『無能の悪童王子』は生き残りたい~恋愛スマホRPGの噛ませ犬の第三王子に転生した僕が生き残る唯一の方法は、ヒロインよりも強いヤンデレ公爵令嬢と婚約破棄しないことでした~
小さな相棒の願い ※災禍獣キャスパリーグ視点
小さな相棒の願い ※災禍獣キャスパリーグ視点
■災禍獣キャスパリーグ視点
「ニャフフ……これでボクも、最強魔獣の仲間入りなのだ!」
相棒のハルがベッドの中で寝息を立てる中、ボクは窓の外に見える月を見つめ、ほくそ笑んだ。
今のボクなら、きっとあのヘンウェンだって倒せると思う。
……
「ま、まあ、ボクには相棒のハルがいるから、いつでも大きくなれるんだけどね!」
そんな強がりを言ってみたものの、常にハルと触れてマナをもらわないといけないから、今のボクに、一人で戦う機会なんてないことはもちろん分かっている。
今のボクじゃ、全然強くないことも。
でも。
「い、いいもん……ハルは、ボクのこと相棒だって言ってくれるし、すっごく大切にしてくれるんだから」
今から一年前、
ボクは震えるだけで、何もできなくて、
……そうだよ。ボクは、
だって、しょうがないじゃないか!
ボクは小さくて、なんの力もなくて、どうすることもできなかったんだから!
それからヘンウェンの奴は、島にいる生き物を、手あたり次第に食べ始めた。
ボク達キャスパリーグと一緒に暮らしていた、大切な仲間を。
次々に生き物が食べられていき、残るはボクと数匹の動物だけ。
もうどうしようもなくて、ボクは島から逃げ出すことも考えた。
でも……いつも島の端っこまで来て、足が震えて動けなくなるんだ。
まるで、ボクに
なのに、僕はヘンウェンが怖くて、後ろを振り返ることができなくて、ただそこに立ち尽くすことしかできなかった。
その時だよ。
――ボクが、相棒のハルと出逢ったのは。
◇
「ニャハハ、あの時は本当に驚いたなあ……ダメ元であんな交渉してみたけど、ハルったら魔獣のボクなんかのために、あのヘンウェンと戦ってくれたんだもん」
ハルは、災禍獣キャスパリーグのもう一つの姿……『漆黒盾キャスパリーグ』を求めて島にやって来た。
だから、そのことを条件に、あのヘンウェンと一緒に戦うようにけしかけたら、本当に戦ってくれたんだよね。
信じられないよね。
だってボク、小さくても魔獣なんだよ? ニンゲンなら、普通はボクを殺そうとするはずなんだ。
なのにハルは、ヘンウェンのところまで一緒に来てくれて、
「あの時ボクがどれだけ嬉しかったか、分かってるのかなあ……分かってないんだろうなあ……」
幸せそうな顔で眠るハルを見て、ボクはクスリ、と笑う。
でもね、
ニンゲンの中には、ボクみたいな弱い魔獣にも優しくしてくれて、必要としてくれる、そんな素敵な人だっているんだよ?
だからボク、これからもずっとずっと、ハルの
何といっても、ボクはハルの
とはいえ。
「……時々、サンドラがボクに嫉妬する時があるんだよね」
ボクは魔獣だし、ニンゲンのハルと
ま、まあ、もちろんハルがボクを求めてくれるのなら、その……やぶさかではないんだけど、ね……。
ていうか、ボクの姿は子猫だし、そうなろうと思ったら、ニンゲンみたいな姿に変身するしかないんだけど……そんなことをしたらハル、絶対に引いちゃうよね。
万が一ハルに嫌われたら絶対に嫌だし、今のままですっごく幸せだから、うん……ボクはこのままでいいや。
それに、ハルの婚約者はサンドラだけど、
だから。
「ハル……絶対に、浮気しちゃ駄目だよ? ボク以外の誰かを相棒にしたら、承知しないんだから」
もぞもぞとシーツの中に入り、ボクはハルのお腹の上で、ポツリ、と呟く。
ハルと一緒にいるためなら、今回の迷宮攻略だって……ううん、どこへだって行くし、どんな敵が開いてでも戦うんだから。
ハルも言ってたけど、一緒に手に入れた『称号』のおかげで、ボクはすっごく強くなったんだ。
絶対にボクを相棒にしたこと、後悔させないからね?
「おやすみ、ハル」
ボクはハルの頬にチュッってキスをすると、ゆっくりとまぶたを閉じた。
ハル……ずっとずっと、一緒にいようね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます