第20話:快復魔術と状態異常快復魔術

神歴808年・公国歴72年5月17日ベーメン公国リューネブルク侯爵家領都領城魔術練習場:アンネリーゼ視点


 領城内にある全ての魔導書を使ってから十一日で、覚えた魔術を完全に使いこなせるようになりました。


 いえ、魔導書を使って覚えた魔術だけでなく、その魔術よりもレベルの低い魔術は全て使えるようになりました。


 ただ、才能が有ると言っても、全ての属性が使えたわけではありません。

 はっきり五属性だと分かっている魔術で使えるのは、木火土の三属性です。

 金と水は魔導書を使っても覚えられませんでした。


 それと、木属性の応用である風と電気が使えました。

 土の応用である砂も使えました。


 木属性はレベル2のウッドボール。

 風属性はレベル2のウィンドボール。

 電気属性はレベル2のエレキテルボールを覚えられました。


 火属性は最初に覚えた通りのままでしたが、土属性はレベル2のソイルボール、砂属性はレベル2のサンドボールを覚えられました。


 まだ属性がはっきりしないのが、レベル2のマジックリカバーです。

 後の練習でヒールとデトックスを覚えられたので、回復と快復の両方を使えるはずですが、それが水属性なのか陰陽聖邪なのかが分かりません。


 水属性の魔導書で何も覚えられなかったので、陰陽か聖邪だとは思うのですが、今魔法学会で唱えられている説が正しいとも言い切れません。


 レベル3の状態異常を治すハイステータスリカバリーが覚えられたので、もしかしたら侯爵の病が治せるかもしれません。


 才能には限界があるという説が主流ですが、少数説の中には、モンスターを数多く倒せばレベルの高い魔術を使えるようになるというのもあります。


 あとはパントリーの魔術を覚えられたので、ユルゲン魔術顧問は陰陽どちらかの才能があるかもしれないと言っていました。


 更にファシネイションという支配の魔術を覚えられたので、聖邪どちらかの才能もあるかもしれないと言われました。

 

 ただ、それを口にする時のユルゲン魔術顧問の目が気になりました。

 両伯爵の目にも警戒の色が浮かんでいました。

 支配魔術を使えるようになったのは良いですが、警戒されてしまいました。


「アルフレート伯爵、エルンスト伯爵、これまで侯爵閣下に快復魔術や状態異常快復魔術を使った事はありますか?」


 支配魔術が使えるようになって疑われているのなら、他の魔術を使って潔白を証明するしかありません。


 運の良い事に、状態異常快復魔術を覚えられました。

 毎日侯爵に状態異常快復魔術を使う事で、支配魔術で侯爵を操ったりしないとアピールし続けるだけです。


「レベル2までの快復魔術と状態異常快復魔術を使いましたが、侯爵閣下に快復の兆しはありませんでした」


「侯爵夫人としてのマナーは学び続けますが、快復魔術と状態異常快復魔術の習得を最優先にさせてください。

 もしかしたら、侯爵閣下を治す事ができるかもしれません」


「閣下を健康にできるのなら、それが一番ではありますが、それではアンネリーゼ様のお子様を跡継ぎにできなくなるかもしれませんよ」


「私もリドワーンの曾孫です。

 祖先の輝かしい功績を汚す訳にはいきません。

 先にフェルクリンゲン男爵家の借金を全て肩代わりしていただいただけでなく、恨みの有るガマガエル爺を殺して頂きました。

 それで十分以上の褒美を前払いしていただいています」


「そう言っていただけるのなら、できるかどうかは別にして、快復魔術と状態異常快復魔術を学んでいただきたいです。

 お願いします、この通りでございます」


 アルフレート伯爵が深々と頭を下げてくれます。


「「お願いします」」


 エルンスト伯爵とユルゲン魔術顧問も続いて頭を下げてくれます。

 ここでは話を終えられたら何も問題はないのですが、まだ言うべき事があります。


「それと、皆さんが心配している支配の魔術ですが、私と愛人の子を跡継ぎにする覚悟があるのでしたら、試しに使ってみても良いのではありませんか?

 侯爵閣下の病が治らなかったとしても、私の指示で子作りができれば、閣下の血を受け継ぐ子供を授かるのですよ」


 その母親が私ではなく他の女性になるかもしれませんけど。

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