第十一話「追手等」
鬼神子一行に島娘桔梗が加わり、土岐より出航した頃。
影神子一行は土岐からたった三里程の所まで迫っていた。
「……先程の空気を揺らす程の轟音は一体何だったんでしょうか……」
船の後方で櫂を漕ぎて、そう呟くのは影神子ユラの侍従である
彼女の呟きに目を細め何やら思案する様子を見せるユラ。
手元に張った糸を弄びながら彼女はゆっくりと言葉を落とす。
「……シュラの仕業です」
確信めいたその言葉に
「シュラ様がですか……?」
「ええ、間違いありません。先程シュラのいる島の近海から巨大な魔物の反応が出ていましたが、一瞬でそれが消え去りました」
それを聞いた
「それは確かにシュラ様がその魔物を討ち取ったのかもしれませんね」
それにしても、と
「シュラ様方は本気で逃げ切る気があるのか無いのか分かりませんね」
「確かに、巨大魔物を討伐するなど目立つ行為を出奔の逃走者が普通するわけない……まぁ、いつものあの子の気紛れでしょう」
シュラは自身の欲に素直な性格だ、故にその行動に明確な一貫性は無い。
その素直さ故にその内は読みやすくもあるが、その突飛さに踊らされることも多々ある。
「神子様といると本当に退屈しませんね……」
「当の本人は退屈を極めて出ていってしまったわけだけど……」
「ん……?」
先程まで穏やかな表情で手元の糸を見つめていたユラは突然眉を顰めた。
「ユラ様、どうされましたか」
糸をじっ…と見つめている主に心配そうに声をかける。
「……シュラが移動を始めました」
「ああ、また先を越されましたか。方角はどちらでしょう」
そう言って
ユラは少しの沈黙の後、静かに言を発した。
「南西……これは……
「なんと、曨に向かっておるのですか?」
「ええ、どうやらその様です。それに……」
「それに?」
「一人、連れが増えたようです」
手元の絲絵図を睨み、そう零す。
「全く、一体何を考えているのか……
そうして船は気紛れの鬼姫を追い、南西に舵を切る。
向かうは曨、極東の島。
鬼族の盟友達の国。
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