第7話
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
日菜の作ったオムライスは、その綺麗な見た目通りすごく美味しかった。正直舐めていた部分もあったが、想像以上に美味しかった。食べている間は、ただただ目の前の食事に夢中になっていた。
「はるってば、本当に美味しそうに食べてたね~。見てるこっちがにやけちゃうくらいだったよ」
「美味かったのは事実だからな。片づけは俺がやっておくよ。ご飯ごちそうしてくれたお礼だ」
「え、別にいいのに‥‥」
静止しようとしてくる日菜を無視して、俺は2人分の食器を流しへと移動させる。さすがに1回で全部を移動させることはできないので、2回に分けて持っていった。
「これくらいはやらせてくれよ。全部任せっぱなしってのも嫌だし」
「なんかはるって変わってるというか‥‥普通、男の子ってこういうのあんまり好きじゃないんじゃないの?」
「別に俺だって特別好きなわけじゃないぞ」
机に頬をくっつけた状態で、不満そうにしている言ってくる日菜に、俺は素直な気持ちで答える。
俺は、普段から食事の準備も、後片付けも特段好きなわけじゃない。やらなければいけないことだから仕方なくやっているだけだ。けど、そんな普段のルーティーンをいざやらなくなると、なんとなく落ち着かない。そういった意味でも後片付けくらいは俺にさせてほしかった。
「そこまで言うなら任せるけどさぁ‥‥あ、そうだ。今日、私、はるの
「は?」
日菜の言葉に、俺は思わず持っていたお皿を落としそうになる。こいつ、今なんて言った‥‥?
「だって明日学校はお休みだし、特にこれといった用事もないし? 久しぶりにはるの家にお泊りしたいなぁって」
「いや待て、週末は俺の親が帰ってくるのが遅いことは知ってるよな? いつものことだし」
「もちろん」
俺の両親は、金曜日は夜勤の仕事を入れているため、帰ってくるのが深夜から早朝になることが当たり前だ。だから、俺は普段は一人で過ごすことが多いのだが、もしこいつが本気で俺の家に泊まるというのなら――――
(俺の家に2人きりってことか?! いやダメだろ! 付き合ってもない年頃の男女が一つ屋根の下なんて!)
俺はそこまで考えてはっと気づく。日菜はこのことをなんとも思っていないのだろうか。いくら幼馴染とはいえ、普通この年の女子って男と2人きりなんて嫌がると思うんだが‥‥。
「お前はそれでいいのか?」
「なにが?」
「いや、なにがって‥‥高校生の男と2人きりなんだぞ? いやだったりするんじゃないのか?」
俺がそう言うと、日菜は不思議そうに首を傾げた後、真顔で口を開く。
「いやだったらそもそもこんなこと言わないって。それに幼馴染なんだし、このくらい普通でしょ?」
そうなのか? そういうものなのか? 年頃の男女が2人きり、しかも1つ屋根の下で一夜過ごすのも、幼馴染なら普通のことなのか? 幼馴染ってそんなすごい関係なのか?
「まぁ細かいことはいいからさ。私、お風呂の準備してくるね」
そう言い残して日菜はリビングから出ていく。残された俺は、洗い物をしている途中だったことを想いだし、慌てて再開する。
‥‥水、こんなに冷たかったっけ‥‥。
恥ずかしがり屋で引っ込み思案な幼馴染が僕の前でだけ可愛い 海野 流 @kai0319
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