第15話 魔女との出逢い
「まいどありにゃ〜」
「もちっと真面目に店番しろよー」
怠け癖と気まぐれな性格を除けば抜群に知識ある店員に見送られながら雑貨店を目指す。
「着心地メチャクチャいい」
白シャツに魔法に対して耐性のあるジャケット、ニッカポッカに似たパンツ。袴ほどの役割はないが、あの店の品揃えの中では最良のものだったと確信する。それに…
「センスいい奴が選んだからか…いいな」
やっぱり、その、なんだ。カッコイイ…んではないかと我ながら思う。センスのイイという奴に憧れがあったので、実際に身を包んでみると一層素晴らしい事のように感じる。生きてて良かった! うん。
(一度死んだ俺が言うと妙に説得力あるな)
「はっ! …浮かれるな」
ヴォルペにも何故だか偉く心配を掛けてしまっているし、壁は増える一方。
「ラパーチェも…相当強い。足元にも及ばないほど」
ラパーチェが命令口調で話すのは圧倒的な自信と確信があるからだ。ツバキとは違うタイプ。だが、不思議と接していて悪い気分はしなかった。アイツなりの信念みたいなものを感じたからか?
(そう考えると、ツバキには無いな)
ツバキは容姿端麗の文武両道、直感的なセンスもあるし記憶したり身につける力も人間離れしている。そしてそれらを、ただ
(ツバキは…何がしたいんだ?)
冒険者をやってこそいるが、アイツは昔から争いは好きではないと言っている。こっちのツバキも間違いなくそうだろう。
「らっしゃい」
「…ここだ」
さっきの服屋の青年—マタタビに紹介された店を気付けば通り過ぎるところだった。無愛想にタバコを吸うおばあちゃん…分かりやすいアイコンだな。
「おばあちゃん、魔硝石って在庫ある?」
「魔硝石かい? …ちょいと待ってな」
おばあちゃんは糸目を僅かに上げて、それからノソノソと店の奥へと消えていった。長年の直感が暫く掛かると俺に告げる。
「少し見てるか」
整頓された棚がカテゴリー毎に鎮座している様は、美術館にすら思えるほど綺麗だった。
「ポーション・魔符・香辛料…」
香辛料以外はまるで未知のばかりが並んでいる。ポーションは確かロン毛の人がくれた物を飲んだ覚えがある。魔符に至っては完全にちんぷんかんぷんだ。
「微積分…というより化学の反応式に近いような」
「こんにちは〜」
「ちわー」
魔符を睨みながら反射的に挨拶を返してしまった。声の主が此方に歩み寄って来る。
「…何見てるの?」
「ん」
「『詠唱高速化を高速化する魔法』…剣が得意そうなのに魔法も使えるんだ! 凄いねキミ」
「いや、魔法のまの字も無理だ。俺は魔力が0らしい」
「…尖ったジョークだね! アハハ」
「?」
「…? もしかしてマジな奴?」
「マジな奴」
魔法使いを絵に描いたような女の子だった。黒い鍔広帽子に黒い装束…と言っても金や銀の金具や細かなベルトが施されてだいぶ実用的な代物だ。
「動かないでね」
「…」
額と額がくっつく。
「…本当だ」
「どうやらな」
「あ、ごめんね。びっくりしなかった?」
「大丈夫だ、慣れてる」
「…へぇ〜」
ツバキの突飛さに比べれば大概の事は想像出来る事の範疇に収まる。
「私トリフォリオ! 皆はリフォリーって呼んでくるよ。よろしくね」
「ギンマルだ」
「ギンマルも冒険者なんだー! ホ級…って事は意外とベテランさん? 実は私もなんだけどね。まー巷では、密かに天才とか呼ばれたりしてるんだけどーもー困っちゃうよね〜♪」
リフォリーは裏腹に褒めちぎって欲しそうなオーラを全開にしていた。どうしたものか。
「どの辺が天才なんだ?」
「私ね、魔女なの!えっーへん!」
「はぁ」
「魔女!」
「聞こえてる」
「ま・じょ!」
「魔法使いの女バージョンじゃないのか?」
「…アンタ本当にホ級? 魔女も知らないで?」
「今朝なったばかりだ」
「いやいやそれにしても………よし」
表に出るように指をクイクイとするリフォリー。
「魔女の…魔導の真髄を見せてやるわ! 決闘よ」
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