ファースト押し倒しってなに?
倉庫の屋根を殴るように降り注ぐ雨音。
駿は愛華の横に腰掛け貧乏ゆすりをしながら、理性と葛藤していた。押し寄せる背徳感に、迫り来る罪悪感にじっと堪えながら。
(せっかくの倉庫内イベントが……)
心は疚しさ全開だった。少しでも気を抜こうものなら、愛華に襲いかかり、消えることのない傷を刻みそうだし。
何より、こんな美少女と暗闇&狭い場所とか心臓がバクバクしないわけがない。
数分前よりも激しく唸る愛華を案じ、駿は愛華を一瞥すると、先程より大変なことになっていた。
額には大量の汗がびっしりと浮かび上がり、首筋には引っ掻いた痕。マットは綿が剥き出しにされ、爪がガタガタになっていた。相当掻きむしったらしい。
それだけではない。愛華は苦しさのあまり自身の首を締め上げ、身悶え、髪はぐしゃぐしゃで
それに暴れたせいか、体育着がペロンと捲れ、可愛いおへそが露出し、べたべたとしたその汗に欲情しそうになる。そのふくぅとしたおへそに吸い込まれるかのように指でその円をなぞりそうになる。
が、駿は捲れた裾だけでもと思い、ちょこんと摘みおへそを隠してあげようとした。その際に出来る限り見ないようにした。
頬が熱を保つのがわかる。一瞬外の雨に打たれてこようと思うくらいだ。
すると、あと少しというところで——邪魔が入った。
バシャバシャとかけてくる二人の足音。
そして——
「お、姉さんみっけ——ってえ⁉︎」
「どうしたのですか彩芽さん。まさかお姉様に何か⁉︎」
彩芽と星良が現れた。
「……ッ⁉︎」
駿は驚愕でバランスを崩すし——愛華の上をに倒れ込んでしまった。
「「……⁉︎」」
星良と彩芽は目玉が飛び出んばかりに目を見開いた。星良は口を押さえ、彩芽は拳を握りしめる。
「……ってんめぇ、なんちゅう羨ましいことを」
「私だって、まだしてないのに! お姉様のファースト押し倒しを⁉︎」
二人は欲望を吐露し、星良に関しては聞いたことのない単語を口走っていた。
「……ん、んん……なんですの? ……なんだか体が重たいような……?」
そこで愛華がしょぼしょぼする目を擦りながら低く唸る。
「……ふへ? んんんー——いやぁぁぁぁぁぁぁッ⁉︎」
雨音を裂くような悲鳴を上げ、駿の腹を蹴飛ばし、彩芽と星良の目の前までズルズルと突き飛ばされた。
星良と彩芽は怜悧な瞳でゴミを見るように見下ろしてくる。
彩芽の後ろには本能をむき出しにした虎
星良の後ろには殺気を放つ龍
が
駿は脂汗を浮かべ、
「……すぅ——すみませんでしたぁぁッ⁉︎」
と、華麗な土下座を披露し、その声は雨雲を晴らすような声だった。
そして、
「彩芽さん——」
「あー、星良——」
二人はニコッとピエロのように笑い……
「謝る相手が——」
「——違うでしょぉーーーーッ‼︎」
結局、駿早退せざるを得ななかった。早退したことで彩芽のブラを持ち帰ってしまった。後でこっそり返しておこうと病院のベットの上で誓った。
そして、未だにブラ探しを講じている大和と奏然はなんとか首の皮一枚つながり、ブラが無くなったことは迷宮入りとなった。
この事をきっかけに、駿は称号『救世主』《イカロス》を手に入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます