第4話 Town

「作戦領域に入ります。ここから通信を制限します」

「了解、接敵に注意せよ」

こめかみに触れ、通信の設定を変更する。

 目の前には高い壁が立ちはだかるが、彼女たちには些細な問題だ。一蹴りで壁を飛び越える。しかし、先で見たのは私たちの予想をはるかに超えていた。

「マスター、見えていますか」

眼球のカメラを起動する

「あ、ああ……見えているが、どういうことだ」

 マスターが驚くのも無理はない。


目の前に広がっていたのは「街」だった。


 家々が立ち並び、人と物が交差する。子供たちは走り回り、大人はそれを見てほほ笑む。人間の生存できないはずの地域に大量のに人間が生活していた。中央には塔が建っていて、おそらくあれの頂上に入口があるのだろう。

「Ⅴ、放射線量を測定してみろ」

腰のポーチから測定器を取り出し、測定する。

「検出されません。ここは放射能汚染されていません」

「とりあえず、街の調査を行ってくれ。こちらは情報を集めておく」

「了解」

防護服のマスクを外す。

「はずしていいの?」

「ええ、大丈夫」

うれしそうに眼を見開き、マスクを外すⅠ。そんな彼女の手を引き街を歩く。

 3時間程度歩き、街の構造を確認する。

この街は円形に3層構造となっているようだ。

1層目の外側には研究施設の名残であろう壁があり、壁の内周に沿うように店が立ち並ぶ商業区域となっている。中心に近づけば近づくほど高級な店になる。

2層目は行政区域となっている。役所と思われる建物や図書館などがあった。しかし、それに混ざるように企業のビルも建っている。雰囲気的には行政区画というよりオフィス街のほうが適切かもしれないが、行政区域らしい。

3層目は居住区域となっている。その名の通り、家やアパートが立ち並ぶ。

そして、この街の建物はもれなくすべて扇形。上から見たら完全な円形になるように作られていた。そのすべては恐ろしく均一で、その法則から外れたものは5つの建物のみだった。

外周の壁の上に建てられた4つの塔。それと、中心にあるこの街で一番高い六角形の塔だ。この塔を中心に放射状に町が形成されている。

 そんなことを頭の中でまとめていた時、通信が入る。

「情報がつかめた、どこか落ち着ける場所は近くにあるか?」

Ⅰに肩を叩かれる

「ちょっとマズいかも」

ふと周りを見る。

「3体。いけそう?」

「ひとおおくてちょっとむりかも。これだと太刀ぬけない」

人ごみに紛れて3体の人型戦闘ロボットがこちらを囲んでいる。

「どうしたⅤ。応答しろ」

戦闘態勢をとりつつ応答する

「おそらく侵入が発覚しました」

「了解。周りに人が多い、あまり暴れすぎるなよ」

とりあえず移動だ。戦闘ができそうな場所に移動しなければ。

次の瞬間、周りの人間を巻き込みながらロボットたちが銃を乱射する

「はぁ?! まわりのひとまきこんでる!」

「お構いなしってことか」

腰からショットガンを抜き、肉薄する。Ⅰも大太刀を引き抜いて切りかかる。

だが、ロボットの腕が変形し、マチェットのような形になり受け止められる。

「へんけいした!」

ほぼゼロ距離で両手に持ったショットガンをぶっ放す。が、電磁シールドが展開され無力化される。

その隙に建物の上へ移動していたもう1体がマシンガンを打ち下ろす。

周りにいた人々は叫びをあげ逃げていく。

2人は散開し、銃弾を回避しながら地上のロボットと距離をとり体勢を立て直す。

腰にショットガンを直しもう一度肉薄する。ロボットは距離を詰めるⅤにマシンガンをばら撒くが、Ⅴのスピードを補足できずに命中しない。懐に入り込んだⅤはロボットの胴体部分に右ストレートを叩きこむ。装甲版が変形し、衝撃で左腕が肩から外れる。壁にぶつかりバチバチと音を立て停止する。おそらくぶつかったときの衝撃で内部が壊れたのだろう。

一方、Ⅰは大太刀を脇構えに直した後、姿勢を低くして相手の動きを見据える。マチェットを振り上げ近づきながらマシンガンをばら撒こうと銃を構えた瞬間、その隙をⅠは見逃さなかった。銃を構えようと左腕を伸ばした時、僅かに態勢を崩した瞬間のことだった。一瞬で近づき、逆袈裟ぎゃくけさに切り裂く。真っ二つに切られたロボットはⅠを通り過ぎ、機能を停止する。

残りの3体目は建物の上で静観していたが、地上に降りてくる。

「あと1つ!」

「気抜かないでね」

相対したロボットがバリバリと音を立てる。すると、破壊した2体が目の前のロボットに引き寄せられて、ガチャガチャと分解されていく。

「何を?」

理解できずに止まってしまったⅤを横目にⅠが飛び込んでいく。しかし、分解されたパーツが飛んでくるため、思うように近づけない。

分解されたパーツがどんどんくっついていき、合体していく。

目の前に現れたのはマシンガン3丁とマチェットを構えた腕が4本あり、下半身が虫のように3対になった奇形のロボットだった。

「なにあれ! がったい! なんで!」

「何でかなんて知らない! ちゃっちゃと終わらすよ!」

マシンガンをすべて使った弾幕攻撃を仕掛けてくるロボットに対し、Ⅰは上方に、Ⅴは後ろに回り込んで対応する。上段切りをマチェットで受け止め、回り込んだⅤの拳を体で受け止める。合体したので装甲が分厚くなり、拳では傷一つつけられない。

「チッ、分厚くなってる」

ロボットを挟むように立ち、ジリジリと間合いを詰める。その間Ⅰに通信を行う

「Ⅰ、下に行こう。2人で地面を叩けば割れると思う」

「おっけー」

「せーの!」

Ⅴの合図で拳を地面にたたきつける。地面に亀裂が入り、崩れ落ちる。

ロボットは体勢を崩し、逆さまになって落ちていく。

そして、これから2人に待ち構えるのは400メートルの自由落下だ。

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