第4話 再会

目を覚ますと、見覚えのある景色が広がっていた。


「ここは…」


都古とじいさんと三人でよく訪れた、広い野原。

小さい頃は、ここでよく日が暮れるまで皆で植物探しをしていた。


…何で俺は、こんな所にいるんだ?


ここに来るまでのことが、全く思い出せない。


「…サガミ?」


振り返ると、そこには都古がいた。


「やっぱりサガミだ!!何でここにいるの!?サガミも来てたの!?」


目を輝かせ、嬉しそうに話す都古。


"ようやく会えた"


何故か俺は、そう思った。


家が遠いわけでもない。

学校が違うわけでもない。

会おうと思えばいつでも会える距離にいるはずなのに。


何故だか、ずっとあいつを探していたような気がする。


「…なぁ、都古」

「えっ?なに~?」

「…俺達が最後に会ったの、いつだ?」

「え~?ついこの前廊下で喋ったじゃん~」

「…、……そうか」


都古と廊下で会ったのは、確か数日前。

そんなに長い間会っていないわけではない。

じゃあこの感覚は、一体何なのだろう。


「なんで~?」

「…いや、何でもない」

「変なの~」


すると、背後からもう一人の声がした。


「おや?君は…」


声のする方を見る。

そこにいたのは


「サガミか?久しぶりやなぁ」


間違いない。

俺の目の前にいるのは……都古のじいさんだった。


「……なん、で…」

「なんでって、いつもの植物探しだよ~」


確かに植物探しはしていた。

でも、ここにあの人がいるはずがない。

だって、じいさんは…


「数年前に、とっくに死んでるだろ?」


この言葉を言いたくなかった。

ましてや、都古の前では。

一番辛い現実を、もう一度突きつけることになるのだから。


「あはは、何言ってるの~じいちゃんならここにいるでしょ~?」


しかし、ケラケラと笑いながら話す都古。


「いや、でも…」

「……サガミ、じいちゃんは死んでないよ」


表情は一変し、真剣な目でこちらを見つめてくる。

俺は、何も言うことができなくなってしまった。


「もうすぐ夕飯の時間やけん、そろそろ家に帰ろうか」


何事もなかったようにじいさんは話す。


「行こっ!サガミ!」


都古も明るく声を掛ける。


「…あ、あぁ」


俺は混乱しながらも、三人と懐かしい帰路につく。



昔見た街並み。どこを見渡しても、何一つ変わっていなかった。

夢にしては、あまりにも出来すぎている。


だとしたらこれは、本当に現実なのか?

今まで俺が見てきたものは、全て偽物だったというのか?


「……。」


違和感は拭い切れない。

それでも俺は、じいさんが生きているこの世界を、信じたいと思ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る