7話:とある冒険者パーティの依頼 sideグラナ
「はああ〜疲れた…」
そう言い私は酒場の机に顔を置く。
「おいおい、せっかく強敵倒した祝いに酒場に来たってのにそんなこと言うなよ、せっかくの酒が不味くなるぜ?リーダーのグラナさんよぉ」
そんなことを言いながら酒を飲んでいるこのいかにも柄の悪そうな男はガルゼ・ナーロン、うちの斥候担当だ。
「まあでもそう言うのもわかりますよ…なんせ相手はグルーズベアでしたからね…」
そう,我々はつい先ほどグルーズベアを討伐し帰ってきたら所なのだ。
そしてこの大きな杖を持つ女の子はリリス・レナイン、うちのパーティの回復担当だ。
「あいつやばかったよなぁ、なんぼ攻撃しても立ち上がって襲いかかって来るもんやし…正直怖かったわ」
この糸目の男はジラ・ドーベン、うちの魔法担当だ。
「あれはやばかったな…流石の私も怖かった…リリスの回復魔法が無ければやばかったな…」
「んなこと言ってっけどあんた全部攻撃避けて反撃で斬りまくってたじゃねえか、そんな奴が怖がるとは思ねぇけどなぁ」
「何言ってるんだ、私だって人間だ、怖いもんは怖い、当たり前だろう?」
「え?嘘やろあんた、あれで内心ビビってたんか?冗談やろ」
「意外でした…グラナさん強いしモンスターに立ち向かっていくので怖いって感情無いかと思ってました…」
「お前らは一体私をなんだと思っているんだ…」
「まあまあ!とりあえず今日の所は楽しもうぜ!!」
「まあそれもそうだな、今日は楽しむとしよう」
こうして私たちはひとしきり楽しんだ後、宿屋に帰り休む。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
翌日、私たちは早速何か依頼がないかギルドに訪れた。
「何かいい依頼ねえかな…」
「あんま難易度高くても嫌やしなぁ」
「そうだな…何かいい依頼はないものか…」
そう考えていると、リリスが声をかけてくる。
「グラナさんグラナさん!これとかどうですか?」
「ん?どれどれ、ガルブロラの討伐?」
「ガルブロラってあれか?毒を使う竜だっけか」
「そいつ確か結構強いんやなかったか?大丈夫なんか?」
「ふむ…確かにガルブロラと言えば狡猾で罠や不意打ちを好むと聞くし…何より戦闘力も高いと言うのは聞いたことがある…」
「せやろ、つい昨日もグルーズベア相手にしたんやから重くないか?」
「だが…私たちはCーランクモンスターのグルーズベアを倒したんだ、ガルブロラのランクはD+なのだろう?ならば勝てるのではないか?」
「確かにそうやけど…毒は厄介やで?」
「何言ってんだ、毒ならリリスの魔法で治せるだろうが」
「そりゃそうやけど…」
「そうだぞジラ、リリスが居れば毒は怖くない、大丈夫だ、てなわけで早速受けるぞ」
「はい!わかりました!」
「はあ…まあええわ、リーダーの決めたことやしな…」
私は早速依頼の張り紙を受付に持っていく。
「すいません、この依頼受けたいんですけど」
「はい、ガルブロラの討伐依頼ですね、承りました」
そうしてクエストの受注を完了した私は仲間の元へ行く。
「よし、さっそく受けてきたから次の日にさっさと森に行くぞ」
「おうよ、早速罠の準備してくるわ」
「わかりました!ポーションの準備しておきます!」
「わいは地図とかその辺り準備しとくわ」
私たちは次の日の準備をし、宿屋で睡眠を取る。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
翌日、私達はガルブロラがいる森へと到着する。
「この森にいるのか…お前達、ここからは気をつけて行くぞ、いつ何に襲われるか分かったもんじゃない」
「わーってるよ、んなことくらい、一応この辺りの気配は常に探知してるぜ?ガルブロラは不意打ちが好きみたいだからな」
「そうか,助かる、よし、んじゃ早速いくぞ」
そうして私達はその森に入り探索する。
「ギョピィィィ!!」
「せいっ」
「ギョピャァァ!!」
【経験値を32得ました】
「ふむ…今の所アルクバニーとかボルブブル辺りしか居ないな」
「確かに…全然おらんなぁ、やっぱ普段は姿を見せないように行動してるんやろか」
「警戒心も高そうですよね…これは見つけるのが苦労しそうです…」
「そうだな…だがこればっかりは根気よく探してくしか無い、頑張ろう」
そうしてしばらく探索していると、地面に何かが落ちているのを見つける。
「ん?なんだあれ、破片…?」
「なんかあったのかよ?」
「あぁ、なんかあそこに白い破片のようなものが落ちていてな、少し気になったんだ」
「へぇ〜そうか〜」
「…興味なさそうだな…」
「わいちょっとそれ見てみたいわ、ちょっと行こうや」
「え?なんでだ」
「だってもしかしたらガルブロラが残した痕跡の可能性があるからや、もしかしたらこの周辺にいるかもしれない可能性があるんやで、それの手がかりになるかもやし見ておきたいわ」
「ふむ…確かにそれもそうか…よし,お前らちょっとあそこの破片見に行くぞ」
