第4話

「おーす、陽翔!おはよう!」

「お、おう、おはよ‥‥」

朝、教室に入るや否や朝也にいつもより大きい声量で挨拶をされる。


(なんか‥‥いつもよりテンションが高くないか‥‥?)

そんなことを考えていると、朝也が続けざまに話しかけてくる。


「陽翔に問題!!今日の俺はいつもと何かが違います!何が違うでしょうか!」

「いやわかんねーよそんなこと」

めんどくさい彼女かよ。俺はお前の彼氏じゃないんだから、普段からお前のこと見てるわけじゃないんだよ。それなのに、いつもとの違いなんてわかるわけないだろ。


「ふっ、実はな陽翔‥‥俺は今日、ついに!月影さんに挨拶を返してもらったのさ!」

「ふーん、よかったじゃん」

「反応薄くね!?」

そりゃあ、急に意味の分からないクイズをされたと思ったら、よくわからない自慢が返ってくるし。こんな反応にもなるのも仕方ないだろ。


「まぁよかったな。これでお前も、未練なくこの世を去れるじゃないか」

「まだ死なねーよ!?勝手に殺そうとしないで!?」

「あれ、お前言ってなかったっけ?『俺、月影さんから返事もらえたら死んでもいいや‥‥』みたいなこと」

「言ってねぇよ?!」

朝也と茶番を繰り広げつつ、俺は少し考える。

日菜が朝也に挨拶を返したということは、日菜も友達を作るために頑張ろうとしているのかもしれない。そう考えると、なんだかうれしくなってきた。


「はるとー。たまには一緒に帰ろうぜー」

「俺はお前と違って電車通学じゃないから無理」

「帰り道に駅は通るだろ」

なんで知ってんだよ。ストーカーかよ


「お前なんか失礼なこと考えてるだろ」

「別に。朝也がもしかしたらストーカーなのかもしれないなんて、全然考えてないぞ」

「おう、めっちゃ失礼なこと考えてんなお前」

「いいから行くぞ。電車の時間に間に合わなくなるぞ」

「なんだ、一緒に帰ってくれるのかよ‥‥って話逸らすな!」

後ろで喚く朝也を後目しりめに、俺は教室を出た。


結局あの後、一緒に帰ることになった俺と朝也は、駅へと続く道を歩いていた。

「てかさ、陽翔って彼女いるのか?」

「は?」

そんな中、唐突に朝也にそんな質問をされた。

「急にどうしたんだお前」

「いや、純粋に気になっただけだ。陽翔が俺の知らないところで青春してたりしないかなって」

彼女がいるだけで青春って言えるのか‥‥?まぁ、クラスの男子もよく「彼女欲しい~!!」って嘆いているし、割とあることなのか。


「‥‥彼女はいないよ。あんまり欲しいとも思わないし」

「まぁそうだよなぁ~。いたら俺なんかに付き合ったりしないよな~‥‥あ、そうだ。好きな人とかもいないのか?」

「‥‥いないな」

一瞬日菜の顔が頭に浮かんだが、即座にそれを打ち消す。あいつは好きとかではないし、ただの幼馴染だ。一瞬顔が浮かんだのも、毎日のように顔を合わせているからだろう。


「うーん、好きな人もいないとなると、陽翔に春が来るのはまだまだ先の話みたいだなぁ‥‥陽翔だけn‥‥イテッ」

バカみたいなことを言っている朝也に手刀を食らわせつつ、歩いていく。


「そういえば、朝也はいないのか?彼女とか」

俺はふとそんなことを思い聞いてみる。俺に聞いてきた以上、同じことをこいつに聞いても問題はないだろう。


「ん?俺か?俺は世界一可愛い彼女がいるぞ!」

「は‥‥?ちょ、もう一回言ってくれるか?」

なにやらとんでもない発言が聞こえた気がして、慌てて聞きかえす。


「ん?だから俺は彼女いるよって言ったんだよ」

「はあああああああああああ?!」

とんでもない事実が判明した瞬間だった。

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