第6話 思わぬ感情
作者の一言
始める前に、投稿が遅れたことに申し訳ないです。
またまだ続くのでお楽しみにして下さい。まだまだ序の口です。
ではよろしくお願いいたします。
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---エニーテ視点---
私はある光景を見ていた。それは草原みずしぶきが流れることだ。水は草の上から下へと地面に流れる。草の先までと水が流れるのを見るのが私の日常の一部だった。多くの人によってはただ草原に水を流しているだけって言っているけど、どうしても私はそれを見るのがとても好きらしい。なぜかは私でも説明できない。
でも、私の空っぽに感じる瞳孔に映るのは雨が降っている森の中だ。馬車にによって移動している?この前にも移動手段を何回か変えているのは感じたけど。私はただ疲れている。もう、何がなんだが…
「ていうか、雨降っているんだ…」
こんな天気じゃあ月を遠くから御覧なさることもできないでしょうね。見れたとしても、私の瞳に移るのは満月でもない。ほんの欠片しか見れないのでしょう。私は月のようには美しくはないのだから。このペンダントも付けているけど、私はこれを着るにふさわしいのでしょうか?雲の上の声を聴いても分からない思う。
これは母様が私の誕生日にくれた大事なネックレス。言い伝えによれば、これは月の力が秘められている。そして、私が九つぐらいに読んだおどき話のアーティファクトの一つでもあるというのも聞いた。そればかりはただの伝承話って思っているけど、それが嘘でも私はこれを着られることが悪いことなのでは、っと思ってしまう。
私が唯一信じていいと言われた紋章の人たちは大丈夫かを見守っているようだけど、そんなことも気にする気力もない。正直最初は怖かったけど、今はそんな感情も湧きあがらない。この紋章の人たちはかなり私を大事にしているようだった。それには感謝はしている。でも私は特別扱いは好きではない。ふっと見たら、あの人たちも何か不満があるようにも見える。もしかして、怒っているのかな?私はあの勇ましい人達がなにを考えているのかわからない。
勇ましい…それは私が知りえることのできないもの。私の親のように…
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私の一族は王族の末裔です。父様は、ぺルペトラ王国の王子で、剣士でもあったという。私は時々、父様が剣を振っている様子は見る。その内容だけでは伝わりにくいけれど、王国の平和に貢献するほどの偉業を成し遂げるほどだと執事様やメイド様には聞かされました。
話を聞く限り、父様は人に縛られることがとても嫌いだったらしく、暇さえあれば町の中や、村に行っているというのです。そして、何よりも、父様は王国の改革や変化をとてもこだわっていたそうです。私によれば、とても父様らしい行いだと思います。
父様は旅に出ることを決意し、王国に仕える仲間を探すために各地域に回りながら父様とともに行くことに賛同する者が現れるのを探していました。その旅の道中で他に4人を集めることができたのです。本来ならこのようなことは認められないらしのですが、父様は異例の能力持ち主だったらしく、王家とはあまり仲の良い関係とは言えず、彼らにとっても都合が良かったらしいです。
一人は、剣と盾を使いこなす人でした。
この人は初めて父様と出会うことになり、早い段階で意気投合をしたとか。この方の特徴はかなり大雑把な人の割に、いざ戦闘になるとそれは攻撃用の魔法と剣術がかなり目立つ人でした。ですが、戦闘以外ではこの人は無茶なことをすることが多いと聞いたことがあります。
それをおいても、父様にとってこの方は親友と呼べる方なのです。
一人は、弓矢を使いこなす人でした。
この人はかなり器用な方でいつも神経質な人でした。父様はこの人と初めて会った時、あまり信頼されていなかったようで仲間にするのが大変でした。この人は実力はもちろん、冒険するために必要なことには長けていた人物でした。地図を見ること、薬剤、食べる物、どこ行けば安全なのかを概ね理解していたという。その人は一匹狼を好み、パーティーのようなものに馴染めないと父様に何度も伝えようとしました。
それでも父様は周りを見回す人がパーティーにいないと危険が伴うと早い段階で気づいたようで、この人が持っている知識があれば、きっと王国のためになると気づいたようでかなり抜擢したがっていたようです。
一人は、魔導士で、回復や防御に徹して使いこなす人でした。
この人は魔導士では珍しいと言われているのだけど、かなり体系が大きいのです。見た目とは違い、心優しい人物だったそうです。ですが、戦闘になれば、この魔導士さんは杖を武器として使うこともあり、仲間を守る役割でした。
その中でも特徴的な魔術師に出会うことになりました。それが私の母様に当たる方です。両者とも一目惚れをしたとのことでした。果たしてそうなのでしょうかと思うところはありますが、確かに順風満帆な家庭に生まれることができたのは事実ですし、母様と父様はいつでも愛し合っていると私の目でもそれは見えます。ということは本当なのでしょうね。
母様はあらゆる魔法を使いこなせる方と聞いていますが、実際にどんな風に戦っていたのかは話でしか聞いたことがありません。ただ、私の母様はパーティーにとっては他のパーティーメンバーのように大事な人物だったとよく聞きます。母様は魔術師としても、戦い方も特殊で、動きが機敏だったようです。時には魔法を使って、空中にフィールドを使って飛び回ることもあったとか。
父様が成立したパーティーは大物の魔物を倒したり、幾度の戦いで活躍することがあったと聞かされていました。その中でも、私を楽しませるために色んな話をしてくれました。
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でも、どこかで私に何か大事な内容を隠しているのではないかと思ってしうのはなぜでしょう。両親は私を良くしてくださいましたし、感謝もしています。
ただ、優しいだけでは私は良くないと思うの。
こんなにも旅ができたというのに、どこか勿体無いって思うことがあるのです。なぜこんなにも楽しそうに話すのに、王都から離れて暮らしている理由とか。無論、一つの原因は私を思ってのことだと分かる。
でも、私はこの世界について知りたい。王族としての世界、冒険者としての世界、自分らしさを貫く世界。
それはだめなことなのでしょうか?
私が人として自惚れているから出る言葉なのでしょうか?
まあ、それは一理あるかと思います。私は両親のように勇ましく、楽しい人生を送ってみたいのに、どうしても心の中で違和感を感じてしまう。
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私には親のような名誉なんてない。私が王都にいた時も自分らしさなんて感じなかった。気づいたら貴族や王族の集まりにただ立って、存在感があるだけで、彼らは私を見て喜ぶ。別にいる理由も対してない。
会話もおもてなししかない。結局は私はただ様子をうかがってばかりで何も良いことができていない。自分はそこにいるだけで心からそれを求めてなんてない。私は他人のように目立つお方ともとても思えないのに、自分の周りには執事やメイドがいる。
なぜかおかしいって思う。
なぜこんなにも人がいるのというのに、私たちを思ってくれるメイド様や執事様がこんなにもいるのだろう。果たしてこの方々は私たちといて嬉しく思うのでしょうか?それは違うではっと思うのです。
私は疑問を持つことしかできない。別に何も変わらないのに。
私はとてもだめな人間かもしれない。他の王族の方々はやはり何かを私に無い物を持っているのでしょう。
勉学に関してはできるだけ心掛けることはできましたが、それは対して特別ではないと感じるのです。
私は学ぶことに関しては興味は持っていますし、新たな発見を見つけるのは好きなのです。でもそれだけなのです。
勉学でさえも何か他のことについても学ぶ必要があると感じてしまう。でも、それは自分にはわからないし、なにを追うべきかもわからない。私は何を求めればいい?
こんな時だというのに、もっとしっかりしないといけないのに、全然上手くいかない。私は王族としていた方がいいのでしょうか?
そうでなくても、私は…
そして気が付いたら、ある場所に到着した。
---
私の気が朦朧としていたうちに、私はウェンデルという方と出会うことが出来ました。紋章の人たちは彼のこと敬うように感じました。確かに私もどこか頼れるお方のようには見えました。でも、なぜこんな場所にいるのでしょうかっと思っていました?
