『無能の悪童王子』は生き残りたい~恋愛スマホRPGの噛ませ犬の第三王子に転生した僕が生き残る唯一の方法は、ヒロインよりも強いヤンデレ公爵令嬢と婚約破棄しないことでした~
ウィルフレッドが聖女をエスコートしてきました。
ウィルフレッドが聖女をエスコートしてきました。
「ハロルド殿下、アレクサンドラ様、ご入場です」
扉が開かれ、僕とサンドラはパーティーの会場となるホールへと足を踏み入れた。
その後には、ウィルフレッドとパートナーを務めるマリオン、さらにその後に、エイバル王がロレンツォとクリスティアを連れ、ホールのバルコニーに姿を見せる段取りとなっている。
「本当なら、純粋に君とパーティーを楽しみたいんですけど……」
残念ながらホストを務める以上、バルティアン聖王国の面々の世話をしなければならず、最後まで気を抜けない。
何より、途中退席は絶対に認められないんだよねー……。
「お気遣いはいりません。それより、私にもぜひ、ハル様のお手伝いをさせてください」
「あ、ありがとうございます」
胸に手を当て、ニコリ、と微笑んでそんな申し出をしてくれる彼女に、僕は頭が下がる思いだよ。
というか、どうして『エンハザ』の運営は、彼女をヒロインにしなかったんだ。断固抗議する。
すると。
「国王陛下並びにサルヴァトーリ
エイバル王達の登場を高らかに宣言する文官の声が、ホール中に響き渡る。
あれ? まだウィルフレッドの入場がまだなんだけど……ひょっとしてアイツ、ホストのくせに支度が遅れて……って!?
「……そういうことか」
「…………………………」
エイバル王の後に続いて現れたのは、ロレンツォ。そして……クリスティアをエスコートする、ウィルフレッドだった。
確かに、ホストを務めるウィルフレッドが彼女をエスコートすること自体は、別に不思議じゃない。
だけど、事前の段取りを無視しての変更なんて、一体何を考えているんだろうか。
「……あの
その小さな手に力を込め、サンドラはウィルフレッドを忌々しげに睨む。
彼女のことだから、同じホストである僕を
だけど。
「あはは、気に病むことはありませんよ。アイツが聖女様のエスコート役を買って出たということは、僕が世話をする必要がないってことですから」
「で、ですが……」
「おかげで僕も、肩の荷が下りました。純粋に、パーティーを楽しみましょう」
納得がいかず眉根を寄せるサンドラに、僕はおどけてみせた。
思うところがないわけじゃないけど、そもそも今回のホスト役だって、ラファエルのせいで嫌々やらされているだけなので、サンドラと過ごす時間が増えるのならプラマイゼロ。いや、むしろプラスだよね。
「そういうことですから。とにかく、僕はお腹が空きました。何か食べましょう」
「もう……」
口を尖らせるものの、サンドラも気持ちを切り替えてすぐにはにかんでくれた。
◇
「失礼。少々よろしいだろうか」
オードブルの前で料理を物色している僕達に声をかけてきたのは、ヒロインの一人であり聖騎士のカルラだった。
というか、聖女の護衛をほっぽり出して、こんなところにいてもいいのかなあ……。
「え、ええと……はあ……」
「先程は、無礼なことを申し上げてしまい、誠に申し訳ない……」
「ちょ!?」
深々と頭を下げるカルラを、僕は慌てて止める。
いやいや、あの時の暴言のことはサンドラにも伝えてないんだから、お願いだからヤメテ!?
「……ハル様。彼女の言う『無礼』とは、どのようなことでしょうか?」
「ヒイイ!?」
ほらあ! サンドラの逆鱗に触れちゃったじゃないか! おかげで僕、悲鳴をあげちゃったよ!
あれだってカルラが悪くないってことは分かってるから、あえてスルーしたのに!
「その……実は、ハロルド殿下がわざわざ出迎えてくださったというのに、私はこう申し上げたのだ……『『無能の悪童王子』がお出迎えとは、聖王国も舐められたものだ』、と」
気まずそうに話すカルラに向け、サンドラが絶対零度の視線を向ける。
それだけで、簡単に人を殺せそう。
「つまりあなたは、そのことをこのような場でわざわざ蒸し返し、
「っ!? ご、誤解だ! 私は決して、そんなつもりは……!」
サンドラに凍えるような声で指摘され、カルラが必死に否定する。
だろうね。『エンハザ』でもそんな器用なキャラじゃないし、何より、清廉潔白質実剛健という性格だから。
「そのー……カルラ殿、でよろしかったでしょうか。僕は何とも思っておりませんので、どうかお気になさらず」
「だ、だが……」
「あの時も、僕を
「あ……う、うむ!」
苦笑交じりにそう告げると、我が意を得たりとばかりにカルラがパアア、と顔を
うわあ……やっぱりメインヒロインだけあって、メッチャ可愛いな。もちろん、サンドラはさらにその上を行くけど。
「それより、どうしてあのようなことを?」
「う、うむ……それが……」
なんとも歯切れが悪く、カルラはうつむいてしまう。
まあ、ああやって言えって指示したの、おそらくクリスティアだろうし。
ただでさえ騎士道精神にあふれている彼女だ。仕えている身分としては、主君の悪口は言いづらいか。
「早くおっしゃってください。そうでないと、この怒りの矛先を全てあなたに向けなければならなくなってしまいます」
「サンドラ、落ち着いてください」
今にも胸倉をつかみそうな勢いのサンドラを、僕は必死になだめた。
僕のために怒ってくれるのは嬉しいけど、ちょっと武闘派が過ぎる。
「と、とにかく、僕も無理に理由を聞きたいわけではありません。あの件はこれで終わりにして、時間の許す限りパーティーを楽しんでください」
「す、すまない……」
カルラはもう一度深々と頭を下げ、主であるクリスティアのもとへと戻っていった……のはいいんだけど。
「むうううう……」
「あ、あははー……」
その後僕は、カルラを
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