第2話 俺の目に何が映る?盗賊、人を救う。
少し遠くから何か嫌な予感がする。俺の目の視界がカギのロックみたいに閉じるように感じてしまう。っと同時に声が頭の中でかすかに響く。
「おい、待て!絶対に逃がすか!」
「君たち、一体なんなの?盗賊?私をどうするつもり!」
「大人しくしやがれ、しないなら強行手段だ!あの女を生け捕りにしろ!」
「女の子をさらおうとするなんて情けないと思わないの?」
「知らないね、金が稼げれば俺たちには関係のないこった!」
どうやら、女が賊みたいなやつらから逃げているらしいな?それに、足音がくしゃくしゃと聞こえてきて頭の中で音が響いていく。これは俺が巻き込まれる可能性はかなり高くなりやがった。どうしたものか。今日は本当にひどい目にあったのに、また巻き込まれるのはごめんだ!俺は戦いをし、口論して勝ち、真面目に疲れ果ている。でもなぜか今日だけはそんな甘えが許さないようだ。俺には二つの選択肢がある。
知らんぷりして身を隠す。
助けて恩を売る。
損得で考えて普通は助けるリスクの方が多いため、助けるのは無意味って思うだろう。特に賊から人質を救うっていうのはあまりにも無謀である。それは勇者と呼ばれたいやつだけ助けやがれ。と言いたいところだが、この状況では他人に意識が向いている。それに、よく考えても助ける得がやはりそれを上回ってしまうのだ。なぜなら、
その1、人質を助けたらおもてなしをせざるを得ない、どんなクズでもな。
その2、賊を倒したら、奴らが持っているものを盗める。
だったら助けた方が得ではあるなって話になるが…。困った。正直やりたくはないな。
うーん。
面倒だが、よくよく考えて俺は恩を売ることにした。なぜなら情報が欲しいからだ。訳ありの女から情報を得て、身の回りのことについてより良く知れる機会だ。
教会の人たちを襲う機会があっても、それはある程度稀なケースによってなり立つ。人数の集まりが少なかったり、傭兵などがいない時を狙う時にしないといけない。それに大した情報をくれたりはしないしな。
というわけで、作戦を練ることにした。
今回はスリングショットを使うことに決めた。そう、石を引っかけてものを飛ばすあれだ。あんなもん、威力はないし、傭兵は見向きもしないって思うだろ?それが違うんだな。このスリングショット、意外と相手の戦力をそぎ落とすことが可能だ。
使い方によっては敵の利き手に向かって剣を打ち落とすことが出来れば隙を作れる。それだけじゃねぇぜ、煙玉などを敵に向かって撃てば大人数の敵を一気に倒すことができる。
逸話でしか聞いたことはねぇが、実は魔術師、魔物、剣豪に傷を付けさせるぐらいな代物らしいぜ。火竜をじわじわと倒せた奴もいたとか。本当だったら夢はあるな。あんな特別級に使いこなせるやつが居たら変態だけど。
残念ながら全部一度もみたことない。だが今日は初めてしっかりした魔法を見たことはあるが、不本意ながら…
と思い出した後に、鋭く飛んだが矢、とどでかいファイヤーボールがこっちに飛びやがった!ふざけんな、俺の勘が無ければ、当たってただろうが!
そう来るなら仕方ない、これにて俺の個人的な恨みも出来た。
俺は攻撃されている方向に向けて安全なところから様子を見た。走っている音が迫り寄ってくる。俺は少しだけ逃げている女と賊どもが見えてきたが、まだはっきりとは見えない距離。どうしたら追われている奴を避けながらスリングショットを使うのかが問題だ。目くらまししてみたいところだか、使うには遠すぎる。
今確認できる人数だと5人か、6人ってとこか。俺の所に辿り着くまでもう少しかかるか。なら、良い襲撃の位置を見つけて、スリングショットを方の後ろまでに引っ張る勢いで構える。そして丁度いい機会が来るまで待つとしよう。
俺は視界を開いて待った。今ならもっとはっきり見えるな、こいつらはもしかすると、いやそれはあとだ。集中するんだ。
奴らが来るのはもう少しみたいだ。
「もうちょっと前に来やがれ…」
3…2…1…!
「今だ!」
とつぶやくた時、俺はスリングショットで煙玉を飛ばした。奴らは咳を吹き込みながらこういった。
「何なんだこれは!新手がいるなんて聞いてないぞ?」
「え、今度は何?」
女を捕まえようとした奴らはすっかり煙の中で迷うことになった。そして当然ながらその女も警戒するべきかそれとも逃げるべきかを困惑している。
「おい、おめぇさん俺も加勢するぜ。戦えるよな!」
「あなたは、ってことは味方なのね、なら…」
「おい、もう一人の奴は誰だ!」
女の方はとっさに理解して、早速攻撃の準備していた。
どうやら彼女は魔法使い、魔術師らしい。
その後、俺は奴らが目くらましを食らっているうちにの後ろを回って、仕掛けに出た。一人を仲間から離し、眠って貰った。続けて二人目、三人目とテンポ良く当てて。煙がはっきり消えた瞬間にあの女は魔法の詠唱の途中だった。この魔法もなかなか美しく見えたのだ。一瞬しか見えなかったが集中しているように見えた。
彼女は水の魔法を杖に集めながら放った。
「汝、泉から授かりし魂の源よ、
蒼溟なる流れによって清まれ、潮頭の怒涛の渦をまき散らしたまえ。ウォーターブロー」
賊たちは見事に吹き飛んだのだった。やっぱ魔法ってすげぇ。てか、魔法って詠唱もあるんだな。
「私の助けて頂き、ありがとうございます!あの人達にさらわれたらどうなっていたか…」
助けたこのお嬢さんは見た目は若く、身長は少しだけ低い。服は魔術師っぽいたしなみ、ローブの色は青と銅の組み合わせ、思ったよりも質素ではあるが、上品とも言えなくはない。絶妙なバランスだ。
紫色の髪をしている、特殊だな。そして肩に付く長さで編んでいる髪の毛を後ろに降ろしてリボンで留めで巻いている。前髪はおしゃれに横で渦巻いている印象だ。
持ち物はあまりにも冒険者が備えそうな鞄と魔法の杖だ。俺の知る限りはな。
何よりも驚きなのは見た目だ。
失礼極まりないが、盗賊の女はだいだい顔が良くても、顔が不気味なぐらいにイッているか、かなりのバカか、だからだ。
これは魔法マジックのせいかどうかは知らないが、こんな人が旅をしているとなると気が狂うやつが出てきてもおかしくはねぇ。
髪に似合わず凛々しい目・慈悲深さ・でもどこか切ない。
お嫁さん候補としては満たされるだろう。俺には無縁だと思うが。
「まあいいってことよ、こっちも下手したら危なかったしな」
「え?」
「いや、こっちの話だ」
「であなたは一体何者、ここで何をしているのです?」
「自然とともに暮らしている、みたいな感じですよ。一応ここら辺で住んでいるもんで。」
「大変ですね、ここって盗賊がたくさんいるんじゃ…!」
あ、盗賊であることを気づかれてしまった。そして彼女は俺に警戒心を向けてきた。
「おい、警戒するな。助けてもらった恩人に向ける態度か?」
「ま、まあ…それもそうですね、失礼いたしました」
なんか変なやつだな、普通ならもっと警戒してもいいはずなのだが。まさかこいつって騙されやすいやつなのかね。こっちからしたら話は早いが…
「じゃあ、気を取り直して俺の名前はドーレンだ、あんたは?」
「私はルセルナと申します。冒険者として試練を積んでいるものです」
「それは偉いことだな。俺はそれに見合う資格もない」
「そんなことはありませんよ、こうして私を救ってくださいましたし…」
この人が何故俺がああして助けたのかを知ったら心を痛むのだろうな。なるべく穏便に済ませるとしよう。
「ルセルナさんって言ってたな、なんであんな奴らから狙わてたんだ?」
「私も良くわかりません。ただ私の魔法とこの本について何か変なことをいったような」
「そうだったのか、盗賊でもそんなことに興味がないはずなのだが…」
こいつらが盗賊ではないとしたら他の賊か?それとも誰かに雇われた傭兵なのだろうか。服装からして、傭兵っぽいが、だがなんか分からないがぱっとしない。傭兵にしては乱暴過ぎだしな。ここら辺で一体何が起きているというんだ?まあ、それは重要ではない。俺が欲しいのはペルペトラ王国の情報だ。
で俺が考え事をしている最中にルセルナさんになぜか睨まれている、まだ警戒しているのか?当然の反応とは言え、心が痛むぜ。
「いやだから警戒しないでくださいよ…何もしませんから」
「ごめんなさい、つい…」
「とりあえず、ルセルナさんはペルペトラ王国出身ですか?」
「違います、もっと遠いところに住んでいました。エレーギア王国というところです。でも、ペルペトラ王国では長く滞在はしたことはありますね。何か知りたいことでも?」
「そうですね。ペルペトラ王国について詳しく聞かせてくれませんか?」
「いいですけど、何故でしょうか?」
「そこに用ができたもんで。あそこに腐れ縁みたいなものがあるんだ」
「まあ、いいです。それぐらいの義理はありますしね」
そして、ルセルナさんからペルペトラ王国について色々話してくれた。どうやらかなり王国が発展しているらしい。領土も大幅に拡大して、警備も増えている。だが、それは盗賊のせいなどではない。噂によれば、王国を脅かす敵がてきたとかなんとかっと言っていた。あとは、情報を整理すれば、かなり事情が分かりやすくなるな。結構得られるものがあったな。そして、奴らからちゃっかり盗むことにも成功もしたことだ。俺って今かなり運が良かったり?
