第7話 出発地点

俺たちは無事にスモールワールドに戻ることができた。


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俺は今、日が昇っていくのを見ている。今の時期にとってはかなり珍しいことだ。

この光に広がる景色が、俺が体験した昨日の地獄を称賛されているような気がした。これだけはいい気分だ。これを見たらはっきりと分かることがある、そう思う。


俺は二つのことについて考えている。


一つはドラゴンが来た時のことだ。

あのドラゴンが来た時はあまりにも自分らしくはなかった。これは反省に該当することだろう。明らかに俺はあらゆる手でドラゴンを惑わすことができたかもしれないのに、俺は何ひとつとしてそれは実行できなかった。俺にとっては明らかな失敗だ。

こんなことで一番恐れられる盗賊になることは遠いだろうな。そして、エニーテがいなかったら、俺はこの世にいないだろう。


もちろん、俺はエニーテに救ってもらった恩がある。ただ、俺はそれ以上の感情は感じられない。でも、彼女に付いて行けば、良いことがあるかもしれないと思っただけだ。まだ、それは何なのかは俺には分からない。もしかしたらそれを感じることすらできないかもしない。

俺がこれからどんな道に進むのか、分かり切ったことじゃねぇ。

だからと言って、俺は約束をしたからにはやり遂げてみせる。


一つは父親についてだ。

俺は父親のことになると、思い出したくもないことがたくさんある。でも、昨日のせいで嫌でもことについて思い出してしまう。


俺ははっきりさせたいものがある。今まで生きて何も大したこともした覚えはない。どん底な感覚しか残ってねぇ。そのどん底さはパッとしないほどのものだった。

他の奴は自分が生きていたらなにか輝くものがあると信じて行動するが。そんなもの俺に探せる自信はない。だが、俺にはまだ見ぬ世界へと行ってみたいのは確かだ。人に恐れられながら、そして誰にも振り回されない生き方がしたい。


でも、そんなものは俺がこんな場所にいる意味を成さないのだ。まず俺は理解したいのだ。盗む意味を…


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俺が未だに残る記憶、それは父親から出たであろう言葉だ。正直その記憶だけに意味はないと思う。だが、断片的覚えているのはその記憶だ。俺の周りも確か騒がしかったような気もする。だがはっきりとは覚えることはできねぇ…

そんな中、あいつは言ったんだ。


俺に、「盗め」ってな。最後の表情も覚えている俺はなぜかはしらねぇが、父親は俺を見て確かに変な顔をしていた。それは俺を見た瞬間に驚いたのだ。目の視線を合わせてだ。俺はなぜ父親があんな表情をしたのかは知らない。俺の方見て何に驚いたのかさえも。



ただ、それよりも、盗めって言葉の意味がどうしても引っかかる。あのだめな父親が言うような言葉じゃねぇ。あいつは自分が気に食わないことを嫌う性格がある。


なのに自分の倅に盗み働かせたりしたいのか?ふつうはしないだろう。

それが余計に知りたいのだ、そして胸糞悪いと感じることでもあるんだ。


そして奇妙なことに、その言葉を言った瞬間に笑みを浮かべてた。どうしたらそんなことに笑みを浮かべることができる。明らかにおかし過ぎる。俺にとってもその父親の表情は不自然だったのだ。昔はあんな顔を見せることはなかった。




しかし、盗みを働くことに関しては、そのままなっちまったことが予言されたみたいで腑に落ちねぇ。


俺はなんで盗賊みたいなことをしてんだろうな。別にそこまで酷でぇものじゃないとは思う。色んな事に対してどうすればいいのかを自分なりに考えることはできた。

だが、俺がそれ以外にできたことはいくらでもあったろうにとも考えた。どうして俺はこの道に迷い込んだんだ…


こんなことになるはずじゃなかった。だが、俺がたどり着いた道はそれしか残ってねぇ。自分の周り悪事を働くような奴らばっかだった。そこには優しさなんて持ち込めねぇ、本当はしたくてもだ。


これが一歩間違えれば闇に進むということなのかもな。本当にしょもねぇ…こんな何も残されてないようなところに生きて、そして他に出会ったやつには面白い奴はいたが、大してそれは切り口になんかなったりしなかった。俺は幾度も迷い込んだ。そしたらこんなとこまでに着いちまった。なんてこっだよ…


やっぱこの話を考えるだけ無駄だ。


どうしたんだろうと嘆いていては、俺の欲望は満たせはしない。


だから俺は王国の宝を何としても探す。そして、唯一残された道の盗賊として上に立つんだ。


必ず俺に理不尽な目に合わせた奴らもを見返してやる。


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俺はある日、盗賊の間でエニグマの秘宝があるのを知った。それは何年か前、一気に広がり始めた。最初の頃はどんなもんなんだ?っと思っていたが、どうやらその秘宝は王国の奴らにとって大事なものらしい。そして、見つけた人は王国から祝福されることになる。王国から祝福をされた時にはどんな人であろうとご褒美を貰えることになっている。なぜこれは盗賊に関係しているのかというと、罪を犯した人や奴隷でさえも自由の実になれるそうだ。ということになれば、王国に目指す奴が増えるということだ。


だが、そんな理由だけでは盗賊は喜ばないだろう。盗賊には既に王国で暮らしている奴がいる。そして、住民として平凡に暮らしているのもいる。だったらこんなもんは要らないだろう。


その裏にはエニグマの秘宝は誰も解明できない力があると噂されている。見つけられていない事もあって、確信的なものはないらしいが、ある手紙がそれを証明している。それはエニグマの秘宝を創った張本人からだというらしい。そして、確かにぺルペトラ王国の周りに埋めてあると提言している。そして、盗賊たちはその力とやらを求めている。


こんなもの証拠はあるのかと言われているのだが、ウェンデルの旦那はそれが本物だっと仲間の奴らから散々言われていた。だが、なぜいまとなってそんなことを言ったのか俺には分からない。


でも、そんなことは俺にはどうでもいい。

なぜなら、俺はエニグマの秘宝以外にも得られることがあると思っている。俺は盗賊としてそれを盗むことに意味があると信じている。そう俺の勘が言っている。

単純に力があるから盗みがいがあるだけじゃね。もちろん、値も高くつくだろうし、貴重なもんで凄いもんなのだろう。俺はお宝自体にも興味はある。きらきらと輝くものを見つける時の喜びは、俺を笑わせてくれる。


だが何よりも、俺は盗賊として上に立つ。

俺が今まで背負なければいけなかった人生の代償として、エニグマの秘宝を手にしてやる。王国の奴らに先取りされるわけにはいかない、ていうか気にくわねぇ。


あいつらが貴族でもない俺に悔しがる姿を見届けてやる。ましてや盗賊の奴らでも容赦はしねぇ、俺より先に取れるもんならやってみろ。

手に入れた暁には、俺がずっと探し求めている景色が見える。

そして、全て俺が引っかかっていることがはっきりするはずだ。


それに新しい場所に留まれることはいいことだ。


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俺はワン・ワールドに合流した。エニーテもそこで休んでいる、多分力を消耗したからまで少し疲れているようだ。

ウェンデルの旦那は王国に入れるように計画を進もうとした。



俺たちはこれまでに色んな準備をしてきた中、今となってそのすべての結果が積み重なっている。そして、エニーテの状況もある中で、実行しようとした。


これまでにしてきたことは素材集めだったり、お宝がどこかに出現しているのかを調査していた。だが、やはりこの場所だけだと情報は入りづらいらしい。だからなるべく王国にいる奴らとアークレイブンを通じて手紙と素材を送っていた。俺たちに資金などもお礼に送っていた。やはり商人は当てがあって頼りになる。


話的に一番面白いと思ったのは手紙をどうやって門番の後に通らしてくれたかのことだ。ウェンデルの旦那は魔女っぽいおばさんとして手紙や素材を送っていたそうだ。


そしてだいたい手紙の内容的に愛情表現を含んだもの定期的にを送っているという設定で統一している。そしたら門番も毎回気持ち悪いおばさんのラブレターを見なければいけないことに毎回引いている。想像しただけで笑う。一つの例として

「私の愛情を受け取ってね、ブチュ💋!」

みたいな感じだとよ。ブチュって送る奴いるのかよって思っているのだろう。

しかもそのおばさんのキスマークがちゃんとついているらしい…


だが、実際は手紙にはある仕掛けを入れて別の形で本来のメッセージが読めるように仕込んである。

その手紙にはだいたい王国がどう動いているのか、そしてどんな情報をつかんでいるのかという状況報告みたいなもんだ。

もしくはウェンデルの旦那が今どんな状況でなにか物が欲しいかを伝えている。


なぜウェンデルの旦那がそういうことに興味があるのかは過去にも王国で見過ごせない問題が起きたからだ。今回もそれに当てはまる。


ここに来るまでに時間をかけたが、俺は次に行けることに安心している。ウェンデルの旦那もそう思っているはずだ。


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「今日も長い日になるから覚悟するんだぞ、でもその前に色々と整理しようか」


「おう、疲れるのはごめんだけとな」


ウェンデルの旦那は王国に入る方法を色々と話し始めた。


これまでに王国に潜入できる方法がいくつかある。


方法その1

身を潜めて密輸として王国に入る。この方法は昔からしている盗賊がいるらしいが、今では通用はしない。さすがに王国の奴らも対策してきやがる。


方法その2

門番の兵に賄賂や色仕掛けをして入る方法。これも時には入れる人もいたが、失敗したやつもまた多い。門番の中で頑固な奴がいる時とそうでない時がわからないし、いないと考える方がいいだろう。兵もひとりで動いていないから説得するのが面倒だ。


それに俺が噂で聞いて面白く思った話だが、兵に色仕掛けを企んだ女の盗賊もいたが、どうやら相手はゲイだったというおちもある。そんなリスクをかけてまですることではない。


方法その3

門番の兵を全員倒して入る。これは言わなくても乱暴すぎるし、馬鹿がやることだ。

それなんかしたら即指名手配されかねない。


じゃあどうやって入るのかというと、俺たちは偽装をして入ることにした。この方法ははっきり言って、特定の人が揃っていないとできない。その上、普通の盗賊が身分を隠しながらに入るのは難しいらしい。


そこで、ウェンデルの旦那は好都合すぎることに指輪のことを考えていたのだ。そう簡単に見つけることが出来なかったそうなのだが、今はその指輪のおかげで無事に入れることになる。


そんでウェンデルの旦那はこの方法に関しては自信を持っている。なぜなら、彼は王国にとっては信頼できる人物だからだ。もちろん、門番の奴らにも親しい。


「で確認するんだが、あいつらはなんであんたを信頼できるんだっけ?」


「まあ、俺は元々王国で仕事をした身だからな。その中でお世話になっている人が多いんだよ」


俺はウェンデルの旦那が信頼できる人だとは分かるが、果たして門番の奴らに通じるのかっと思った。


「本当にそれだけであんたのことに耳を貸すのか?」


「信頼したまえ、お前なら分かっているはずだろう。商人として成り立つのもその理由のひとつさ」


「確かにな」


ウェンデルの旦那はかなり自信満々の表情で言っている。まだ心配という気持ちが拭えないのだが、彼なりのやり方があるのだろうと信じてみる。

だが俺はもう一つの疑問を持っていた。下から入れないのなら上から入ってくる方法もあるんじゃないかと。


「今更だが、なんでアークレイブンでは入れなんだ?」


「密輸とほぼ同じ理由さ、王国では空中での見回りがあるんだよ」


「大変だな王国の奴らも」


ウェンデルの旦那は俺の方を見て苦笑いをしてた。おそらく皮肉にしか聞こえなかったのだろう。もちろんそういうつもりだったが、あいつらが馬鹿ではないのが少々残念だな。


「まあ、いろいろと分かったところで、そろそろだな」


ウェンデルの旦那は荷物を揃って、準備ができた。いかにも商人らしい行動を見せるためと、本当に何か大きなことを企んでいるに違いないのだろう。そこには心配はなさそうだ。


「そうだ、行く前に、これを着させるんだった」


ウェンデルの旦那は俺に服を渡した。王国の身だしなみに合わせているのが分かる。


「あんなものを着てたら、怪しまれるからな」


俺はこの服でもいいのだが、盗賊としては自分の姿を隠すのも必要なことだ。ウェンデルの旦那もこの服が大事なもののように見えた。


「そうだよな、捕まったら元も子もねぇしな」


早速俺はウェンデルの旦那が俺にくれた服に着替えた。しっかりとした服装だ。どこか偉そうな人が着そうなものにも見えるが、動きやすい。

旦那はなかなかに気が利くな。


「似合っているではないか」


ウェンデルの旦那は俺がこれを着ていることに嬉しく思っているようだ。なぜか昔からこれを誰かに着させて欲しかったのだと思う。俺には似合わないっと思っているのだが、喜んでいるなら仕方ない。


「ありがとよ、大事にするぜ」


そしたらエニーテが起きるところを見て、気遣いをかけながら彼女が準備いいかどうかを確認した。


そして俺たちは王国にむかうことにした。


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俺たちはスモールワールドからでていった。そして、そこにいる人たちはウェンデルの旦那が出ていくところを見た。何人か俺たちを見送っているようだ。心配している様子も少し見えた。おそらく食堂のことなのだろう。だが旦那はちゃんとそれについても対処しているらしい。詳しくは知らないが。


住人と盗賊たちもなんのことだろうと思いながら俺たちを見た。中にも声をかけたやつもいたが、おそらくいつものことだと思っていた。


「俺はしばらく離れる用事ができた。今まで通り仲良くしろよ」


彼らは分かりやすく応じた。ここまで来たのが奇跡だと思うよ。


そして、俺たちは森の中に進んだ。


「でどうやっていくんだ、旦那」


「そうか、まだ見せたなかったな。驚くぞ」


途中まではウェンデルの旦那が持っているアークレイブンに荷物を持たせて進んだ。

俺は旦那がどのような方法で王国に連れていくのか知らされていない。おそらく俺たちを驚かせたいのだろう。


旦那はある地下みたいなところに連れてきた。洞窟とはまた違う場所だ。そこにあったのは乗り物だった。地面に車輪とある導線のようなものが見える。


「旦那、これはなんなんだ?」


「これはトロッコ列車っていうんだ。だが、凄いのはこれだけじゃない」


旦那はあるトロッコ列車の仕掛けを起動した。魔法装置のようなものがついている。おそらく自動的に動けるように組み込んだようだ。色んなものが回転している。


「なんだこれ、凄げぇな!」


俺は単純に驚いた。俺はこれがどのように動いているのが分からなかったが、とても興味はある。


「これを作るのに2年ぐらいかかったんだ、なかなかだろ?」


そしてウェンデルの旦那は俺たちと荷物をトロッコに乗せた。これをどうやって2年で作ったんだろうな。周りに自然が広がっている。技術的なものだけではなく、移動中楽しめるように作っているようだ。エニーテも驚いているように見えた。


乗り物は一回り大きい、荷物が置ける場所と座れる場所も作ってあるようだ。設計をかなり考えられているように感じる。


俺たちはトロッコに乗った。ウェンデルの旦那がトロッコの前の方に行った。座り心地としても悪くない。かなり凝った作り方のようだ。


「で、これどうやって動かすんだ?」


旦那は張り切った笑顔でこっちの方を見た。何か驚くことでもするのか?


「こうやって動かすんだよ!」


旦那はトロッコをレバーのようなもので動かしていた。そして動き出すと車輪が動き出すのが聞こえてくる。最初はゆっくり助走をかけながら回っていった。俺にとっては初めての感覚だ。この何とも言えない音と環境によって圧倒されていた。


徐々にトロッコのスピードが上がったら、ウェンデルの旦那は魔法を使う素振りを見せた。旦那が魔法を使い始めてトロッコが滑らかなに、そして追い風が吹くように走らせた。


「すごい…」


エニーテは顔をトロッコの外側で眺めていた。彼女の髪が透き通るように風に流れている。


俺も世界が急に広がったことに感じた。あんな殺風景な森の中からこんな涼しく気持ちいい風に吹かれるのが初めてだ。


「お姫様も喜んでいるようですぞ」


ウェンデルの旦那は嬉しく笑っていた。今までしてきた努力が報われたような感じに見えた。


「お姫様とか言わなくていいから…」


エニーテは珍しくまた俺に声をかけた。お姫様という言い方に不満があるようだ。


「んじゃあエニーテのお嬢さんは?」


「お嬢さんとかも…」


「いや、エニーテって呼び捨てというのも違和感があるな…」


「それでいいよ…」


エニーテはまたどこか悲しさを浮かべるような顔でそういった。だが、前よりは良くなった気がする。俺の直感的にも扱いが変わっているようにも感じた。

これも一歩前進だ。


俺は別に彼女のことをそのまま名前で呼んでもいいのだが、なぜかぱっとしない。恐らく彼女が王族だからという理由があるとも思う。だが、しばらくはエニーテと呼ぶことにした。


ウェンデルの旦那はトロッコの乗り具合をかなり楽しませてくれている。真っ直ぐ行ったり、横に曲がったりと色々と道を変えて行っている。こういうのは旦那の趣味だ。旦那らしいといえば、そうなのだが。


俺はこの時間の流れをできるだけ満足しようとしたのだ。


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そしてあっという間に王国前に到着した。


この前に来たときは圧迫されているような感じがした。門の作りからして、この国がどれだけすごいのかを見せたがっているようだ。ここからでも王国がどんな進歩をしたのかが分かる。門も石像などがある。派手だが、見せつけ過ぎだろ。


俺たちは門番の前に並んでいた。他にもチェックされている人がいる。

その人たちの様子もまた新しい感じがした。商人はもちろん、冒険者みたいな奴、人を連れてきているような怪しい奴、まんま怪しげな恰好をした奴もいた。


俺はここまで来れた実感がまるでない。だが、その向こうに俺の探している物があると分かっただけでも、ここを通れるのがどんなに大事か分かった。


「指輪は付けているね、二人とも」


俺たちは頷く。そして、俺は震えが止まらない、だがこれはきっと俺が緊張しているからではない…これは興奮によってこうなるやつだ。俺にもそういうのは聞いたことがある。騎士の奴らも戦闘前にこういう感情になること。そう、あのバトルクライっていうんだっけか。俺はこんなもので緊張してたまるか。


「俺の言う通りすれば大丈夫だ。信じろ」


「俺はなんてことはねぇさ…なぁ」


俺はエニーテに向けて言った。だが彼女はかなり緊張しているようだ。この中でも一番怪しくないだろうし、俺が一番捕まる確率が高いだろうが…


ウェンデルの旦那は指輪の効果を出す方法を教えた。

旦那は俺たちに目を閉じて指輪を3回右方向に回せと言った。これで効果が発動するらしのだが…


「よし、ちゃんと髪と目が変わっている。成功だ」


なんのことかは知らないが、どうやら大丈夫そうだ。


少し時間が立って、いよいよ俺たちの出番が回った。


「はい、次!」


俺たちは門番の前に立っていた。門番は基本的に問題を起こしそうな人を徹底的に捕まえたり、尋問するのだが、そういうようなケースは稀だ。だが、ある日を境に、盗賊の入出のせいで困っていた時期があって、盗賊などの奴らを集中的に警戒していたらしい。だが、今は少し違うとウェンデルの旦那が言っていた。とは言っても、盗賊が出入りすることには長けている。だがら、頼むぜ旦那。


と思ったら、門番どもは旦那の顔をじっくり見て、疑問を持っていた。


「もしかして…あんたってあの…ウェンデル様!久しぶりですね!」


門番の奴らが旦那を見て、昔の友人が返ってきたように驚いていた。旦那の言う通り、お世話になっている人が多いというのは本当だったようだ。


「もう様と呼ばれるような人じゃないけどね」


「またまた」


俺でもそれはご謙遜をっと思っている。この人がしてきたこと考えるとやはりすごいっと思っている。商人として生きるのは大変なことだ、盗賊に追われるのが日常茶飯事の中、旦那はそれを耐えることができた。精神力が凄まじいはずだ。


「で、今度はどんな用でここに来たんです?」


「ちょっと王国の方で仕事があってね、また俺の商品を欲しがっている人がいるんだ。」


「そうなんですか、この二人はお連れで?」


「ああ、この二人は僕の商人の仕事を手伝ってもらっているよ」


さすがにこっち見てきているようだが、俺が盗賊ってばれたらしゃれにならねぇ…


「念のためにその二人の顔を見せて貰えますか?」


「いいよ、お友の願いとあらば」


「もったいなきお言葉ですよ」


門番は俺の顔をまず確認した。

俺はまだ心配である気持ちがにじみ出ていた。本当に大丈夫なのか?急に態度とか変わることはねぇよな。いや、大丈夫だ。こんな所で旅を終わらすかよ。

そしたら門番は表情を崩すことはなかった。


「おお、意外と若いね」


意外とってなんだよ…やっぱりこいつも俺のハンサムさを評価できないようだな。

しかし何も変な表情されなくて良かったぜ…そして、俺が変な荷物を持っていないかを確認した。だがそんなものは既に隠してあるからそれも大丈夫のはずだ。


「はい、あんたは大丈夫だ」


よし、これなら大丈夫だろう。


次はエニーテの番だ。


門番は彼女の顔を確認した。

まあ、この中だと俺が一番怪しいとは思っているが、エニーテが面倒なことになったらそれこそ意味がない。


門番は彼女の顔をしっかりと見た時に動きを止めた。どこか心はここにあらずの表情をしていた。これは驚きよりもっと柔らかい感情を表に出していた。エニーテの顔の様子が確かに変わっていた。髪の特徴が茶髪に変わって、顔の特徴も少しだけだが、違う気がする。まさか見覚えがあるのか?

