第20話「シャルロットの襲来!」


「レオニス様が持って来てくださった新しいバター、じゃがいもによく合いますね」


「だろう? 最近、餌が良いせいか牛たちの乳の出が良くてな。上質なバターに仕上がったのだ。パンにつけても美味だぞ」


「本当だ! 美味しい!」


「こっちのみかんのジャムとりんごのジャムも最高なのだ! バターとジャムを白パンにつけて食べる……至福の時なのだ!」


レオニス様とフェルと一緒に、離宮で朝食を取るのが、すっかり日常になっていた。


「王太子妃にお手紙が届いております」


「手紙ですか? 誰から?」


私に手紙を書いてくれる人なんかいたかな?


「ノーブルグラント王国のシャルロット王女からです」


「えっ?」


異母姉が私に手紙を書くなんて、思っても見なかった。


クレアさんからペーパーナイフを借りて、封を開ける。


「ふぁっ……?」


「どうした、アリアベルタ? 手紙にはなんて書いてあったのだ?」


「妹がヴォルフハート王国に来るようです」


「何? いつだ?」


「それが……今日なんです」


「はっ?」


レオニス様が素っ頓狂な声を上げる。


私も同じような間の抜けた顔をしていたと思う。


手紙なんか貰ったことないからわからないけど、こういうのって何日か余裕を持って知らせるものなんじゃ?


「お食事中失礼いたします。ノーブルグラント王国のシャルロット王女が王太子殿下と、王太子妃殿下に面会を求めております。いかがなさいますか」


クレアさんとは別のメイドが、妹が城に着いたことを知らせに来た。


「ええ? もう?」


いくらなんでも早すぎる。


「シャルロット王女は妻の異母妹で、友好国の姫だ。会わないのは失礼にあたるな」


レオニス様が席を立った。


「妹が申し訳ありません、レオニス様」


私も彼と同じタイミングで席を立つ。


「君が謝ることではないよ」


レオニス様が優しい人でよかった。


「フェルはここで待ってて」


「え〜〜、意地悪な姫に会ったら、髪の毛をチリチリにしてやろうと思っていたのだ」


「だから留守番なの」


シャルロットは一応はお客様だ。この城で何かあったらレオニス様に迷惑をかけてしまう。


フェルを離宮に残し、レオニス様と共に本城に向かった。







レオニス様は私の歩調に合わせて、少し前を歩いている。


正直に言えば、レオニス様を妹に合わせるのは少しだけ不安だ。


妹は王国の秘宝、麗しの姫の二つ名で呼ばれる程の美少女だ。


本来ならレオニス様の妃になるのは、妹のハズだった。


妹を見たレオニス様が「やっぱり結婚するなら妹の方がよかった」と思ったらどうしよう?


そんなことを考えている間に、妹がいる応接室についてしまった。


妹に会うのは気が重い。


いきなり「ブス!」とか言われるかも? ネガティブな考えが脳裏をよぎる。


……だが、私の予想とは全く違う展開が起きた。


「お姉様、お会いしたかったわ!」


部屋に入るなり、妹が私に抱きついてきた。


……えっ?! 何……? 何が起きたの??


状況を理解するのに、しばらく時間がかかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る