「お嬢さん、大丈夫かい?辛いと思うが、必ず親を見つけるからね」
ウェンデル様の声が聞こえてきた。私に向かって語り掛けてくださっている。でも私はろくに会話できない。色んな事が混乱していて整理が追いつかない…
「…」
私は頷いた。声を出す気力もありません。私は話したいのに、色々頭の中が…
ウェンデル様がせっかく話しているのに私は返事ができない。
「おー!この本持っているんだ!この魔法のお話、僕は好きなんだ。もしかして、君も?」
声が出せない。でもウェンデル様は私に語り掛けている。そして、彼は私の本について話を振ってくれた。それでも声が出せない。
どうして私はこうなのだろう…
私は恥ずかしいことに人見知りです。でもあいさつ程度はしっかりとできるのですが、なかなか話すことには上手くいきません。私は色々と話をするようには心掛けてはいますが、達者ではありません。なんて恥ずかしいのでしょう。ただ私はどうするべきかも思いつかない。私はまた、人に頼ってしまうだけになるのですね…
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私も自己紹介が何とか済み、そして、ウェンデル様は私を案内してくれました。相変わらず積極的に私を励ましているようです。でも、話はちゃんと聞くことはできない。
ウェンデル様が私の親とも知り合いなのは初めて聞く。ウェンデル様曰く、父様の若かりし頃にお世話になったとか。そして、父様はどれだけ大変な人だったのかとか話してくれました。やはりこの人からも父様の性格が伺えます。私が観る父様はすっかり成長しているようで、ウェンデル様が驚くぐらいでした。
そして目に映る背景は廃墟が広がっていました。建物は崩壊寸前。村という言葉はとても似あわない。そして、この場所だけがこの森の中に存在しているような、そんな感覚を感じてしまうのです。私は愕然とすることしかできません。こんなところに人が住んでいることに言葉も出せません。私はこれを見て、何を思えばいいのでしょう?
まるで世界が違うという表現に収まらないほどでした。私は驚くことでしか意味を見いだせない。酷い。私はそう思いました。なぜこんな場所ができてしまうことにより疑念を持ちました。やはり、私は自惚れている。こんな場所があるのに、私の抱える問題に価値なんてあるのでしょうか?
そんなこと思いながら、私はウェンデル様が出している店に入ることになりました。
中に入ると椅子や机などがそろっています。そして、もっと奥に入れば植物や野菜があります。私にしてみれば、農場で野菜を見るので驚きました。こんな方法で野菜を育てることができるというのが今まで知りませんでした。ウェンデル様によれば、ここは食堂になったりする場所だそうです。私は裏の方で待つことになりました。
「じゃあ、好きにくつろいでくれ、俺は何かを作ってあげるよ」
私は遠慮しようとしたのですが、ウェンデル様は私にどうしても食べてほしい、っと料理を作ってくれました。美味しそうな匂いがしてきます。
しばらくして、料理が出来上がりました。
ウェンデル様はその料理を私に差し出しました。
「では召し上がれ」
ウェンデル様が出してくれた料理は野菜と肉がのせてある一品とスープらしきものを出してくれました。
私は、料理を食べることにしました。
「どう?」
料理を口にして、味わいました。私は料理を食べて思わず色んな刺激を感じまして
「美味しい」
っとウェンデル様に言いました。
私はこんなにもおいしい料理が食べられることの幸せを知ることができました。
そう、私は恵まれているとこのひと時を得て思う。
そして、両親と過ごした思い出が蘇り、また現状のことについて考える。
心からは喜ぶことはできません。こんなにもウェンデル様が作ってくれた料理がおいしいのに…
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少しの時間が立ち、ウェンデル様はカウンターの方でまっていました。
そしたらある方が舞い込んできました。姿ははっきりとは見えませんが、覗くように見ようとしました。
それは赤髪の男の方でした。失礼ながら、服は如何にも怪しげな感じでした。顔も善人のような表情ということもなさそう。ほぼ悪人の顔のように見えました。ただ、恐ろしいというのは違うのかな?ここからでははっきりとは見えない。私はこのようなお方は見るのは初めてです。
悪者といえば、私の両親はこのような者を退治してたのでしょう。
旅の途中で族が潜む敷地に入ることがあり、そして何度も卑劣な行為を仕掛けたと良く聞いたことがある。私は彼らのような人がそんなことをする理由が見当たらない。人を嫌がらせる為だけに罪を犯しているのではなくて?
