24話:決着

「ガ…ァ…」


あまりの痛みにまともに声すら出ない、引き裂かれた所が生暖かい、視界が霞み、意識が朦朧としてきた、立っているのも限界だ。


俺はどうしたら良かった…?スカイダイブを決めたタイミングで決めきったら良かったか…?それともスカイダイブで一気に決めるなんて真似せずに持久戦で戦った方が良かったか…?いや、そもそも挑んだこと自体が間違っていたかも知れねぇ…。


ただでさえステータスが負けているのに、強化状態になる技を持っている時点で戦うべきじゃ無かったんだろう…、完全に俺の判断ミスだ…。


そう考えている間に、意識が闇に染まっていき、体から力が抜けて行く、閉じて行く目でウェルグレイグの方を見ると、勝ちを確信したような笑みを浮かべている。


く…そが…、勝ちを確信したような顔しやがって…、だが…事実…俺はもう死にかけだ…、あいつが勝ちを確信するのも当然だろう…。


だと…しても……!勝ちてぇ…!あの時の雪辱を晴らしてぇ…!!そのために…!強くなったんだ…!狂化剛力だなんて…!馬鹿げたドーピングに負けてはい終わりだなんて…、納得できる訳がねぇ…!!


俺は…!俺は…!!なんとしてでも…!!お前に勝つ…!瀕死になったくらいで……!諦めて…!!たまるかってんだよおおおお!!!!!


【特殊スキル、不屈が発動しました】

【特殊スキル、火事場の馬鹿力が発動しました】


頭にメッセージが響く、その瞬間、薄れていた意識が急激に覚醒し、体に力が戻る、俺は倒れそうになっている体を立て直し、止めを刺そうとしているウェルグレイグをぶん殴る、ウェルグレイグが衝撃で後ろに吹き飛ぶ。


…体が動いた…!不屈のおかげか…!これなら…まだ行ける、ステータスは…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルヴェイル

状態 火事場 出血大

Lv 36/65

HP 9/454

MP 92/476

攻撃力 429(+268)

防御力 447(+114)

魔力 482

素早さ 403(+206)

ランク C+

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

めちゃくちゃ上がってる…!これなら差は殆どない…!ステータスが縮まったのはめちゃくちゃでかいぞ!!


てか、体力がかなりギリギリだ、プロテクトを強化してなかったらあの世行きだったな…。


とりあえず体の傷を塞ごう、じゃないとまともに戦えない、完治なんてしなくていい、戦える程度に傷を塞ぐだけで良い、今あるMPを全て回復に費やしても奴の一撃なんて耐えれない、だったら回復は最小限でいい。


俺はヒーリングを使い、傷を塞ぎ、出血を止める。


出血が止まった…、これで十分だ、そしてオーラを纏う用のMPを残して後は全てクイックとパワーに使う、この勝負はもう日和ったやつが負ける、もう保険なんて掛けない。


俺は覚悟が足りなかった、なんとしてでも、死んでも奴の首を取ると言う覚悟が、持久戦なんて仕掛けて、俺は日和っていた、だが、もう日和るのは無しだ、今,ここで、俺の全身全霊を持って奴を葬る。


俺はクイックとパワーを使い、さらにステータスを上昇させる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アルヴェイル

状態 火事場

Lv 36/65

HP 37/454

MP 34/476

攻撃力 429(+301)

防御力 447(+114)

魔力 482

素早さ 403(+244)

ランク C+

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

よし、かなり上がってる、補正値ならウェルグレイグを上回ってる、ウェルグレイグのステータスは…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ウェルグレイグ

状態 狂化

Lv 41/60

HP 89/523

MP 132/499

攻撃力 486(+289)

防御力 503

魔力 494

素早さ 375(+213)

ランク C+

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

素早さは俺の勝ちだな、素早さが上なのは大きなアドバンテージだ。


「オオオオオオオオオオオオ!!!!」


そうしている間に、ウェルグレイグが悍ましい咆哮を上げ、体を起こす。


さあ、ウェルグレイグ、掛かってこい、魔法なんて小細工は無しだ、どちらが勝つか、どちらが先に倒れるか、本気の殴り合いと行こうじゃねえか。


ウェルグレイグが凄まじい速度で俺へと接近する、俺もウェルグレイグへと走り、接近する。


「オオオオッ!!」


ウェルグレイグが爪で引き裂かんと俺へと腕を振り下ろそうとする、だが俺はそれが振り下ろされる前に尻尾を振るう、ウェルグレイグがすぐに後ろへと引く。


っち、当たらねえか、決まると思ったんだが、あいつもステータスが強化されてるから体の反応が早い、一筋縄では行かねえな…。


「オオオオオオオオオオオオ!!!」


ウェルグレイグが再び俺へと接近し、拳を下から上へと突き上げる、俺は少し後ろに跳び避ける、ウェルグレイグが口を開き、俺の腕に噛みつこうとする、それを俺はウィングアタックで弾く。


だが、ウェルグレイグはすぐに体を回転させ、俺に尻尾を振るう、俺は咄嗟に腕で尻尾を殴り、相殺する。


あっぶねぇ…尻尾の速度も洒落になんねぇくらい速い…、なんとか相殺できたが少しでも遅れてりゃやられてた、やっぱ攻撃の隙を作らさないように立ち回らないとこのままじゃやられちまう。


ウェルグレイグが俺に対し腕を振るう、俺は後ろへ少し下がり避ける、奴の爪が地面に炸裂し、地面がいともたやすく引き裂かれる。


続けてウェルグレイグがひたすら攻撃を俺に仕掛ける、俺はウェルグレイグの猛攻をなんとか捌く。


ぐうう、これきっついぞ!こんな一方的に攻められてたら勝てるもんも勝てねえよ!なんとか隙を作るしかねぇ!


俺は腕を構え、爪をウェルグレイグ目掛け振り下ろすが、当然の如くウェルグレイグが身を躱して避ける、そしてウェルグレイグが拳を握り、俺へと放つ。


俺は拳が当たる直前に奴の腕に噛み付く、そしてうんと力を込め、奴の腕を引っ張る、ウェルグレイグの体勢が前へと崩れる。


そして俺はガードの甘い腹へと拳をお見舞いする、ウェルグレイグがオーラで防ぐが、どうやら防ぎきれなかったようで、血を吐きながら吹き飛ぶ。


はっ!オーラだけで火事場+パワーの補正を受けた攻撃を防ぎ切れるわけないよなぁ!今度はこっちのターンだウェルグレイグ!覚悟しやがれ!


俺は大地を駆け、ウェルグレイグへと接近する、腕で、牙で、尻尾で、翼で、自分の体を全て使い、ウェルグレイグへと攻撃を仕掛けるが、ウェルグレイグが守りに集中している為いまいち攻めきれない。


っち、ここまでやっても押しきれねえとは、とことん厄介な奴だ、流石と言わざる負えない、だが、それでいい、時間が経てば経つほどあいつはMPが減っていく、短期戦をしなければ負けるのはあいつの方だ。


「オオオオオ…」


どうしたよウェルグレイグ、さっきまでの勢いはどうした?随分と苦しそうな顔してんじゃねえか、手数が多くて防ぐので精一杯か?そんなんじゃ負けちまうぜ?


そう思っていた時、ウェルグレイグが翼で地面を叩き、後ろへと下がる。


あ?後ろに下がった?なんだ、カウンターでもするつもりか?だったらそのカウンターをさせずに潰してや…。


「オオオオオオオオオオオオ!!!!!」


その瞬間、ウェルグレイグが怒号を上げると共に、突如凄まじい数の黒い槍がウェルグレイグの周りに出現する。


あ…あれは…呪怨の槍だと!?あんだけの数、MPも大量に使うはず…狂化剛力だってMPを使ってるんだ、あんなことしたら狂化剛力だって切れる…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ウェルグレイグ

状態 狂化

Lv 41/60

HP 51/523

MP 3/499

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

MPが無くなってやがる…!!あの野郎呪怨の槍に全ブッパしやがった!あの野郎、本気を出してきやがったな…!


あの数…凌ぎ切れるか…?いや、だとしてもやるしかない、さあ、来いよ、ウェルグレイグ、この槍の雨を突破して!俺はお前をぶっ倒す!!


「オオオオオオオオオオオオ!!!!」

「グオオオオオオオオオオオ!!!!」


ウェルグレイグが叫ぶと同時に、俺も叫び、ウェルグレイグに接近する、ウェルグレイグの周りにある黒い槍が俺目掛け、一気に撃ち放たれる。


黒い槍の雨が俺を襲う、俺は翼と腕をオーラで纏わせる、俺は槍を避け、避けれない物は翼と腕で相殺しながら進んでいく。


全て俺のところに飛んできやがる…!だがなんとか捌けてる…!このまま…!!


そう思っていた時、呪怨の槍が俺へと大量に放たれる。


うお!?まずい!あの数は捌き切れない!ここは避け…。


そう思ったが、呪怨の槍が俺の周りにも飛んできているのが見える。


んな!?これじゃ避ける場所も無いじゃねえか!まずいぞ、あんなん一発でも直撃しちまったら負ける…!ここを防ぎきれなきゃ俺の負け…つまりここを凌ぐしか無い!だが、このままじゃ凌げないだろう…だったら…。


俺は今纏わせているオーラを全て、右腕に集中させる、オーラを少しでも太く巨大にしていき、盾のようにし、槍に対し構える。


オーラの盾に呪怨の槍が当たる、ダメージはほとんどないが、衝撃が伝わってくる、俺の体が徐々に後ろへと下がっていく。


ぐううう!耐えろ!ここを耐えたら俺の勝ちだ!あいつは残りの呪怨の槍を全て撃ってきている!ここを凌ぎ切れば俺の勝ちだ…!が、もうMPに余裕がない…!オーラの維持も限界に近い…!このままじゃ確実に押し切られちまうだろう、だったら…!!


俺は足に力を込め、思いっきり大地を蹴る、槍を避けながら前へと進んで行く、一部避けきれず、体に槍が掠るが、そんなことは気にせずウェルグレイグへと接近して行く。


「オオオッオオオオオオオオオ!!!」


ウェルグレイグが焦ったように槍を放つが、俺はそれを全て避け、確実に接近して行く。


行ける、行けるぞ、確実に近づけてる、この調子ならばやれる…!ウェルグレイグに手が届く!


「オオオオオオオオ!!!!」


そう考えた時、ウェルグレイグが叫ぶ、そして俺のいる場所とその前を防ぐかの様に槍を放つ。


あの野郎…、俺を後ろに下がらせるのが目的か!ここで引いて避けてもいいが…!せっかく距離を詰めたのにそれがリセットされるのもきつい…!それに、あいつの呪怨の槍も少なくなってきているとは言え、後ろに下がった隙を突かれちまったら避けれるかわかんねえし、距離をまた詰める時に当たらない保証もない…!


だったらここは!全力で前に進むしかない!どっちにしろリスクはある!だったらリターンが大きい方を取る!


俺は腕と足に力を込め、全力で前進する、俺が通り過ぎたその刹那、俺のいた所へ槍が直撃する。


あっっぶねぇ…!!あと少し遅けりゃ当たってたぞ…!だが賭けには勝った!この勢いで一気に近づく!!


俺はウェルグレイグへと凄まじい速度で駆けて行く、ウェルグレイグが俺に対し槍を放つが、さっきのでほとんど使い切ったのか、あまり飛んでこない、俺はそのまま避けて接近し、射程圏内に入る。


射程圏内に入った…!こうなっちまえば狂化剛力が切れているウェルグレイグに止めを刺すだけだ!


「オオオオオオ!!!」


ウェルグレイグが最期の足掻きで腕を振るうが、火事場+スピードの補正が入った俺に当たるはずも無く、軽く避ける。


そんな攻撃が俺に当たるわけがねえだろ、さあ、終わりの時だ、ウェルグレイグ、お前は強かった、今まで戦った中で一番強かったロックドラゴンとも比べものにならねえほどに、だがな、お前は格上との戦闘経験がほとんど無かった。


俺は拳をウェルグレイグの顔に思いっきりお見舞いする。


「オ…オオッ…」



それが、お前の敗因だ。





















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る