第3話 無愛想になった少女
「自分の目で…」
少女はそう呟く。
これはある少女のお話。迷いに迷っている少女のお話。
少女はある葛藤を覚えていた。その理由は誰にも言ってくれない、友達や家族にも、自分の隣人にも言ったことはない。別に酷い家族に育てられたわけでもない。むしろ、人が羨ましいと思うほどの家庭にいた。
少女が住んでいた家は、裕福な人でないと住めない。ガラスも独特な創りで、でこぼこの層に、見た目は丸く歪んでいる。派手な家ではないが、創りはしっかりしている。外を出れば、農地が広がっている。
少女は魔法に憧れを感じていた。その理由は親が持ち合わせている魔法の本のおかげである。少女は暇さえあれば魔法の書とともに過ごしたのだ。彼女は外には出るが、得意ではない。そして魔法の本を見ていくうちに惹かれていった。少女はあることを決めていた。魔法の本のような魔術師になって、冒険をする。必ず旅に出て、魔法をより良いために使う。そして人のためにその魔法を使って、救うのだと。
親は反対はしなかった。だが、二人は少女に確認した。
「冒険者として生きるのは覚悟が必要だよと」
少女はその意味についてよく分からなかったが、確かな自信だけはあった。少しだけ葛藤についても感じてはいたが。
母親はとても倫理的な人だった。それは、常識という見解には縛られず、その先にある正しさを超える何かを考えるような人だった。その倫理的な考え故に、相談されることも多かった。
そして父親は、自分の身の回りの人を考えるような人だった。毎日、忙しく家族のために励んていた。いつも自分のお嫁さんと娘を気に掛けるような人だった。どれだけ忙しくとも、時間があれば、家族と一緒に楽しく暮らすことを心掛けていた。
そんな少女にとって、高く見上げるほどにかけがえのない両親なのだ。いつも背中を見ても頼れるのだ。それは少女の影響にあったのは間違いない。
ある日、幼い頃の少女は見ていた。それはある本だった。その本は月について書いている。というより、「月の魔法」のことが記されている。でも、絵本みたいなものでもあった。だから彼女はそれを見て以来、興味のあまり手放さなくなった。
その物語の内容は、魔術師が月の光から力を貰うというおとぎ話だ。これは世界の秩序を保つために戦った時のことである。この魔術師は魔界の魔物を閉じ込めるため、自分の魔力を全部使い果たしてこの世界を守った。
しかし、その驚異なる魔力を使う反動で彼は魔法を二度と使えないようになっていた。魔術師はその後、自分の無力さを日々思い悩んでこれからどうすればいいのか、自分が魔力を使いこなせない中で生きる意味を探していた。
だがある日、月の光が彼を照らし、魔力のようなものを感じた。でもその力はそれ以上のものだとその魔術師は思った。彼にしてみれば、それはその魔術師が求めていた全てだったのだ。その力を得てもなお、魔術師はその力を自分のために使おうとはしなかった。
そして彼は考えた。
もし他の魔術師がこの力があったら、善のために使うのかと。そこで、彼はある試みを取ったのである。未来永劫の魔術師ために、彼はその月のエネルギーをアーティファクトにすることに決め、それを手する覚悟が在る者に託したのだ。
彼女はふと思った。この魔術師はなぜこうしたんだろうかと。自分が求めたものをこんなに犠牲にしてまでこの月のエネルギーを他人に託す意味はないんじゃないかと。無意味な争いが起きるのではないのかと。あくまで、これはおとぎ話だと言ってもこの話は彼女にはどうしても引っかかっていた。だからそのことを母親に尋ねた。
そして母親はこう答えた。
「____、それは自分の目で確かめる時がきっと来るわよ」
という言葉だけを残した。
その意味をいつか分かることを信じて…
---
それから時が立ち、彼女たちは平和に暮らすつもりがこの出来事によってすべてが突然と変わってしまった。それは、今まで接してきた人達にまで避けられて、そして味方をしてくれる誰もいなくなった。その家族は身の回りの人たちにまで疎遠にされてしまった。
彼らは思った。なぜこうなったんだ?っと。別に理由を思い浮かべることもなかった。だが、次の出来事で両親には何らかの当てがあった。
そのしばらくした後に窓を覗いたら、王国の兵がズラリと並んでいた。
彼らは王の命によって捕らわれることになるのだった。その理由付けは反逆の罪にされていた。
兵は家のドアに来て、何度も叩いた。
何事かと思うほどの出来事であった。その両親は驚いた。まさか、自分たちの存在が裏目に出ることを。そして許せないという気持ちを抑えながら、冷静に行動を取れるようにと考えた。彼らの性格からしたら、ドアを開けるのが優しさであるが、さすがに身の回りで起きていることに不自然に思っていたのだ。
彼女の父親と母親はそんなことをしたつもりもない。でも、その父親と母親がなにをすべきかは分かっていた。
自分の愛する娘を遠くに逃がしてもらうこと。
だから、両親は自分が持っている武器を手に取って、娘にこう言った。
「なるべく遠くへ逃げなさい。そして、この紋章を付けている人が居たら、その人に私たちに起きたことを伝えて」