この人がそうとは決めつけるのはかわいそうな気がする。
そして、彼はウェンデル様と何らかの関係のようにも見えました。
そして、ウェンデル様が私を呼びました。
「出ておいで」
少しだけびっくりした。こんな時に呼ばれるのは。
しかも緊張してしまう。でも、ウェンデル様がなぜか私に用があるようなので、表の方に出ていきました。
とは言っても、私は元気になれるような状態ではない、まだ立ち直れない自分がいる。なんて変なのでしょう、色々あって落ち込んでいても、最低限のことはなんなりとできてしまうことに。
ウェンデル様が私の紹介をしてくれました。
「自己紹介しよう、彼女の名はエニーテ・カドレータだ。なぜこの子がここにいるのかというと両親が王国の奴らにおそらく捕まったからだ」
そして彼は喋った。
「また王国の奴らがやらかしたのか、大変だな」
その後もウェンデル様はどうやら事情を話しているようですが、でもこの人の表情を見ると、冷めている。
とても冷めているようにしか見えないのはなぜだろう。やはり悪人なのでは?
なんで、そういう風に口にするのでしょうか、私たちのこと言ってなくても、全員が悪いようにしか聞こえません。どうしたらそんな態度になるのでしょうか。
話が進むと、この性格が悪そうな赤髪の男が王国のことを何かしらの情報があるようです。
私はそこまで話を聞く気にはなりませんが、理解していることが多いようです。
そしたらウェンデル様がこう言いました。
「単刀直入に言う。彼女を、いやエニーテを助けてはくれないか?」
この人が私を?こんな悪趣味な男と一緒にいないといけないの?
父様の知り合いとは言え、私はこんな人についてほしくはない。
かといって、別に私を守ってくれる人は他にいないからこの人なのでしょうね。
ってまた私は人に頼ってばかり。自分の力では何もできない。
こんなだめな私に付くのは当たり前なのかもしれません。私がカドレータ家としての務めがの尽きが来たんですかね。
そして赤髪の男は言った。
「いや、さすがに無理ありますよ…旦那、それに俺は盗賊でっせ、人を助けたところでなにをしろっていんです?」
やはり、悪人ではないですか…
私はこの人にさらわれるのかな。やっぱりこの人は怖い。私は人の気持ちを理解しようとしない人と共に行動するなんて。なにをされるかわからない。だって盗賊ですよ、そんな人を襲い、自分のことを正当化できる人間ですよ?
なぜウェンデル様はこのような人を信頼するのでしょうか。悪事を働く者に協力しているから王国から離れているのでしょうか。別にこんなことを言っても、私が人に売られる可能性は消えたわけではない。
別にそれでもいい。私が情けないからこうなる。
もう両親に合えなくなるかもしれない。
そしたらその盗賊は堂々と自己紹介をしてきました。
「ドーレン・アイセルド様だ。よろしくなエニーテのお嬢様」
---
こうして私は森の中でドーレンという盗賊と洞窟に行くために出掛けることになりました。私は一体何をしているのだろう。
私はただ、目的地に行くために歩く。でも、そんな気も起きない。私は矛盾している。両親が私のために色々尽くしてくれたっていうのに、私は何も考えることができない。両親とまた会いたい、って思うのに、前に進むことができない。私は両親と話したいことがたくさんあるのに、このようなことになってしまった。私は愚かです。
一方、このドーレンという方は私になりふり構わず話しかけてくる。どうせ、お金目的で仲良くしたいのでしょう。別に、とればいいよ。私は無防備だし、力はないし、人を助けるような器すらもないのだから。盗賊の方は、人がせっかく持っている物を奪って楽しむような人たちなのでしょう。私はそのようなものに協力はしたくありません。しかも、匂いがきつそうだし…
「俺が怖いというのはわかるが、警戒しないでくれると助かる。ここら辺に何が起きるかわからねぇからな」
と彼は言う。一様形ながら、少しは気遣いしてくれている。でも、それは自分のためにしか思っていない。
そしたら彼はまた語りかける。
「そうだ、いま持ち歩いている本についてなにか教えてくれよ。面白そうな見た目だよな」
また私の本についてだ。この本は魔法の呪文があったり、おとぎ話が乗っている。私は何度見てもこの本に惹かれてしまう。
そして思わず
「月についてのお話…かな…」
「お、そうか…」