「へいへい」
「わかりました!」
そうして私達はその白い破片を観察する。
「ふーむ…なんだ?これは?骨というわけではなさそうだな…」
「わ,私にもわかりません…」
「こんなのの何が手掛かりになるってんだよ、ハズレっぽいしとっとと別の場所探そうぜ」
「そうだな、そうするとしよう」
「おいお前らちょいと待ちいや!!」
そうやって行こうとした時、ジラが私たちを呼び止める。
「はあ…なんだ、これを見ていてもガルブロラな辿り着くわけじゃないだろう…さっさと別の場所へ…」
「確かに手掛かりにはなってへんがな、それよりもお前ら、これドラゴンの卵やぞ」
「ドラゴンの卵だって?だったらなんでこんなとこにあるんだ?」
「んなもん知らんがな、でもなんかこの卵、ファブルドラゴンに似てるんやがな…なーんか妙なんや」
「例えば?」
「本来フェブルドラゴンの卵は斑点状の薄い水色の模様がある卵なんやが…これはなんか模様の形がダイヤみたいになっとる、そこがなんか妙や」
「単純にちょっと模様が違うだけか、大したことないな、ほら、とっとと来ないと置いてくぞ」
「あ、待てや!わいを置いてくな!」
ジラはそう言いながら私達の跡を突いてくる。
そうしてそれから1時間経った頃、私達はガルブロラの縄張りらしき場所へ着いた。
「お?こことかそれっぽいんじゃないか、雰囲気がさっきまでとは違うぞ?」
「そうやな…モルゾの木の色が他のやつと比べて暗めや…これは毒性がある物が近くにある状態で育ったモルゾの木に出る特徴やさかい、ここがガルブロラの縄張りの可能性はかなり高いな」
「だったらこの辺りを探索しとけばいいわけか!よしそれじゃガルブロラが出てくるまでこの辺りを歩き回るか!」
そう思いしばらく歩いていると、私はとあることに気がついた。
「ん?おい、あのヒーリング草、なんか喰われてないか?」
「あ,まじじゃん、ガルブロラが食べた跡だったりするのか?」
「いや、それなら周りは毒液かなんかがあるはずや、多分違うで」
「でもガルブロラじゃないのなら誰なんでしょう…?この辺り全然生き物が居ませんし…わかんないですね…」
「それは確かにそうだな、何がヒーリング草を喰ったんだ?」
「まあどうでもいいじゃねえか、俺達の目的はあくまでガルブロラだけだからな」
「まあ確かにそうだな、んじゃ探索を再開しよう」
そうしてこの辺りを少し探索していると、黒い何かが地面にあるのに気がついた。
「おい,あれなんだ?」
私は仲間達にその黒い何かを指差し、それを尋ねる。
「あー?なんかの生物の死骸じゃねえの?」
「それならその死体確認しにいこか、ガルブロラが食べた跡なら死体の経過時間で今この近くにいるかどうかくらいはわかる」
「なるほどな、んじゃ行くとしよう」
そしてその死体に近づき、その死体を見た瞬間、私達は驚いた。
「なぁ、おい、これってよぉ…まさか…」
「いやいやそんなわけ…だってこの森に住んでるガルブロラの次に強い奴って行ったらDランクのバディルウルフとC+ランクのロックドラゴンだが…ロックドラゴンは基本的には大人しいし、大体自分よりも強い奴に挑むほど馬鹿じゃないだろう、となると残るのはバディルウルフだが…DランクモンスターのバディルウルフにD+ガルブロラがやられる訳ないだろう…?」
「やけどガルブロラがなんかに殺されてんのも事実や…しかもこの傷…」
「な、なにか不味いことでもあるんですか…?」
「あぁ、だいぶ不味いで、この爪跡に…思いっきり叩きつけられたような地面…極め付けは…」
ジラはそう言い、辺りを見回す。
「…この炎で焼いたような焦げ跡…こんなことが出来んのは…ドラゴンしかおらん…それに…この地面の割れ具合、相当な力やで…このガルブロラを殺したやつはだいぶ強いぞ…」
「そ,そんな強いドラゴンが…?だったら私たちの手に負えないんじゃ…ここは帰った方が…」
「ふむ…なるほどな…だったら,そのドラゴンを探そう」
「グラナさん!?何言ってるんですか!?」
「そうやで!?ガルブロラを殺したドラゴンはかなり強いドラゴンやぞ!?正気か?」
「あぁ、もちろん正気だとも、もちろん、私だって怖くない訳じゃないが…私たちは冒険者だ、そのドラゴンの姿を確認し、ギルドに報告する、それが役目だ」
「だからってそんなことわいらがやらなくても…!!」
「無駄だぞジラ、俺たちのリーダーは一度決めたら絶対にそれを曲げない頑固者なのは俺たちがよく知ってるだろ?諦めろ、それに姿を確認してさっさと逃げればいいだけじゃねえか、たったそれだけだ」
「確かにそうやが…不意打ちとかされたらどうするつもりなんや…」
「何言ってんだ俺の気配探知があるから心配いらねえよ」
「そうだぞ、それに多少怪我してもリリスがいるから傷は治せるしな!てなわけで行くぞお前達!!そのドラゴンの正体を突き止めるぞ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます