第3話 作戦
1時間ほど仮眠をとり、ブリーフィングルームへと集合する。
「さて、新しい依頼が来ている。依頼主は先日の依頼と同じ人物ではあるが、どういった人物なのかはまったっくつかめていない。だが、羽振りはいいようだ。何といっても我々は防衛軍を離反したばかりで金がない、この機に乗じるほかない」
「しかしマスター。これが罠という線はないのですか? 依頼主の素性もわかりませんし」
「ない……とは言い切れないが、その線は薄いだろう」
シュバ!っと手を上げ間抜けな顔でⅠが質問をする
「なんで?」
「依頼主はわざわざ金を払ってまでこちらを試してきている相当用心深い依頼主だ。今回も試してくるかもしれないが、支払いはクリーンな方法で行われているし、支払われないことや、わざわざ殺す様なことはしないだろう」
と手元のキーボードを操作する。
テーブルの上にホログラフィックが映し出される。
「さて、今回の依頼はとある廃墟から不可解な信号の調査と、発信元の回収だ」
テーブル上に監視塔のような建造物の3次元的な見取り図が映し出される。
「これは依頼主から届いた見取り図だ。だがかなりの回数改築されているためこの見取り図がどの時点での図面かはわからないそうだ」
「場所は……テールフレア?」
聞いたことのない地名だ
「ああ、テールフレアは我々でいうロンドンのあたりだ。あそこは前まで新人類軍の核の研究施設だった。そして百年前の事故で街の機能が完全になくなった。だから現在はどちらも手を出してない。意図せず中立地帯になった土地だ」
マスターが見取り図を拡大し説明を続ける
「信号があったのは塔内部の最下層。地下400メートルだ。ここを目標に作戦を進行する。まず侵入口は最上階に1つしかない。最上階は地上30メートル、上る梯子があるが、君たちなら一蹴りで行けるだろう。中の構造はいたって単純……だが、まぁここに書かれている通りじゃないと思っていい。地下は弾薬庫になっているようでそこら一帯の塔のすべてからつながっているだだっ広い空間となっている。地下は20階層に分かれている。だが、地下も含め核汚染が続いている、生物や敵性存在はないだろう」
「となると、核汚染のほうがネックですね」
「ああ、そこでだ。君たち用の防護服を用意した」
壁が回転し、防護服がかかったラックが現れる。
「運動性能は下がるが、耐久性は信用してもらっていい。銃弾程度なら貫通しない。それと」
反対側の壁を指さすと、壁が回転し、大太刀とハンドガンが4丁。ソードオフショットガンが2丁のかかったラックが現れる。
「あ!これどこにあったの!」
とⅠが大太刀を抱きしめる
「苦労したが、君たちの装備を回収できた。これでほとんどすべての貸しがなくなったがな」
大太刀を抜き、刀身を確認する。振りはしないが構えて首をかしげる。
「拵えなおしてくる!」
と部屋を飛び出していく
「ちょ! Ⅰまだ終わってない!」
と、止める私をマスターが制止する
「まぁ彼女はいてもどうせ聞いてないだろう。それより、君の装備は確認しなくて大丈夫か?」
「そうですね」とつぶやきながらショットガンを手に取る。
私の使っていたダブルバレルのソードオフショットガンだ。長距離での戦闘が少ない私たちにはこの攻撃力がとても心強い。装弾数は少ないが、対1ではこれ以上に信用できるものはない。肉体で戦うことが多い私たちだが、重武装をしている兵士たちに楽に応戦できる。それと、敵側の強化兵と正面で殴り合うのが難しい場合にとても重宝する攻撃力だ。
多人数戦? 殴れば終わるでしょ
「問題ありません。機構は単純ですし大きな破損はないので」
とラックに戻す
「ハンドガンに関しては新しいものを用意した。君たちは使わないと思うが」
「ええ、投擲のほうが威力ありますから」
「投擲……投擲物がない場合はどうするのかい?」
少し思案した後
「建築物があればそこから作り出せます。なかったとしても地面があれば抉って圧縮すれば十分な武器になります。空中だと……少し困りますね」
「そ、うか。まぁ4丁もあるからな、自由に使ってくれ」
「……それではブリーフィングに戻りましょう」
翌日、テールフレア空港にて
「入国の理由は?」
「仕事です」
隣のレーンではⅠが入国管理官と言い合っている
「だから! これは仕事道具!」
「ですが、こんな刃物をどうして持ち込めたのですか?」
「向こうは持ってって良いって言ってた!」
「ですから、その許可証をお見せいただけないでしょうか」
「そんなのもらってない! 知らない!」
「はぁ、セキュリティ!」
体の大きな警備員に連れてかれてる……知らない振りしとこ
「こちらの銃器はどのような用途で?」
「仕事用です、これが許可証で、これが証明書です」
データーを照合している間にⅠが裏につれたかれる様を眺める
「照合が終わりました。すべて問題ありませんね、良い旅を」
ゲートを通り、カウンターへ向かう。
「すみません、同僚が裏につれてかれちゃって。彼女のデータを私が持っているのでこれで通してもらえませんか?」
「少々お待ちください」とカウンターの女性が通話で確認をとる。
少し経った後。女性が口を開く
「照合が完了しましたのでこちらへ」
と裏へ通される。Ⅰの怒鳴り声が廊下にまで響いている
「だーかーらー! 私の仕事道具だって!」
「ですから、あなたの身元の確認が先です。何か身分証は?」
と、いつも通り話が通じていない
どうぞ、と扉の前につれてこられる。
扉を開けると、全員がこちらを向く。
「彼女は、私の同僚です。身分証はこちらに」
と彼女から預かっていた身分証を渡す。Ⅰも持ってるはずなのに
「ふん、それで……こちらの刀の持ち込み許可証と安全証明書は?」
「これ、コピーですけど」
とⅠがなくしそうな書類のコピーたちの中から許可証やその他必要な書類を出す
「そうですね~」
コピーかぁ~みたいな顔をしていると、マスターがやってくる。
「ああ、すまない」
と普通の顔したマスターが部屋に入ってくる
「む? 君は、ルイス君じゃないか」
とⅠと向き合っていた男に話しかける
「あ! ジェイ・エバンス大尉!」
驚いたように立ち上がる
「ひさしぶりだなぁ! ルイス君」
がっしりと握手を交わす
「それで、なぜ大尉が?」
「ああ、裏にこの子たちが連れていかれたのを見かけてな」
「彼女たちを知っているのですか?」
「それはそうだろう。彼女たちは私の部下だからな」
目を見開き、Ⅰの方へ向く。
「いやすまない君たち! これは僕の権限で通すとしよう」
とニコニコで送り出された。
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