25話:勝利の喜び

【経験値を4586得ました】

【アルヴェイルのLvが36から58へと上がりました】

【魔法スキル、ライトニングLv3を獲得しました】

【称号、強き竜を獲得しました】

【特殊スキル、強者の威圧Lv--を獲得しました】

【称号、リベンジャーを獲得しました】

【特殊スキル、カウンターLv1を獲得しました】


頭の中にメッセージが流れると共に、ウェルグレイグの体が力無く地面へと倒れる。


勝っ…た…、勝ったんだ…!俺は!ウェルグレイグに勝ったんだ!!よっしゃあああああ!!!!


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」


俺は喜びの咆哮を上げる、雪辱を晴らした喜びと高揚感が俺の心に広がる。


正直かなり危なかった、死を覚悟した時もあった、だが俺は勝った!それが何よりも嬉しい!


ていうか…ウェルグレイグを倒して少し冷静になって思ったが…俺は自分で思うよりも戦うのが好きなのかもしれねぇ。


ギリギリの戦い、一発でも当たれば死ぬような状況でも怖さを感じないどころか、どっちかっつうと高揚感の方が強い節があるんだよな。


そう考えていた時、ウェルグレイグに切り裂かれた所に痛みが走り、俺は膝をつく。


ぐっ…痛ってぇ…!今になって痛みが襲ってきやがった…!いや、当たり前か、この傷がある状態であんな動き回ったんだ、痛みを感じない筈が無いか…!


戦ってる時の高揚感とかで痛みを感じない状態で戦ったせいで反動が来たか…!これ以上激しく動いたら傷が悪化してもおかしくない…。


それに…微かにだが、人間の気配がする、幸い距離はそこまで近くないみたいだが…この状態で狙われたらいくらなんでも勝てない、ここは攻めてくる前にここから離れた方が良いだろう…、スキルの確認もしたいがそれは回復した後でも出来る、ここは生存優先だ。


俺はそう考え、木々の間を通り、姿を隠し、眠りについた。








 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「はぁ…最悪だ…」


俺ことザイル・カートンは森を進みながら愚痴をこぼす。


「仕方ないよザイル、僕だって嫌だけど、依頼は断れないんだから、それにギルドマスターの言い方的に結構重大っぽいし」


こいつはナイム・ナルナート、たまにこうやって調査依頼などで一緒になるそれなりに仲のいい仲間だ。


「そんなことわかってるんだよ…でもよ…ナイム、今回ばかりは愚痴の一つくらい言わせてくれ…なんてったって、森の異変の原因を調査しろって、この森めちゃくちゃ広いじゃねえか…」


「まあ確かにそうだね、一応この辺りを調査しろって言うのは聞かされてるけど、だとしても広いよね…」


「んで、依頼主によると、魔物が森に異変を引き起こしていると…そしてその異変の元凶はドラゴンの可能性が高いらしい、もし本当にドラゴンの仕業だとすると、正直かなり危険だ」


「俺は隠密系のスキルを持ってるから駆り出されたが…最悪なのはドラゴンは基本的に感が鋭い、ちょっとやそっとの隠密スキルなんざ簡単に破って俺らを見つけてくる。

わざわざ調査しなきゃいけないほどの異変を引き起こすドラゴンなら感知系のスキルのLvだって決して低くはない筈だ…俺らのスキルなんざ簡単に見破られるぞ」


「まあ気持ちはわかるよ、でもだからこそ僕も一緒に駆り出されたんだよね」


そう、こいつにはとあるスキルがある、それはテレポート、自分と自分が触れている相手を自身が思い浮かべた場所へと瞬間移動するスキルだ。


「まあな…距離制限はあるが、使えれば高確率で逃げれるだろうが…不意打ちされたら終わりだし、怖いもんは怖ええよ…」


「気配感知も発動させてるし、すぐ逃げれるようにテレポートの準備もしてるんだから大丈夫だと思うけど…」


「そのちょっとした油断が命取りになるんだぞ…警戒することに越したことはない、調査対象の強さは未知数だからな…」


「まあそうだね、んで…森の様子は聞いてはいたけど…不気味なくらい静かだね…、この森、普段はもうちょっと生き物の気配とか、声とか聞こえるのに、それが全く感じられない、確かに異常だね…」


「そうだな…正直ここまでとは思ってなかったな、ここまでの影響力を持っているとなると…ドラゴンが関わっている可能性は高いな、気をつけて行くぞ」


俺たちは警戒しながら森を歩き、観察する、森を進んでいくと、魔物の死骸が所々にあるのが見える。


「うへぇ…結構死骸が転がってるね…骨だけになってる奴もあるし…体の一部みたいなのが腐ってるのもある…別に普段もそういうのはあるけど…それにしたって数が多いね…」


「そうだな…そのせいで腐敗臭が匂うな…そこまで強いわけではないが…流石にきついな…これが1匹の魔物の仕業って考えると…ゾッとするな…」


「そうだn…うっ!何この匂い!?とんでもなく臭いんだけど…!」


「は?って確かに臭いな…腐敗臭なのは変わらないが…なにが原因だ…?匂いのする方に行ってみるか…」


「正気!?僕普通に吐きそうなくらい臭いんだけど…」


「そんなこと言ってられないだろ、俺たちの目的を忘れたわけじゃないだろ、俺だって嫌だが行くしかないんだよ」


「くそ…最悪だよもう…」


そうして俺たちはその匂いがする方へと近づいていく、近づいていくたびに匂いが強くなる、あまりの匂いに俺は吐き気を催す。


「こりゃ…きっついな、ナイム、大丈夫か?」


俺がナイムの方を見ると、顔を青くしながら口を押さえている。


「これが…大丈夫に見えるんだね…君は…」


「やっぱりお前には少しきついか…俺ですらきついし無理はねえか、ほら、この鼻栓でも付けてろ」


「うん…ありがとう…そうするよ…」


ナイムは俺から鼻栓を受け取り、鼻に詰める。


「よし、んじゃ行くぞ…」


そうして俺たちは腐敗臭がする方向へと進んでいき、その腐敗臭を放つ物を発見すると同時に、その物体を見て俺たちは固まる。


「ロックドラゴンの…死体…!?それもただ死んでるわけじゃない…首と胴体が分かれてる…!?なんだこの死体は…!」


「こんなこと…並大抵の魔物が出来る芸当じゃないよ…?やばくない…?」


「間違いなくやばい、ロックドラゴンの首を落とす事のできる魔物なんてそういるもんじゃない…一体どんな奴が…」


「ザイル!なんか大量の魔物達が一斉にこっちに来てるよ!!」


ナイムが突如後ろから叫ぶ、俺はナイムの方へ向くと、そこには確かに森の魔物達が逃げてきている姿が見える。


「うおっ!?まじじゃねえか!このままじゃ巻き込まれる!避難するぞ!」


「わ、わかった!」


俺とナイムは急いで木の後ろに避難し、魔物達が通り過ぎるのを待つ。


「あっぶねぇ…あのまま巻き込まれてたら大惨事だったな…」


「そうだね…気配感知があってよかったよ…」


「んでよ…あの魔物達の慌て具合から考えるに…逃げてきた方にはこの森の異変を引き起こしてる元凶が居るんじゃねえか?」


「確かに…何もないのにあんなに魔物達が慌てて逃げるわけないしね…」


「あぁ、そうと決まりゃ早速行くぞ…」


「怖いね…一体どんな魔物なのか検討もつかないよ…」


そうして俺たちは魔物達が逃げてきた方向へと進んで行く。


「一体どこに居るんだ…?距離はまだ離れてる見たいだが…どうだ?なんか気配感知に引っかかるか?」


「ダメだね…特に引っかからない、まだ探索しないとだね…」


「うーんそうか…なら仕方ない、引き続き警戒して捜索を…」



『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』


その時、突如悍ましい咆哮が森に響く、その声を聞いた瞬間、足が震え、心を恐怖が支配する。


「ね、ねぇ、こ,この声、異変の元凶の魔物の声じゃない…?」


「…あぁ、間違いないだろう、この先から聞こえたしな…ナイム、テレポートで逃げれるように魔法陣を描いておけ」


「う、うん、わかった」


ナイムが地面に魔法陣を描いていく。


「か、描けたよ!」


「よし…それじゃあ、行くとしようか…」


俺たちは心の中を支配する恐怖を抑えながら、声の方向へと進む。


「…!ザイル!気配感知に引っかかったよ!だいぶ近くまで来たみたい…!でも…2体居る…?どういう事?」


「2体だと?1体だけでも厄介なのに2体か…2体も居るとなると…俺の隠密スキルが破られる可能性の方が高いな…ならば発動させるか…MP消費が激しいからあまり使いたくないが…千里眼!」


俺は千里眼を発動し、遠くの景色を見る、するとそこでは2体のドラゴンが戦っていた。


まるで悪魔の如き姿をしたドラゴンは黒い槍をとてつもないほど生成し発射している、もう片方の灰色の体に紫の稲妻の模様のドラゴンはそれを防ぎ、避けながら悪魔の如きドラゴンへと接近をして行く。


そして灰色のドラゴンが悪魔の姿をしたドラゴンの顔を殴打する、悪魔の姿をしたドラゴンが倒れ、灰色のドラゴンが勝ちを喜ぶように顔を天に上げながら叫ぶ。


「…どういう事だ?この異変はあの2匹のドラゴンによる仕業なのか…?もう片方のドラゴンは死んだみたいだが…」


そう、考えていた時、灰色のドラゴンが辺りを見回している、まるで隠れている獲物がどこにいるかを探るように、その瞬間俺は察した、俺たちの存在がバレている、そう考えた瞬間、俺はナイムに声をかける。


「ナイム!テレポートだ!」


「えっあっうん!テレポート!」


その瞬間ナイムと俺は光に包まれる、そしてその直後には魔法陣を描いた場所に戻ってきていた。


「…よかった…捕まる前に逃げ切れたな…」


「そう言うってことは…隠れてたのがバレたってこと?」


「あぁ…間違いないだろう、千里眼で見たせいでLvは確認出来なかったが…こればっかりは仕方ないだろう、少しでも異変の元凶の情報を持ち帰る方が優先順位は高い、さっさと帰るぞ」


「そうだね…僕ももう居たくないし…早く帰ろう…!」


こうして俺たちは森から帰っていった。









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