第4話 この世界の仕組みと魔術へ至る道

 ゲームの時の称号スキルというのは、レベルが上がればその魔術属性や武器種に対応したレベル相応の武技や魔術を覚えることができるというものだった。


 他にも一定以上の称号レベルが無いと教えて貰えない武技や魔術だったり、その他にも技術補正や威力上昇などの効果があり、ゲーム時は少ない量の称号スキルを効率的にレベル上げした方が強くなりやすかった。


 しかしどうやら現実となったことで称号スキルの扱いも変わっているようだ。


「ナルも大体は知っていると思うが、称号スキルはその人の技量を表すものだ。俺は最初、剣をメインに使っていたがレベル4になってから3年以上使ってもレベル5には上がらなかったんだ」


 なるほど、現実になったことで称号スキルという自分の技量を明確に可視化されるようになったことから、レベルが上がらなくなったら自分の才能がどれほどのものか明確に突きつけられてしまうのか。


「若い頃の俺は自分に剣の才能がなかっただけけだと思って違う武器を使い始めたんだ。でも結局どの武器でもレベル4以上は上がらなくて、だんだん倒す魔物もいつも同じ魔物になってレベルも上がらなくなったていったんだ」


「それで最後には諦めちゃったの?」


「ああ、そうだな。自分よりも若い奴らが先に進んでいくのにずっと同じ場所で停滞している自分に、ようやく俺には才能がないんだと自覚させられたよ」


 確かにゲームのように現実はいかないだろう、何回負けてもよかったゲームと1度でも負けたら駄目な現実では、簡単に自分よりも強い敵と戦ってレベルを上げようとしたり、格上との戦い方を覚えることもできないだろう。


「まぁこんな話をしておいてなんだが、お前は俺じゃないんだ、凄い才能があるかもしれないしそんなに気にすることじゃない、これは俺が選んだ人生だからな」


「そうだね。それに父さんがその選択をしてくれなきゃ僕は今この場にいないかもしれないんだ」


「はは、確かにそうだな。お前達のおかげで俺は毎日を生きていけるよ」


 そういって父さんは笑った。


「でも結局魔力を感じるには地道に頑張るしかないのか」


「うーんそうだな、ナル、武技を使ってみないか?」


「武技? 僕はまだ何の称号スキルも持ってないよ」


「別に称号スキルを持っていなくても武技は使えるぞ」


 ゲームが現実になったことでスキルを覚えていなくても武技や魔術を覚えることができるようになっているのか。


「実は俺が魔力を感じることができるようになったのは、武技を使えるようになったからなんだ」


「そうなの?」


「武技は魔力を自覚していなくても使用出来るから、使うことが出来れば魔力がどういうものか分かるだろう」


「そうなの?聞いたことないんだけど」


「これは魔力感じること出来ない奴が、魔力を無理やり感じるための手段だからな」


 魔術は魔力を操る必要があるため自分の中の魔力を自覚出来ないと使うことが出来ないらしいが、どうやら武技は魔力を感じていなくても無理やり使うことが出来るそうだ。


 こういう所もゲームには無いもので面白いと感じる。


「やってみたい」


 だからかそんなことをあまり深く考えずに口にしてしまう。これから地獄が始まるというのに。









 そんなわけでさっそく家にある木剣を持って魔術を練習していた空き地までやってきた。


「まず俺の動きを見てそれを真似てみてくれ」


 そういうと父さんは少し離れた場所までいき構える。その瞬間父さんの気配のようなものが変わり、魔力が溢れそのまま剣に纏わりつき、世界に証明させる技を放つ。


『斬魔』


 纏わりついた魔力に色がつき、緑色に輝いた剣は空間を切り裂き風が吹き荒れる。この世界で生まれて初めて見る武技に魂が震えるのを感じる。


「はは、めっちゃかっこいいな」


 そんな言葉が思わずでてしまう。ゲームでは覚えることがなかった感覚にこの世界がリアルであることを理解させられる。


「ふぅー、こんな感じだ。最初はとにかく

 集中して構えて体から何かが溢れたと思ったら剣を振るんだ」


 ざっくりとしずきではないだろうか?まあゲームでは何回もやった動きだ。それを再現すれば体の魔力が動き使うことが出来るだろう。


「とりあえず1回やってみます」


 少し小さめの木剣をもって父さんがしていたように構え、目を閉じ集中し己の体の中の何かが少し動くような感じがした。


 その動く何かを捉えようと更に集中する。するとお腹の中心の更に奥に何か渦巻いているものがあるのが分かった。その塊を意識して少しづつ体の中で循環させるように動かすと体が少し熱くなる。その熱を更に剣に纏わせるように意識し目を開く。そして前世ゲームの世界でやっていた動きを再現するように、地面に足を踏みしめ剣を縦に振り下ろし、空間を切り裂く。


『斬魔』


 薄緑の魔力が通り過ぎた残穢として残り、それも掻き消える。


「できた。俺もこの世界で」


 自分が武技を魔力を使うことができたことに魂が震える。


「凄いなナル、まさか1発で成功させるとわな」


「ありがとうお父さん、見本が良かったんだよ」


「いやあれはただ俺の動きを真似したんじゃない。ナルが自分独自の動きをしていた。もしかしたら才能があるのかもな」


 反応に困るな、前世でやっていた動きなのでそれを褒めらてもズルをした気分になりなんて言えばいいか分からない。


「それにさっきまで感じなかった魔力をナルから感じるぞ」


「お父さんが言ったように魔力を自覚することが出来たからね」


 確かにさっき武技を使用してからずっと魔力を体の中で循環させるている。まだ意識していないと動かないが、常に魔力が循環している状態でいられるように練習していきたい。


「じゃあこれで魔術への第一歩だな。そうだナルは武術もこのまま続けてい行くか? 将来使う機会がなくて体作りにいいしやっておいて損はないぞ」


 確かにゲームのときはただ自分が使いやすいように武器を使っていただけで、本格的に人に習ったことはなかったし、体を鍛える為にもいいかもしれない。


「やります」


「よし、じゃあ母さんと話て魔術を練習する時間と武術を練習する時間を分けるために少し話して来るよ。ナルはどうする?」


「僕は少し残ります。もう1回武技を使って見たいので」


「分かった。夕飯までには帰ってこいよ」


 お父さんが家に帰って行くのを見送り、僕はもう一度武技を使うために集中するのだった。

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