十文字さんの口はいつも真一文字
みけめがね
十文字さんの口はいつも真一文字
「ねぇ、A組の十文字さんの表情差分見たことある?」
「ないない! よく考えると一度も笑顔とか見たことないかも…てかなんで商業イラストレーターみたいな言い回しなんよ」
ありふれた高校生の放課後の雑談
西日の差す一年A組の教室には
俺、
正直俺は日直なんてとてつもなくだるいのでツミッターを流し見しながら、今日の出来事を日直帳に書き込んだ。
(今日もうわばみ先生の百合漫画は素敵だな…はわあ…癒される)
「何を見てるんですか?」
「ん……? うわああ……!!」
十文字さんが五センチくらいの至近距離で俺の後ろにひっついていた。
「そんなにびっくりしなく
てもいいじゃないですか……お化けじゃあるまいし」
十文字さんは真顔で呆れてる。そりゃあ驚くだろうその距離に振り向いたらいるって誰でも怖い。それが十文字さんなら尚更怖い。
血が通ってないような異様に白い肌に、カラスの羽のような色をしたロングヘアー
どこぞの怨霊と見間違われてもおかしくはない。
それより恐ろしいのは俺が百合男子ってことがバレそうになっていることだ。
「十文字さん、今見てたよね?」
「はい、女の子同士がイチャイチャすr」
「見てるじゃん!!!?! ガッツリ!」
俺は高校生活の終わりを覚悟した。
絶望する俺を尻目に十文字さんは
「ちょっとお手洗い行ってくるから黒板消ししておいてくれます?」
と言って教室の外に出ていった
十文字さんが遠くに行ったことを確認した俺は少しいけないことを考えた。
(十文字さんが勝手に俺の秘密を暴くのなら、俺も勝手に十文字さんの秘密を暴いてもいいでしょ……!)
俺は十文字さんの席にある十文字さんのカバンの中を『無断』で覗いた。
中にはブックカバーのかかった本が沢山入ってる
(おおっと? これはお宝なのでは????)
俺は期待しながらページをめくった
「ぇ……えええええええええええ!!!」
俺の声は校内にの隅々まで響き渡ったと思う。
ガラッ
最悪のタイミングでドアが開いた。
「!? 十文字さん……??」
俺は目を疑った。
何故なら十文字さんがまるで変なニオイを嗅いだ猫のような顔でこちらをじっと見て立ちすくんでいる。
(十文字さんの表情筋が動いた??? 十文字さんの表情筋が動くと災いが起こるとか誰かが言ってたけど、これがどんな表情だかわからないけど…嘘だろそんなにまずいことしたか…?)
3秒くらいして十文字さんは真顔に戻り
俺の方に無言で近づいてくる。まるで俺は蛇に飲まれるカエルの気持ちになった。
「三条くん」
「は……はいッ」
(オワタ…)
「私、百合にハマったんです」
「ほ……ほえ?」
「私、最近本屋でバイトを始めたんです。そしたら他のバイトの女の子が
この本を読んでたのが気になったので自分も買って読んでみたんです」
ここまで真顔で十文字さんは話した。
「それが本当に! もうヤバいです…思い出すだけで目から尊みの後光が溢れ出しそ
う……! ウワー!」
十文字さんは一瞬にして顔も言動も限界オタクになってしまった。
俺の脳内の十文字さんのイメージは破壊された。
(あの半分都市伝説になっている十文字さんの素顔がまさか百合女子だなんて…)
「じゅ、十文字さん……」
「何? 三条くん」
「俺たち友達にならない?」
「え?私と?」
「十文字さん以外にここに誰がいるのさ?」
「……いいですよ、じゃあ早速さっき三条くんが読んでた百合漫画のこと教えてくれませんか?」
「!」
十文字晴香はオタクで俺の百合共有仲間。
ちなみに十文字が日々表情を殺している理由はどんな作品を見ても、好きになったキャラが必ず死ぬので喪に伏しているから…らしい。
十文字さんの口はいつも真一文字 みけめがね @mikemegane
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます