「これは呪いか」
ただ1人魔法に耐えて苦しそうな声をかけてきた。アインだった。
「呪いは
(
「私達みたいなアンデッドには関係ない」
「そうか。アンデットなのか。なら良かった」
そうアレイが言うや否や地響きと共に大きな咆哮が轟いた。
咆哮によって空を覆っていた厚い暗雲が裂かれる。間から降り注ぐ白銀色の光を浴びるその姿はまさに地に降臨した神そのものだった。
その姿を見て身震いをした。死への恐怖。久しぶりに感じた。
「ホーリードラゴン…」
その存在を見て吐き気を感じた。それは決して恐怖からくるものではない。
ドラゴンは生まれた場所に影響を受ける。
火山のような高温の地で生まれればファイヤードラゴンに、氷山のような極寒の地で生まれればアイスドラゴンになる。
ホーリードラゴンは神聖で満たされている場所で生まれる。それもこの世では考えられないほどの濃い神聖で。
そんな場所は自然には存在しない。
だから作り出すしかない。それなりの代償、沢山の術師の命を犠牲にして。
(鬼畜だな)
『全て終わらせる。』
やっとだ。やっと全てが始まる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます