第3話 絆?

湊路そうじが旅行に言って早一週間、後一週間は帰ってこないが……真実を話す時が早まった事に嘆けば良いのか苦悩の日々を送っている。


ガチャ、と無機質の扉の音が響くソコには、帰ってきた夫の姿があった。


「ただいま、真由美さん」

いつもより、元気がないように感じるその姿に涙が出そうになるが、話さないといけない事もあるため、我慢する事にした。


「おかえりなさい、健士けんじさん」

「ただいま……」

「ねぇ、やっぱり帰ってきたら私……姉さんのことをあの子に話そうと思うの……」


「あぁ、それがいいと思う、俺も仕事中にいろいろ考えていたが、ソレがあの子のためだと思う……」

「ごめんなさい、私の我が儘でアナタにもあの子にも迷惑かけて……本当にごめんなさい……」

あの日、湊路そうじの本当の両親が亡くなった日に、真由美のたった一つのお願いから家族の関係が決定された。


『この子は私が育てます!』

亡き姉の忘れ形見、甥っ子にして大事な一人息子。

時間なんて解決してくれない!だから……。


また、ガチャと無機質な扉の音が鳴った。「ただいま……」

「「……!」」

驚いた二人の前に湊路そうじは顔を出した。

「ただいま……健士けんじさん、真由美さん」

「え……!湊路そうじ……!」

「どうして……?」

驚きに言葉がうまく出せない二人、湊路そうじも続きの言葉が出せないでいた。


「たしか……予定では、一週間後のはず……?」

「あぁ……だけど、帰って来てくれた……」

「二人に話したい事が出来たんだ……それで予定より早く帰ってきたんだよ」

「「 !! 」」

「旅行中、いろいろ考えて悩んで、それでも纏まらなくて……だから俺、この家を出ていくよ」

「「……!」」

その言葉に別の意味で二人は固まるのであった。


「な……何も……出ていく……事ないのよ」

「そうだ!出ていく事なんてないぞ!」


「俺は二人にとって、赤の他人なんだ……だから、この家にいちゃいけない人間なんだ……」

「いいえ……アナタは……湊路そうじは私たちの子供よ!」

「赤の他人じゃない!俺たちの大事な一人息子だ、だから出ていく事はない!」


問答は、夜遅くまで続いたのであった。


               続く


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