おい、これはどっちなんだ?いいのか、悪いのか?


門番はエニーテの顔をじっくり見た後に用を済ませた。


「はい、あなたも大丈夫です」


門番は弱気に見えたが、それを何とか誤魔化していた。

気を取り直してはするものの、物を調べることもしようともしなかった。門番は彼女の顔を見ても何も言おうともしなかった。こいつもしかして、少女だからって甘くなっているのか?まあ、大丈夫ならいいか。


「はい、では次!」


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こうして俺たちは入国することになった。今までやってきた苦労がめでたく感じるとうことだぜ。


「こんなあっさり入れるとは思わなかったな」


「だから言ったろ、俺を信じろって」


そしたら王国の門を通り過ぎると、眩しく感じた。俺が目をまた開けたらそこに広がる景色は絶大なものだった。谷や森林が綺麗に見える。そしてそこには家を立って、農場をしているような人もいた。俺が今まで見てきた自然とは大違いだ。


「ぺルペトラ王国にようこそ。いや、お帰りっと言った方がいいか?」


「やめてくれ、ここには思い入れはねぇよ、旦那」


ウェンデルの旦那は難しい顔をしたが、それを笑みで直そうとした。エニーテは空を見上げながら優しい微笑みを浮かべていた。もちろん彼女はこの景色を見て驚いてはいない。ここに来れないのが恋しかったのか、もしくは親を探したいということに期待しているのか分からないが、純粋さが伝わった。そして、俺はあることを思い浮かべる。


「エーテ…」


俺は思わず口に出した。理由は分からない、でも彼女の様子を見て、その言葉が出てしまった。なぜかこの言葉に懐かしさを感じる。


彼女は俺がそれを言った瞬間にこっちのほうをぱっと見ていた。俺が予想外のことを口走ったからだろうが、それと同時に何かを思い出したようにも見えた。


「いや、なんでもない」


俺は何もなかったかのように歩いた。


建物も俺がいた地域とはまるで違う。明らかに手入れが込められている。俺は驚くことしかできなかった。盗賊にしてはこれは理不尽にもほどがあると思うだろう。正直俺もこういうように住んでみたかった。だが、それはもう関係のないことだ。


それでも俺は、王国には入ったことはあるが、こんなことになるとは想像できなかった。かなり技術的にも進歩しているようだ。だが、これでも序の口のように感じた。

もっと深く行けば、新たな発見があるに違いねぇ。悔しいが興味があるのは確かだ。


俺たちはとりあえず人が集まる場所に向けて行くことにした。


「ここにいたら迷うことも大いにあるが、宿屋に行こうか、いいところがある」


ウェンデルの旦那は、早速ながら活発な街の方に向かって案内した。


俺たちはそこにたどり着く前に観たものは、馬を乗っている人がいたり、馬車のように見えるものが馬がいないのに勝手にその乗り物が動いたりとみるものが初めてのものが多い。農場のようなものがあったりといろいろと見た。


ここでは道路がしっかりと分かりやすくなっている。俺のいたところはこういうような道路が引かれているところが稀にしかなかった。なぜこのような違いがあるのが謎だ。


子供が遊ぶ様子も少しだけ目にした。その子供たちは走っていたり、はしゃいだりしていた。エニーテはその様子を眺めていた。風車のようなものも見えた。


そして、段々と進んでいたら緑が少し減っていき、建物の数が増えている。そして、その景色にもまた圧倒されていた。大きい建物もあれば、しっかりと店とか広場などもあった。これが俺が大雑把に予想した町のようなものだ。やはり原型としては俺がいたところでも分かりやすくイメージとして残っているんだな。


話によれば、これはまだ王国の外の周りらしい。ということはまだ、王都のような所にはほど遠いということだろう。比較的、かなり大きい国のようだ。



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「よし、着いたぞ二人とも」


こうして俺たちは宿屋につくことができた。これもウェンデルの旦那の仲間が仕切っているようだ。意外と広いが、宿屋に越したことはない。食べる所も奥の方であるようだ。


「ここにいれば安全だ。本当はもっと心地良い場所に泊めたいが、今のところここしかない」


「聞こえてますよ、ウェンデル」


ある女の人が後ろから近づいてきた。どうやらこの宿屋の関係者の人のようだ。


「シャーラ、久しぶりだな」


この女の人は三つ編みでおしゃれなドレスを着ていた。旦那とどういう関係なのだろうか。


「全くね、相変わらず元気にした?」


「そりゃあね、大変なこともたくさんあったけど」


「ふふ、あんたらしい。でも良かった」


女の人はウェンデルと会うのが久しぶりで嬉しい顔をしていた。活気のある表情をしているのが目立つ。面倒見がよさそうだ。後は話からして友人のような存在であるのは確かだ。昔の旅の仲間となのだろう。


話には聞いていたが、しばらく王国にで向かわなかったのは本当だったのか。どこかに用があるということが多かったから、その間に王国に言っていたのかと思っていたが、違ったらしい。旦那は結構忙しい人なのだろう。


「そうだ、紹介しよう、ここの主人シャーラだ」


「よろしくね、話は聞いているわ。二人とも訳ありのようだね」


この人は俺に対して違和感や嫌悪感を感じなかった。ただ、この状況を面白がっているようだ。いい人なのかどうかちょっと怪しくなってきた。


「おう、俺はドーレン・アイセルドだ、シャーラの姐さん」


「私はエニーテです…」


「姐さんとは優しいじゃない。二人ともいい子たちだね、さあ、案内するよ」


姐さんと呼べるような人は初めてだが、ウェンデルの旦那の知り合いである以上、この姐さんにも同じ扱いするのが礼儀ってもんだ。この人にもてあそばれるのは勘弁だがな。


---


シャーラの姐さんは俺たちに部屋の案内をしてくれた。部屋は二つ、旦那の方は荷物の用があるから実際には一人ずつで部屋に入ることになる。


しばらくのうちはここでくつろぐことになるだろう。


「君の部屋はここだよ、ドーレン」


シャーラの姐さんは俺の部屋を案内してくれた。


これも今までと比べて大きさは違いすぎる。スモールワールドでは想像できないことだ。俺はこんな部屋でも満足はできる。だが、これは王国の奴らにとっては普通なのだろう。


「変なことをしようとしないでよ」


シャーラの姐さんは嫌味があるような言い方をした。


「しませんよ!」


シャーラの姐さんは笑いながら部屋を閉めた。そして早速俺をからかい始める。ていうかここで変なことできねぇよ。宿屋に人なんか来たらそれこそ怪しいぜ。


そしてよく見たら本や遊べるものなどが置いてある。さすがにギャンブルのゲームはない。おかしな物も置いてあるのだが、これはなんなのかわからない。つまらなそうなもんだろう。


俺はここで休んでもいいのだが、日はまだ早いから出掛けて情報を集めることにした。


微かにだが、何か来るような直感を感じたのだが、無視することにした。別に殺気ではないしな。


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外に出かけてみると森の中のような環境とは違い、建物を上り降りができる。俺はまず人の何気ない会話を盗み聞きをしようとした。建物の上からぶら下がってみたり、ベンチに座って聞こうともした。


やはり、王国だけあって広さがあるな。そしてこれがまたほんの一部というのも未だに信じることができない。


盗み聞きに関しては正直地味なことだ。だが、ここら辺に来て少しだけ楽しむこともできた。建物の作りも歩きやすいし、登れる所も多い。だが、俺にとって苦痛だったのはしょうもない人間関係の悩みとか、どの女が好きかとかだな。あと見てて痛かったのが、いろいろと見せつけてくるカップルだ。なぜか不気味なものを感じた。


大してここら辺で得られるような情報は少ないものの、気になることも言っていた。

それはここら辺に酒場がある。それだけは重要ではないが、最近その酒場に見知らぬ人たちがいるらしい。これはエニグマの秘宝の情報について聞けるチャンスだ。



面倒なことにならなければいいが、酒場は問題が起こることで有名だ。それは王国でも、そうではなくてもだ。


そして、俺は酒場の方に向かった。俺は酒は飲むつもりであそこにはいかないし、情報が欲しいだけだ。


向かっている途中に聞き覚えのある声を聴いた気がする。


確かめてみようか…


---


今日は本当に面倒な日になりそうだ…


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読んでくれた方、ありがとうございます。


ペースがまた落ちましたが、その代わりにストーリーの方を頑張りたいと思います。

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