ドーレンは頭を抱えている様子だった。まあ、私の説明が足りないのは分かっている。でも説明する気力が無い。
彼は私を見て不満を抑えながら、歩いていた。それは当然こうなる。私はきちんと向き合っていない上に、こういうようなことをしているのだから。そして、まだ信用できない自分がいる。
---
そんなことを考えながら洞窟に行きました。
洞窟というのは話でしか聞いたことがありませんが、どうやらアーティファクトらしきものが見つけられるそうなのです。なぜそんなものが洞窟の中に潜めているのかは私も知りません。でもこういうことは言えます、謎めいた道をわざわざ作るのが好きなのでしょう。
洞窟の中はどこかいい感じがしてきます。今まで感じたことのない感覚、見たことのない世界が広がっている。こんなものがたくさんあると知っているだけでもっとこういう体験がしたくなってくる。洞窟によっては危険があるというけれど、私はここを探検した人の気持ちになってみた。とてもわくわくしたのだと心から思います。
「お嬢さん、下がっていろ」
魔物が現れた。でもドーレンは私を守ってくれている。複雑な気持ちが思い寄せる。盗賊に守られている私が。でも、安心できないっと言ったらそれは嘘になる。人と一緒に行動することは心の支えになる。
ドーレンは相変わらず私に少しの気遣いはしているようです。私を守ってくれたことには感謝していますが、やはり人としての生き方に疑問を感じる。なぜこういう時に人と寄り添うことができるのに、人に優しくできないのってどうなの。
そういう心遣いがないのは共感ができない。人の気持ちを素通りして、自分を確立しよとする態度がわからない。周りが見えてないのかな、この人は。
もうしばらく時間が立ち、進めば洞窟の底にたどり着くことはできた。その光景は私にとっては儚いものたった。地上とは程遠いのに、目当ての指輪に光が当たっている。発掘者たちにとってみれば、この指輪はお宝以上に思っているのではないでしょうか。
「エニーテのお嬢さん、これをはめてください」
その呼び方は止めてほしいって内々思っていたけど、私は従うようにした。これがあれば、私たちが王国に行けるというのは聞こえた気がする。
でも私は王国に戻って、両親に会える資格があるのでしょうか?
私はそもそも二人を見つけられるのでしょうか?
見つけて私はどうしたいのでしょう。もちろん、今までの生活を取り戻したいって思っているけど、そうなったら私は何一つ変わらない。
こんなような私が力あまるだけだということくらい薄々分かってはいる。
だから余計悲しくなる。私の無力さが。
---
私たちは洞窟から出ていった。
気が付けば、そこには町の面影が残っている跡地にとどまっていた。一回目には気付かなかったけれど、今私は想像した。町に住んでいた人はどんな暮らしをしていたのだろうか。ちゃんと幸せだったのか、それとも苦しみながら生きていたのか。私はこの人たちが最後の最後まで幸せに暮らしていたのなら、誰がその暮らしを壊したのだろう。そして、それは必然的なものだったのでしょうか。
どんな形であれ、悲しい。町も人がいなければ成り立たない。そして、その町は見渡せばその暮らしの跡しか残ってない。
でもなんでかな、私はこんな風景でも、この町の良さが見える。建物の特徴、この人たちの文化、価値観などが伝わってくる。自然と一体化しているような生暖かい感情も実る。
その時、ドーレンは驚きを見せた。
「ん?なんだったんだ今の?今見ました?」
ドーレンが何のことを言っているのかはさっばりだった。
洞窟で警戒してたらそうなるのかもしれない。でも、本気で何かを見たと言っているそしてこの町にいたら狂いだすのは不自然ではない。
私はこのまま帰りたい、なので虚像を見たというのは今の私にはとても負担が大木野です。
「今の見えたでしょう!」
ドーレンはまだ警戒しているようです。でも私は本当に何のことか分かっていない。
表情も洞窟にいた時よりも断然に焦っているようにみえました。ひょっとしたら本当に何かいるのでは…
そう思うと怖い…来ないでほしい。
私は風が過ぎ去るのを肌で感じた。やはりドーレンは本当に何かを見たのだと思った。私は話でしか聞いたことのないおとぎ話があった。それはあの恐ろしい怪物の話だ。確かに、話には合う。風が吹く音も聞こえる。そしてそれは大きく、人をいとも簡単に倒すあの怪物。
なんでここにいるの?
まさか…そんなはずはない。
だって…
もう来ないで…
そしてドーレン後ろには大きな影…
大きな羽にあの頭…
「…!」
私は恐れた。こんな時にあの伝説の怪物がいるなんて。ドーレンが言ってた通りそいつはいた…
あのドラゴンがいる!ドーレンの後ろに
「いや、そういうのはいいんで」
「違う!」
あなただって気づいてた。ドラゴンが後ろにいる…
だから気づいて…あなたの後ろを見て!
でも怖くて声が出せない…
せめて方向だけでも…
ドーレンは私が指さした所で振り返り、状況を目の当たりにした。
人間が恐れる怪物、ドラゴンがいることを…
「これが夢なら覚めてくれ…」
---
「エニーテのお嬢さん、俺が引き付けるうちに逃げろ!」
本当にドラゴンがここにいる、どうして?
私は何をすればいいの?私は何とかしなくては…
でも私だけ逃げるなんて、それはあまりにも卑怯にしか思えない!
そうは言っても体が動いてくれない。どうしてなの!
私はドーレンが命がけでおとりになってドラゴンから逃げている。わざわざ私の近くに来ないように。なのに、私は動けない。ドーレンはこのままだと危ないのに、私は人を助けることができないの?
今私ができることは何?
投げれるものとかないの、ドラゴンにそんなものは通じるの?
そうだ、この魔法の本で何かわかるかもしれない。でも、私は魔法学ぼうとしたけど、なかなか上手く行かなかった。そうしたら、ドラゴンじゃなくてどーレンにこの魔法が当たったらどうしよう?それに読んで間に合わなかったらどうしよう…
もっと速く考えないと、私の両親ならどうしてた?思いつかない…
でも考える時間もない。
私が混乱しているうちに、煙のようなものがドラゴンの周りに広がっていた。
ドーレンがやったの?でもそんなものでドラゴンから逃れるの?
彼も何とかしているのに、なんで私は何もできないの?
このままだと二人して倒される。
そんなの嫌だ…
煙が晴れた時、そこに見えたのはドーレンがドラゴンの近くにいることだった。
ドーレンは必死に動こうとしても、体が限界のように見えた。
私は酷く恐れた。このままだとドーレンが…
私はドーレンが倒れる瞬間を眺めていた。私にはその時が遅く感じた。ゆっくりとドラゴンにもてあそばれる姿になる時を。そして、ドーレンが最後の景色を見るように私の方を見ていた。とても優しそうな目をしていた。人に頼ろうとする目に見えた。こんな一面があるなんて思わなかった。
私は初めて彼のことを何か知った気がする。
またこんなことを繰り返すの?また人が危険に陥っている時に何もできないの?
そんなの両親が私を逃がしてくれた時と全く同じじゃない!何がどうなっているのかを考えることもできないで、ただ時間が過ぎ去ることを再び見ることになるの?
だから…
だめだよ…
いなくならないで…
そんな目で私を見ないで…
私を置いてかないで…
最後に残された声を出さないで…
もう、人がいなくなるのは!
「嫌!」
私は心の中から叫んだ。自分が失いそうになって叫んだ。私の気持ちを代弁するかのように力が溢れだした。こんな感覚は初めて、これが私が憧れた魔法。今まででは形のようなものにしかならなかったのに、こんなにも具現化したの初めて。
私の体の見回すように、力が流れた。右から左へと魔法が流れて、私の右手に集まっていく。月の光が私に寄ってくる。私のペンダントも揺れ動く、輝きのようなもの見た気がする。まるで、月が私の葛藤が届いたように感じながら魔法をドラゴンに向けた。
それは星屑が私に精一杯集まったような光景だった。私のみっともなさと役に立ちたいという欠片を表現してくれる、私にはそう見えた。でも、このままでは終わらせない!ドーレンはやっと人間であること私に示してくれた。
だから私も…その証を残さなければ!
