俺と彼女の甘いおくすりの効き目

夢月みつき

第1話「夏風邪はなんとやらと言うけれど」

「俺と彼女の甘いおくすりの効き目」登場人物紹介


1. 津田賢人(つだ・けんと)

26歳。男性、主人公。彼女とデートに行く日に夏風邪を引いてしまう。



2. 望月由良(もちづき・ゆら)

23歳。女性、ヒロイン。賢人が風邪を引いたため。楽しみにしていたデートに行けなくなってしまう。

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今日は、休日で彼女の望月由良もちづきゆらと、近場の水族館へデートの予定だった。

だが、不覚にも、俺が夏風邪を引いてしまった。



俺は、津田賢人つだけんと。電話越しの由良は、俺を気遣っていたようだったけど、ガッカリしたようにも思えて、元気がなかったな。


外では、ミンミンゼミが、けたたましく鳴いていて。頭に響く気がする。

俺は、体温計で体温を計ってみた。しばらく待っていると電子音がピピと響く。37.8.。

体がだるくて、寒気がする。

俺は平熱が低く、熱に弱い。熱が上がるとダウンしやすいんだ。



一人暮らしだから。水一杯、持って来てくれる人がいない。

あまり、起きなくて良いようにペットボトルに水を汲んで、枕元に置く。

俺は、常備している風邪薬を飲んで、ベッドに横になった。


「ああ、だりぃ。カッコ悪いな」

シミのある、築三十年のアパートの部屋の天井を見ながら、今日、連れていけなかった由良の気持ちをおもんばかる。

「ごめん。由良」


そう、つぶやいた。その時、ピンポーンとインターホンが鳴った。

「誰だ。勧誘か? 起きれねえのに……。めんどくせえな。居留守使うか」

俺は黙って、やり過ごすことにした。




◇◇◇

しかし、そのうちにガチャリと鍵を開ける音がした。

「んっ?」

ドアが開く音がして、警戒しながら、様子を伺っているとすぐに由良の声がした。


「賢人~。入るよ」

「えっ? 由良」


由良は、俺の部屋に入って来た。重たそうなパンダの絵柄のエコバッグを肩に下げている。亜麻色あまいろのセミロングの髪と茶色の瞳。小柄な背丈、彼氏の欲目からみなくても、十分じゅうぶん可愛い。

「賢人、大丈夫?」

彼女は心配そうに俺を見つめた。


「なんだ。うつるから、来ないでいいって言ったのに」

俺が言うと、「マスクしてるから、大丈夫よ。」と軽く言う。

内心、嬉しかったが。うつしたら悪いと言う。感情がまさっていた。


「それより、薬飲んだの?冷やしてないじゃない。」

「ああ、薬は飲んだ」


由良は、保冷バッグから自宅から、持ってきた凍った保冷剤と、氷枕。エコバッグから冷却ジェルの箱を取り出し、保冷剤ふたつと一枚冷却ジェルを手渡した。


「ほら、これ、おでこに貼って。あと、氷枕して、保冷剤は両方の脇の下に入れてね。あ、凍傷とうしょうにならないようにタオルに包んどいたけど。たまに離しながらだよ?これすると熱が取れて、楽になるから。私はこれから、お粥でも作るからさ」


キンキンに冷えたスポーツドリンクも準備してある。

由良は、テキパキと世話をしてくれ、そう俺に言うと、台所キッチンに入った。




スポドリを数口流し込む、乾いた体に染みわたるようだ。

俺は目を閉じて、しばらく、横になっていると粥の炊ける良い匂いが漂って来た。


由良が、お盆に粥の入ったお椀と、のりの佃煮と赤シソ梅干しをのせた小皿を持ってきた。



それを、ベッド脇のこげ茶色のミニテーブルに置く。

なんて、気の利く彼女だ。俺は、幸せ者だなあ。などと、優しさと愛情を噛みしめて感激していると。


「少し食べれる?」と由良が、優しく聞いて来た。

「ありがとう、由良。食欲ないけど、何とか食ってみるよ」


俺は、彼女に感謝しながら、粥をお椀からレンゲですくってふーふーとゆっくり二度、息を吹きかけた後、一口食ってみた。

「美味い……。」


まろやかで、優しい味がする。こんなに粥が美味いなんて。

俺は粥を飲み込むと、由良に謝ろうと思い顔を上げた。

「ほんと?良かったあ。食べられて!」


今まで心配してくれていて、少し硬めだった彼女の頬の緊張が解けて、ふにゃりと笑う。その微笑みはまるで、天使のように俺の目には映った。

「今日は、ごめんな。お前も、楽しみにしてたのに。」

すまなそうに、由良を遠慮がちに見ると、由良は首を横に振った。


「ううん。次があるから、私は、大丈夫!それより、早く風邪治しなよ?」

「ああ、必ず連れて行くから。お前も風邪、気をつけ……。」


俺がそう言い終わるか、終わらないかの間に由良は突然、マスクを外して俺に抱き着き、触れるだけのキスをして来た。

「ばかっ!うつるじゃないか!」


俺が慌てて顔を離して叱ると、由良は桃色の舌をペロリと出して、悪戯っぽく笑う。

「なによ~。でも、人にうつすと、早く治るっていうでしょ?私流のおくすりだよ~っ」

悪気なく言う彼女に俺は少し、呆れたが何だか、胸が温かくなった。



次の日、俺はおかげで全快したが。案の定、由良は風邪を引いて寝込み仕事を休んだ。

「今度は、俺が看病する番だな!さて、俺の由良への薬は……。」


俺は、彼女の好きな桃の缶詰と色々と、風邪に良さそうな物をチョイスして、購入するといそいそと由良のマンションへと向かった。




~fin~


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最後までお読みいただきありがとうございます。

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