第3話 魔術と才能なき凡人の限界
次の日、今世の母親であるカナミに魔術を教えて欲しいと頼みにいった。
「うーん魔術ねぇ、別に教えるのは構わないわよ、村の子達にも初級の魔術位は教えているし」
「本当!」
「けど問題があってね。今のナルだとたぶん魔力量が少ないから、あまり練習も出来ないと思うのよ」
確かに今の俺の魔力では、1日に発動出来る数もだいぶ限られている。魔力量もレベル1では成長と一緒に上がる分しか魔力がない。まだ8歳の俺では魔術を練習するのに、必要な魔力の量が足りなく、1日に十級魔術を3回も使えば魔力が無くなるだろう。魔術を使ってみたいという気持ちが強すぎて忘れていた。
「まあでも将来的には教えようと思っていたし、今のうちに基礎と知識だけでも知っておけば少しづつ練習してできるようになるでしょうからやってみましょうか。 そうだ!カイにも教えましょう。 ナル呼んできてくれる? 」
そういって母さんは、僕とまだ家にいた兄を連れて外に出ていき周りに何も無い広々とした空き地にやってきた。
「まず魔術の説明からしましょうか。魔術には様々な属性があるわ、何があるか知ってる?」
「はい!僕分かります。火、水、風、土、光、闇の7属性だと思います!」
「よくわかったわねカイ。でもそれは初級属性ね。 他にも上級属性として氷や雷、木、空間などがあったり、その人固有の属性や代々その家で受け継がれている相伝の属性なんかもあるわ」
ちなみにゲームでは初級属性だから弱いという訳ではなく、扱いの難しさや術の危険度の高さ、初級属性のスキルレベルを上げないと使えなかったりと、色々な理由があるためこのような分類になっている。
「そして魔術には術ごとに階級があってね。十級から一級、そして特級があるわ。 でも特級は使える人がほとんどいないに等しいレベルだから考えなくていいわ」
「いつも大人の人達が使ってるのって何級になの?」
「十級よ。十級は通称生活魔法と呼ばれていてね、コップ1杯分の水を出したり、手からそよ風程度の風を出したりすることが出来て、生活が楽になるぐらいの魔術と言えるわ 」
ちなみ十級から八級はそんな感じの殺傷能力があまりない便利な魔術が多い。
母さんは流したが、特級は通称戦略級魔術で、1人で発動出来る人間は指で数える程しかいない。使用する場合は数十人の一級魔術士が時間をかけて何とか発動できるレベル。発動したらその地域は跡形も無くなるほどの威力がある。
「あなな達が将来何なるかはわからないけれど、十級魔術位は使えるようになると生活はかなり楽になるわ」
「村の皆は母さんに魔術を教えてもらったて聞いたけど、この村以外の人達って皆魔術が使えるの?」
「いい質問ねナル。街の中には学校以外に魔術を教えてくれる所があって十級位だったら1ヶ月位通えばある程度はできるようになるわ。ちなみに王都には貴族や他の国から留学してやってくるぐらいの魔術学校があるのよ」
この世界の人達は皆魔力を少ない量でも持っているので、十級位だったら色んな人が使えるのだろう。まぁゲームキャラの中に1人だけ魔力を全くもっていないキャラも存在するがあれは本当に例外だろう。
「それじゃあ、ある程度は分かっただろうし早速練習していきましょうか。まず自分の魔力を感じてみましょう」
そういって魔術の訓練が始まった。最初は自分の魔力を感じる必要があるが、これが全くわからない、前世では存在すらしていないしゲームでも魔力なんて感じなかった。兄は1日中うんうん言いながらも1日で魔力の感覚を掴んでいたのに俺は数日経っても感覚を掴めなかった。
魔術の訓練を初めてから1週間が経った。俺は未だに自分の中の魔力を自覚出来ていない。兄は既に十級魔術を教えてもらっている。
というかゲームの時は魔術を使うには最初、魔術スキルを取らなければ使えなかったはず、やはり現実の世界になったことでゲーム的な要素で、現実ではありえないことは変わっているのだろうか。
前に兄にステータスを見せてもらった時は魔術スキルは持っていなかったので、この世界はゲームに似た世界なだけで完全にゲームの時と一緒なわけでは無いということだろうか。
「うーん、分からん」
「お、ナルなにしてるんだ?」
そんなことを考えながら、自分の中の魔力を感じようとしていると畑仕事が終わったのだろう、父さんが家に帰ってきた。
「魔術の練習だよ。自分の中の魔力を感じようとしてるんだけど分からなくって」
「カナミから話は聞いてるがそう落ち込むなよ、俺なんて最初魔力を感じるのに1ヶ月もかかったんだぞ」
「そうなの? でも兄さんは1日で出来てるよ」
「あいつはカナミに似て魔術の才能があるんだろう。カナミも魔力は1日で感じれるようになったと言っていたしな」
確かに兄さんは魔術の才能があるのだろう、母さんに教えられたことは直ぐに出来ているようだし。
「じゃあ僕は父さん似てるから武術の才能があったりするんじゃない?」
俺の髪色は父さんと同じ灰色である。父さんは冒険者時代は様々な武器を使い魔物を倒していたと母さんに聞いたことがある。しかし俺がそう言った後父さんは少し悲しそうな顔をした。
「うーんそうだな、ナル俺のステータスを見てみてくれ」
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名前:サリス
年齢:41歳
種族:人間
LV:46
筋力:100
魔力:50
敏捷性:50
器用:70
耐久力:40
称号スキル
剣術LV.4 双剣術LV.4 棒術LV.4 槍術LV.4 斧 術LV.4 体術LV.4 弓術LV.2 隠密LV.2 農業LV.2 罠術LV.1 火.水属性魔術LV.2
スキル
威圧 縮地 気配感知
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父さんが見せてくれたステータスには凄まじい数の武器系統の称号スキル。しかしその殆どがレベル4で止まっていた。
「俺にはなナル、才能なんてなかっただよ。俺はな冒険者をやめたんじゃなくて、冒険者を諦めたんだ」
そんな言葉を父さんはどこか辛そうにしながらも口にした。
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