「なるほど、かなり勉強になった。ありがとうございます。ところで、なんでよりによってここら辺に迷い込んだですか?」
「なぜでしょうね、このエタルナ大陸のこと知りたいんだと思います。そして、自分に足りないものを身に着けたいんですかね」
そう、この世界にはいくつかの大陸がある。
俺たちがいるのはエタルナ大陸と呼ばれるものだ。
本でしか読んだことはないが、他にも3つか4つぐらいの大陸がある。
その他の大陸の情報についてはなぜか開示していないものが多い。
小さい頃も、世界については興味はあったが、親はなぜか教えようとはしなかった。
恐らく、俺がこんなところにいるから情報も聞けないのだろが。
名前は覚えてはないが、それは時期尚早によって知ることになると思う。
「ほう、そういうもんなんだな」
「てか邪魔したな、いろいろありがとよ、ルセルナのお嬢さん」
「ええ、なぜか知りませんが、ドーレンさんとまた会えるような気がしますね」
「かもな…」
合える気がするのは俺も感じた。だから余計にまた会わない方がいい気がしてくる。そう俺の勘が言っている。もう面倒ごとはごめんだ。
それはともかく、別れを交わし、彼女は自分を強くするために旅立ったのである。
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さて、ここからやっと俺の住処に戻れる。
夜になった森の中はとても静かなのである。
っと思ったら、ルセルナのお嬢さんが戻ってきた。
「あの…」
「おう、行くんじゃないのか?」
「そうしたいところですが…森の中と言えば、迷子になりやすいと聞いたもので…」
「なるほどな、なんか魔術師って飛んだりできると聞いたが、もしかしてできないのか?」
「いえ、それができるのはほんの一握りの魔術師って聞きます。私のまわりで飛ぶことの出来る魔術師は聞いたことがありません。それは伝説と呼ばれる程です。」
「そうだったのか。実はここら辺で乗り物を呼ぶことができるんだ、時間はかかるかもしれないが…」
本当は面倒だが、ここで敵になるぐらいなら、一緒に連れてってもらおう。彼女はどうやらあの賊、あるいは傭兵どもに森の中で迷っていたら、ここら辺でさらうつもりだったようだ。
そして俺はその乗り物とやらを口笛で呼ぶことにした。
この乗り物は時々まぐれが多く、一日立っても来ないことがある。
だか今日は運が良いらしい。早速口笛で呼んだらすぐに鳴き声を聞けたのだ。
俺がルセルナのお嬢さんといるせいかもしれない、美人の特権って奴なのか。まあ、結果的に良いのではあるか。
この乗り物は上から降ってきた。大きい羽根を生えており、旋回した後にバランスを取りながら着陸したのだ。
この乗り物の名はアークレイブンっと呼ばれるものである。
あだ名は黒い運び屋という愛称がある。このあだ名の通り、このアークレイブンはものを運ぶのにかなり役に立つ。だが、もっと便利なのは、人すら乗せれることができるのだ。話に聞く限り、その爪の握力は50人を余裕に乗せれるらしい。勿論、例えによればの話だ。なぜこんなに力があるのかというと、魔力を筋肉に集中させているという説がある。そしてそもそもアークレイブンの種族が元々獲物を狩るものとして怪力だったという。
アークレイブンは持ち物を備えており、人間が乗れる用のものが備わっている。乗れるものの種類が多数あるのだが、最低限に備えているのはロープだ。
乗り方はアークレイブンの爪に棒を引っかけて、そんでその下にフックをかけたらそのロープでぶら下がっている。このロープは魔法のエネルギーが込められた魔法陣が刻まれており、体をかなり軽くし、長い時間乗れるようになっている。そして念のために落ちないように安全装置が仕込まれている、生かすだろ。
そしてルセルナのお嬢さんはぺルペトラ王国に戻りたいと言ったので、まず俺が兵に見つからないところで降りさせて貰おうと考えた。
アークレイブンは徐々に上昇し、人間が追いつけるように少しずづ上がるのである。そして、俺たちはそのロープを使って浮いた。
俺はあまりアークレイブンに乗る機会が少ないのだが、乗る時に複雑な感情になるんだ。なぜなら、上から見る景色が綺麗なのに、どうしても思ってしまう。