「娘よ、必ずその人達だけを信じるんだ。決して、他の人は信じるな、約束だよ?」
もちろん彼女は嫌がったが、悲しく頷いた。まだここに居たいと願っていたが、時間がなかった。
兵は、もうすぐ強硬手段に出る所だったのだ。
両親は少女に隠し扉があると教えてくれた。その扉は戦争時や魔物に襲われる時になどあるのだ。だが皮肉にも王国に対してこの扉を使うということになるとは思わなかった。
「いいか、何があっても、何を聞こえてきても、振り返ってはだめだよ。前だけを向いて走るんだ」
両親は自分の娘がこんな形で旅立つことになるのかと感情を露わにしつつも、少女をぎゅっと抱きしめた。一瞬一瞬を大事に思いながら感触を忘れないようにして、少女を押した。
「迷ったら、夜空を見てね。愛している、___」
少女は隠し扉に入った瞬間に微かに兵が家に突入する音を聞こえた。そして、少女は、
泣きそうになっても、
足を挫けそうになっても、
走れなそうになっていても、
走ることだけを考えた。
彼女にとってそれは人生で一番長い走りだった。そして、人生でたった一度やるしかなかった走りだ。
少女は走った。見事に走り抜けたのだ。道路に向かっている途中の明かりがやっと見えたところだ。
だがまだ終わりではない。
親との約束通り、人を探さないといけない。王国の兵に見つからないように避け続けようとした。
とはいっても、王国の兵は多い。そして彼女に追いつくように探りを深くしていた。少女はなぜこれほどまで追い込まれないといけないのかが分からないかった。反逆という言葉に問いだけが残る。私の親が一体何をしでかしたのだろうかと思いながらも、考えている暇はなかった。
少女がたどり着いた場所は人混みの中だ。普段ならこの道を陽気に歩いていたが、今となっては、逃走中の道路でしかない。出来るだけ怪しい人にぶつからないようにと道を焦りながら進んだ。
そして、走っている途中に人にぶつかってしまった。彼女は服装を見ていた。兵が来ているような服装だったのだ。そして彼女は恐怖に怯えていたが。上を見たら、親が話してくれた紋章の目印が目に留まった。この人こそ少女の探していた人だった。
そして彼女はこう言った。
「お願いです。私たちを助けてください!」
その紋章がある人は、状況は察して少女が見つからないような場所に隠してくれた。
「状況はとりあえず分かりました」
その人は自分が頼れる仲間に連絡を取れるようにしたが、とてもできるような状況ではないらしい。なので、彼は直接少女を遠くに出せるように移動手段を手配した。
王国の入り口まで案内し、紋章の人の仲間に助けを求めた。
「彼女を安全な所へ、これは重要な事態だ!」
それを聞いた仲間は、少女を大事に受け取り、王国の外まで連れ出すことに成功した。
しかし、それはめでたいことではない。親がどのようになったのかもそうだが、彼女が連れていかれたところはとても良いところではなかったのだ。
「どうか目を開けないで下さい。知らない方がいい…」
彼女は言う通りにして、ひたすら嫌な音ばかりを聞かされたという。
叫ぶ音、
刺す音、
破壊される音、
物が頻繁に動く音。
だが、それを越せば一瞬だ。そんなことは自分には関係ないと言い聞かせていた。だが、家から離れば離れるほどに、どこか自分の欠片の一部が失いそうになっていた。
少女はただ、家族と幸せに暮らしたかった。怯えるような体験なんてしたくはなかった。そして、自分の知らない現実を目の当たりにしたくなかった。そう思っていたのだ。そして少しずつ無愛想になった。
そして、長い時間が過ぎ。スモールワールドまでにたどり着いた。
森の中で人に合う約束があって、その男が現れる。
紋章の付いた人達が着いた時にはその方に向かって。あいさつをした。
その人は左手に杖のようなものを持ち、背中には荷物が多くある。服装は旅に使いやすそうな服装だ。背は高い人だった、顔は青年寄りの見た目だった。そして、茶髪の髪を隠したフードを着ている。
「ウェンデル様、お久しぶりです」
そう、彼女があったのはウェンデルだった。そして、少女にとっては信じることのできる人物だった。
「そう固くなるな。俺は対して様と呼ばれるような者じゃないよ」
「いえ、とんでもございません。彼女を連れてきました」
「有無、ご苦労様さん。近いうちにまた会おう」
その他の仲間は消えた。
「お嬢さん、大丈夫かい?辛いと思うが、必ず親を見つけるからね」
彼女は軽く頷く。
「君は僕のことを知らないだろうけど、味方だ。僕は君の親についてはよく知っている。素晴らしい人達だよ」
少女はそれを聞いて驚きはしなかった。むしろ、自分の親がどんなひとだったのかが実感できたのだ。ウェンデルは少女が自分の体の一部のようにしがみつく本について気が付いた。少女もそれを持っていることを今さらきが付いたのだ。
「おー!この本持っているんだ!この魔法のお話、僕は好きなんだ。もしかして、君も?」
彼女はまた軽く頷く。
「それはさておき…お嬢さん、お名前を聞いてもいいかな?」
「私の名は…エニーテ」
それが少女の名だ。
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