創作論……らしきもの。『メアリー・スー』のジレンマ
皆様、ごきげんよう。
今回、取り上げるのは物書きの方であれば、耳にしたこともあるだろう用語『メアリー・スー』です。
現在、二次創作の用語として多く用いられる『メアリー・スー』ですがあまり、いい意味合いではありません。
この『メアリー・スー』、人名ぽいのは元になったキャラクターがいるからです。
アメリカを代表するSFドラマの傑作である『スタートレック』。
ある人物が書いた『スタートレック』の二次創作作品に出てくるオリジナルキャラクターの名が『メアリー・スー』なのです。
この『メアリー・スー』は『スタートレック』の登場人物が霞むほどの経歴の持ち主。
十五歳と半年ほどの年齢で艦隊屈指どころか、随一の能力を有しており、カーク船長やミスター・スポックが一目置く存在。
それが『メアリー・スー』です。
彼女は当然のように有能すぎるのでカーク船長が指揮するエンタープライズ号に赴任して、大人気で大活躍。
とある星へと降下することになり、クルーが伝染病に罹りあわやエンタープライズ全滅かという事態でも大丈夫。
偶々、症状の軽かった『メアリー・スー』が事態に対処し、エンタープライズ号の指揮までやってのけ、全てを解決するものの……。
ここにきて病の進行には勝てなかった『メアリー・スー』はついに倒れ、クルーに見守られながら天国に旅立つのでした、チャンチャン♪
カークやスポックがやたらと彼女は若く美しい、そして有能だったと賞賛します。
これがあらすじでもなく、『メアリー・スー』の物語だったりする訳です(´・ω・`)
ところがこの『メアリー・スー』。
書いた人物は『スタートレック』に対して思うところがあってこの『メアリー・スー』という二次創作小説を生み出したと告白しているのです。
『メアリー・スー』はアンチテーゼなテーマで生み出されたキャラクターであり、暗に『スタートレック』を批判しているとも言えるでしょう。
『スタートレック』だけではなく、いわゆるスーパーヒーローのような男性主人公が活躍する作品自体に思うところがあったらしく、男性社会に対して物申すの意味合いがあったのかもしれません。
しかし、書いた人物が考えた以上にこの『メアリー・スー』が独り歩きを始めます……。
『メアリー・スー』のように自己投影された自己愛キャラクターを生み出してはいけない。
そのような戒めにも似た考え方がある一方で『メアリー・スー』を敢えて使う場合もあるのです。
『メアリー・スー』ほどヘイトを集めやすく、分かりやすいキャラクターはいません。
そこでわざとそういったキャラクターを登場させ、物語を動かすキーというか、舞台装置の一つにする訳ですね。
この場合は意図的に『メアリー・スー』を使っているのですが……。
物書きとして問題視される『メアリー・スー』は意図的ではなく、無自覚に描かれたものです。
より危険性が増しています。
『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビアニメが放映されていた当時、稀に見る大ブームでネットも瞬く間に席巻されました。
本編のアニメは設定とストーリーが難解でした。
謎が多く、紐解きにくいので考察も空前のブームで熱を帯びていたと思います。
しかし、ヒロインポジションのキャラクター二人がどちらも途中退場です。
これに納得いかなかったのもあるのでしょう。
アスカ派とレイ派でどちらがヒロインなのかと競うようなファンの二次創作小説が出てきます。
そして、出てくるのが本編のシンジくんとはまるで違うキリッとした子でした。
生身でATフィールドを張ったり、使徒を倒してしまう彼らはスーパーシンジくん(通称スパシン)と呼ばれるようになるのですが、これもまた『メアリー・スー』の一種だそうです。
ただ、実のところ『メアリー・スー』にはこれといった定義がなく、曖昧な存在のものだとか。
そうなると書く側が注意しないと生まれやすい存在だとも言えます。
二次創作小説を書くともなれば、自然とこのジレンマに悩まされることになるとも……。
実際に私も今、二次創作に食指を伸ばしており、そのジレンマと向き合っている最中だったりするのですが(´・ω・`)
難しいと思います。
原作の登場人物だけしか描かないと仮定しても書き手が自由に動かした時点で実は何をしても『メアリー・スー』だったりするのです。
どれだけ逸脱しないようにするかと悩んでも『ゆで卵すらメアリー・スー』になります。
『メアリー・スー』はどこにでも潜んでいると言えます。
難しいですね(´・ω・`)
でも、これだけは確かと思われることが一点だけ。
二次創作小説でオリジナルのキャラクターを暴れさせるのは危険です。
『鬼滅の刃』で上弦の鬼に苦戦する炭治郎の前に作者のオリキャラが現れて、鬼をワンパンで倒した挙句、禰豆子と結ばれるだけでなく主要な女性キャラとハーレムなんて築いたら、どうしますか?
そっと閉じたくなりますよね?(´・ω・`)
そういうことです。
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