ここに閉じ込められている奴らが違う人生を送ることができるのかと。だが、盗賊が所有している領域ですら上からだと世界が広いと思える。
そしてルセルナのお嬢さんはキラキラした目でこの景色を眺めていた。こんな経験が初めてなのだろう。
「こんな景色もあるんですね…」
純粋でよろしい。
一体彼女はどうな人生を送ったのだろうかと俺は考えていた。俺には知ることも出来ないだろう。が、俺が王国で観てきた奴で一番まともなのだろう。残念ながら俺はルセルナお嬢さんのように普通の人生を送ることはできない。
俺は自分にしかない人生を掴み取ると決めたのだ。
---
「じゃあまた改めてまた会えることを祈ります」
「そうだな、達者でな」
そして彼女はアークレイブンに降りて今度こそちゃんと別れた。
そのあと、アークレイブンに俺のが住んでいる場所まで送ってもらった。
ちなみに、このアークレイブンの乗り心地がかなり良いのである。風通しの良い中で、ロープにぶら下がるのはなんか貴重な経験だ。今まであった恐怖も全て打ち解けるように思える。だが矛盾もある気持ちは避けることはできねぇ。こんな景色が見えるというのに、俺の送ってきた人生はこんなきれいには見えない。だが、いい時があったのは認める。とは言え、この人生に慣れるのはもうごめんだ。
俺はもっと世界が観たい。そう思った。
しばらく待っていたら、やっと俺の目的地についた。そう、あの廃墟だ。
ここから見る廃墟はその名の通り、荒れているのだが。きちんと生活するのが可能だ。理由はいくつかあるが、
そもそもここは最低限の物が揃っている。そして盗賊に必要な店が並んでいて、意外と頑丈な作りになっている。
目立たない為に発展はしていない。なぜ発展していないのかというと、王国の奴らが警戒視するらしい。盗賊が作った町が発展しているとなれば、王国も黙っちゃいない。
という点だ。
王国の離れた場所は一応明かりがあるほどの風景だ。そして廃墟の作りが大きい建物がない。
この廃墟のあだ名はスモールワールドと呼ばれている。
理由は、ここに住んでいる奴らの存在が王国の奴らからしたらいないも同然だからな。もう一つの理由はある商人が開いた店がワンワールドと呼ばれているからだ。正直言って名前はダせぇぜ。
そしてなぜ俺が早く戻りたかったのかというと、その長い付き合いの商人に会いたかったのだ。その商人はただもんじゃねぇ。どれぐらいかというとこのスモールワールドがほぼ問題が起きないところにしたぐらいだ。それがどのような強さか盗賊どもに思い知らされた。
その商人はしょっちゅう情報を得るために見回ることがあって、俺が偵察している頃は既に出ていた。
だが、戻っているのは勘でわかる。だから早速アークレイブンを降ろしてもらった後、その商人がいる店に入った。
でも、また嫌な予感がするのだ…
すると、その商人はいた。
この商人の名前はウェンデルという。
ウェンデルの旦那がこの店、ワンワールドには食堂もついており、だいたいの盗賊たちがここを利用している。料理は森で狩った動物や、店の裏で育っている野菜などを使う。当たり前だが、こんなところに農場みてぇなはない。だから、ウェンデルの旦那は自分なりに工夫して野菜を育てる方法を考えついたのだ。
そして、店のフロントにはウェンデルの旦那がお気に入りの商品が揃っている。大体はいいもんはあるのだが、時々誰も欲しくはないような変なものを仕入れたりする。
「いらしゃい、おードーレンか。やっとここに戻ったようだね。心配したぞ…」
「おう、ウェンデルの旦那。今日は色々大変だったんだぜ!この所にめっちゃ強い奴がいてよ…」
「ああ、聞いたよ、かなり無茶したんだってな、どうしたらそうなるのかね…」
「俺が好きでやっているんじゃねんだぜ旦那」
「はいはい。言われなくても分かっていると思うが、今がここを出るチャンスだからね」
「じゃあ、手配はできたんですな?」
「まあ、その前に話がある…出ておいで」
そして、俺の嫌な予感がこいつか。
それはある少女だったのだ。それも、かなり高貴なやつがな…
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