お呼び出し

          トーク画面


「なぁ」

                    「ん?」

                 「どした」


「今から会えない?

迎えに来てよ。」


             「いいけど。

                親へーき?」


「…………ヤバい。」

「そっちは?」


       「ヤバいけど。

         急いでそっち向かうから。」


「口実は?」


              「んー?

               何とかする。」


 「おk。

 あざす」


  ▧ ▦ ▤ ▥ ▧ ▦ ▤ ▥ ▧ ▦ ▤ ▥ ▧ ▦ ▤ ▥  


腐れ縁の友達に呼び出された。それも夜6時に。


そして、僕は今自転車を飛ばしている。

急に家を飛び出そうとする息子を親は勿論、止めてくる。


「こんな時間にどこに行くんだ⁉」って。


だけど僕は、


「友達が僕の夏休みの宿題を間違えて持って帰ったからとりに行く。」


と言い訳をして振り切ってきた。

今から行く場所は絶対に知られてはいけないから。


ーーーーにしても遠いなあいつの家。


✄ーーー✄ーーー✄ーーー✄ーーー✄ーーー✄ーーー✄ーーー✄


     (サハクアヤト)

僕の名前は 沙白 彩兎。

自分でいうと悲しくなるが冴えない中学2年生だ。

そして、今目の前にいるのが 芦田 衣璃秋

僕を呼び出した張本人である。


あの後、何とかコイツを家から引っ張り出し、近くの公園にいる。まあ、公園と言っても遊具も何もない広場だが。


「すまんね。急に呼んで。」


「ゼェ、ゼェ、はぁ。ホントだよもう…」


僕の息切れした声が辺りに響く。


「ジュースいるかぁ〜?」

それに反比例するようなイリアの抜けた声。


「ハァ、ハァ、奢り?」


「おん。迎えのお礼。」


「んじゃ、お言葉に甘えて。ミ●ヤサイダー1個。」

今日は珍しくイリアの奢り。

どうやら明日は天と地がひっくり返るらしい。


「おけ。うちもそれにしよ〜」


「いや、真似すんな。」


「おやおやぁ~w キミィ〜、ご存知無いのでぇ〜?」

イリアが何故だかドヤ顔で煽ってくる。


「うぜぇww

あーもう知ってるよ知ってる。」


「すまんすまん。遂、ね」


会話だけではわけが分からないので説明しておこう。

彼女、イリアにとってジュースは全部、同じ味がする甘い水。

偏食のイリアに好きも嫌いもない。色以外、味もみんな同じ。

だから選んでもしょうがない。それで僕を真似る。

そういう訳だ。


「そんで?何があったん?」

自販機で買ってるのを待つのも暇なので本題に入る事にした。

「ゔ〜。ちょいまち…」

まだ言わないようだ。かすかに目が赤い。相当なんだろうな。 


ガチャン チャリン♪


「ホイ。これミ●ヤ。

ちょい歩かんか?」

そう言ってイリアは歩き出す。


「ありがとう。」

そう言うとイリアは複雑な笑みで

「いいってことよ。」

と返してきた。


ーーーーーーーーー公園ーーーーーーーーーー

自販機によってから15分程経った。

俺等は年甲斐もなく疲れるまで公園を走り回っていた。


「さぁ〜てと!疲れたー。

いい加減話しますか。」

そう言って二人で並んでベンチに座る。



急にイリアの事を説明するのもなんだが、一応。

コイツは一見、バカで五月蝿くてマイペースで偶に変なことする奴に見える。

けどフタを開けてみれば、コイツはそれと真反対の人だった。バカとマイペースは変わらんが。

何でこんなにオンとオフが違うのか。イリアから理由を聞いた時、こんな理由あるか?って絶望した。

それからはコイツの相談(愚痴)に付き合うようになった。腐れ縁だったのが嘘みたいだ。




「おう。聞くよ。」


「いやぁ~、実はさー」


「んー?」


「今日学校で小テスト返されたやん。」


「あ~アレね。」


「何点とったと思う?」


「真面目なバカのお前の事だから25点。」


「うわぁお、酷い。まぁ当たってるから許す。」


「当たってるんだ。」


「うゆ。ドンピシャやで〜(泣)」


「そんで?」

そう聞くと何か思い出したのかだんだんイリアの顔が歪んでくる。


「親に見られてさ…」


「サイアクじゃん」


「そう。まーそれはいつものだから特に問題無かったんだけど、その後よ。」


「イリア……今日習い事だった?」


イリアの笑みが自嘲的になる。


「そう。それ」


「また?」


「うん…」


「せっかく自分でぜんぶ出かける予定組み立てたのにさ、あんにゃろが帰って来て『遅刻遅刻遅刻遅刻だぁー!早くしろぉー』って割り込んできて、」


もう涙で顔がぐちゃぐちゃだ。流石にテイッシュとハンカチを渡した。

イリアが顔を拭いながら叫ぶ。


「お前が乱入すっから遅刻すんだよこんにゃくぅ〜!!」


「遅刻、してないんでしょ。」


「うん。してない。むしろ余裕すぎた。」


「なんか、そーゆーことされるとなんでだかイラッとくるよね〜。

自分で作った積み木の城を思いっきり蹴飛ばされた、 みたいなさ。」


「ん。なんかイライラ溜まってはち切れそうになってさ」


ズビッ!ズズズッ。隣から大きく鼻を噛む音がした。

「喋り方棘っぽくなってって」


「うん」


「あんにゃろがキレて」


「うわ…」


「そんでビンタと蹴りお見舞いされた。」


「げ…いてーな。それ。冷やした?」


「…(=_=)…」

イリアが僕から目を逸らす。

さては放置したな?


「…どこ?診して。」

僕はそう言いながらバッグから箱を出す。

こういうこともあろうかと一応、救急箱を持って来ておいて良かった。医者には頼れないし。持ってきたの親にバレてないと良いけど…


「んー…両ほっぺ、右腕。腹、背中?」


「数すげーな。って俺に聞くな!

 あ、どうする?場所変える?」


頬と腕ならこのベンチでも手当てできるが流石に服の下となるとここじゃないほうがいいと思ったから。


「そだな。んと〜トイレとか?」


お前アホかよ……

あ、こいつアホだったわ。


「俺の性別忘れた?」


「え?男。」


「お前は?」


「女だけど……

 あっ‼そ~いうこと?ウチは別に気にしないから体見てもいいよ~。」


「ちゃうちゃう!トイレに二人ではいんのアカンやろ。」


「あ、それか。

そうだねー。通報されかねんし。」

うーむ。どうしよう…

























すみません。今日は僕の用事があってここまでです。

愚痴大会はまだまだ続くようです。

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ふーん。だから何? からあげホイホイ @utakataNOkoubou

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