私は自分が持っている全てをドラゴンに放った。私の感情の欠片がドラゴンに届いていくように感じた。ドラゴンは今まで以上に叫んだ、苦痛とともに。このドラゴンが予想すらしなかったのでしょう。ドラゴンは耐え忍ぶことをしようと粘っていたら、体が持たないのが伺いえた。立っているのがやっとのよう。そして、ドラゴンは諦めがついたのか、痛みながら空中に去っていきました。
そうか、気持ちが届くのってこんな気持ちになるんだ。自分が何もやろうとしなかっただけで、ちゃんと私の中の感情が形になった。これが足りなかったんだ。
自分が持っているもやっとしたもの全部はっきりしたとは思えないけど、私がしっかりしないといけないのははっきりと分かった。
必ず父様と母様を探さないといけない。
---
私はドーレンの所に近づいた、そして彼はけがを負いながら立ち上がる。
「なんで俺を助けた?俺をほっといて逃げれば良かっただろ!」
ドーレンは私に怒っているようだった。でも意外と私は気にはしなかった。
でも、言われてみればなんでなのだろう…
人を助けたいのは本心ではあるし、でもまさか私が信頼できないとまで言った盗賊を救うことになるなんて思わなかった。
「自分でも分からないの、でもあなたの顔を見た瞬間に自分を見失いそうになる…そんな気がしたの」
「意味がわかんねぇよ…」
ドーレンは背中を見せながら困惑していた。どうして私のような人に助けられたのかが納得していない様子だった。でもよく考えれば、私ってみっともないって思った。はっきりとした理由もないまま助けたのですから。
でも私はやっと自分になれた気がした。
そして、また私に向けて
「お前はバカなのか…」
っと言葉を足した。その言葉は私に響きました。そんな言い方しなくても自分でも分かっているのに…でも、悔いはない。ドーレンがまだこうして私の前に立っているのがうれしかった。いくら盗賊とは言っても。
「まあいいや、だがそんな力があるならなぜ使わなかったんだ?」
「それも体が勝手にというか…」
本当になんで今になってこの力を使えたのだろう。しかも、初めて使う魔法がドラゴンっていう現実にも思えないような展開だというのもまた不思議。
「まあ、それはそうだよな。びっくりはしたが、助かったぜ…」
もちろん、ドーレンが生きているのは良いことなのですが、これから彼は、人を思いやる心持てるのでしょうか?ただ、そんなことがよぎるのです。
ドーレンにはもっと人間味のある行動して欲しい。彼にはそんな一面があるのですから。更に奥深く彼の中身を見ることが出来れば、私は彼に何が起こったのか知れるかもしれない、救えるかもしれない。
そして、私は盗賊としてのドーレンではなく、本当のドーレン・アイセルドが見たいのです。
彼もまた決心している様子で私に語り掛けた。
「エニーテ、お前に言うことがある。俺は必ずお前の親を探してやる。必ずな。
だから、俺にも約束しろ。
俺が自由を手に入れるまで一緒に旅に付き合ってもらおう!」
私は彼が言った台詞に違和感を持っていたのはそうなのですが、でも、一瞬ドーレンの眼が黄色に光ったようにみえたのです。
この反応は人間ではない?眼だけじゃない、魔力の感じも…
昔両親に聞かされたことがあります。確か、王国でも他種族が存在すると。でも私は実際に観たことはありません。この目の光はもしかしてドワーフ族?
でも特徴的に混ざっているものがある。
いや、まさかね。私が考え過ぎなだけかもしれませんね。
ドーレンは普通の人間なのでしょう。ただ性格が悪いだけ、っていうのもほっとはしないけど。
そんな勘違いは置いといて、もう一つ決めたことがある。
それはちゃんと自分の意志で旅をすること。
何があってもこの旅を恐れないこと。
そして、ドーレンとの約束を果たす。
それに合わせて、私はドーレンを見守ってみせる。
「うん、約束だからね、ドーレン」
私とドーレンは約束をし、ゆっくりと歩きだす。
私は必ず両親を探す。何としても。
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