創作論……らしきもの。『作家は体験したことしか書けない』理論

 皆様、ごきげんよう。


 X(旧Twitter)上には様々なネタに事欠かない診断テストがあります。

 名前診断やAI診断は完全にネタなので診断結果を如何に広げられるかなテストだと思うのですが、簡単な心理テストに答えるタイプのも見受けられます。

 ちょっと前にあなたの創作スタイルを診断するというのがありまして、私やタイプが似た方はいわゆる神降ろし。

 妄想力が原動力に近く、想像力を働かせて書いているといったところでしょうか。


 この時に自分は体験したことしか書けないと呟いている方もいたのですが、それって「あれれ~おかしいぞ~」なんですよね。

 体験したことしか書けないのなら、人間が書くことの出来るものなんて、たかが知れていると思うのです。

 例えば、一生が八十年くらいと仮定したとしましょう。

 八十年間で創作するのに向いている事象がどれだけ、あるのかになってしまいます。

 そんなにドラマチックだったり、エキサイティングな日常のある人がどれだけ、いるのでしょうか。

 あっという間にネタが枯渇してしまいます。

 些細な日常でありふれた事柄であってもやや大げさなくらいに感じられる高い感受性があれば、体験したことだけでも書ける?

 本当に?

 それって、ほぼ日常エッセイしか書けませんよね(´・ω・`)

 異世界に行って帰ってこないと異世界の物語やファンタジーも書けないということになりますし、ホラーやオカルトも実体験していないと書けません。

 実際に殺人を犯した人でないと殺人鬼の物語も書けなければ、元自衛官や警官、医者でなければそういう分野の作品を書けないということにもなります。


 そもそもがこの『作家は体験したことしか書けない』の元の意味から誤った意味で捉えられ、どんどん拡散されたというのが真実みたいです。

 漫画家が実体験を基にした作品を出し、それが売れる。

 そのヒットを気に入らない層が『作家は体験したことしか書けない』と妬みの入った嫌味のコメントがこれだった訳です。

 そして、誤用はどんどん広がっていき、現在は『経験したことしか書けない』といった亜種まで生まれています。

 体験どころか、経験になってしまいました。

 でも、経験でいいのなら色々と書ける! と思われた方が多いはずです。


 これが結構、重要です。

 体験は読んで字の如く、実際に体で見たり聞いたりと確かめたものです。

 経験は似て非なるもの。

 実際に確かめた訳ではなく、他の媒体を通して得たものです。

 それは書物だったり、演劇だったり、ドラマや映画だったりと人によって異なるかもしれません。

 経験は他者の体験を己のものに変換するものと考えても強ち、間違っていないでしょう。

 だから、色々なものを読んだり、見たりしてインプットを増やすのは悪くないと思います。


 ただ、ライトノベルしか読んでいないから、文学的な物語に昇華する作品を描けないといった考えは少々、暴論な気がします。

 なろう系しか読んでいないからも◯◯だから◯◯できないみたいなレッテルを貼っているだけではないでしょうか。

 ライトノベルやいわゆるなろう系と十把一絡じゅっぱひとからげで考えるの自体、ナンセンスです。

 玉石混淆ではないですが、ライトノベルの範疇に入れられていても文学との境目が分からない作品もいくらでもあるし、なろう系なんて捉え方自体がそもそもアレです。

 なろうの主流なんて、不変のものではなく時代のニーズに応じた感じで変化しているからです。


 多分、なろう系と蔑称に近い感じで言う場合は以前、流行したチート能力を持つ主人公が美少女を侍らせたハーレムを形成し、俺TUEEEするタイプのだとは思います。

 いわゆるなろうテンプレと今やネタとして、テンプレでわざと創作して話を広げる方がいるくらいのお話です。

 異世界転生するのにトラックで轢かれるのばかりが、流行したのと同じで単なるテンプレな訳です。


 まぁ、結局のところ、素材が何であろうとも調理する料理人の腕にかかっているということで……。

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