第8話 地底から来た魔族
チュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえる。久々に快眠出来たおかげか、頭の中が偉くスッキリしている。すぐ隣には全裸の女性が…
「んぁ…あ、おはよー」
「おはよう。それと、見えてる」
「見てもいいのに〜♡」
ローブのない彼女の姿は直観的には悪魔に近いと感じた。立派な二本角、妖艶な臀部から覗く矢印状の細長い尻尾、青く艶のある肌。顔立ちも整ってるし、メリハリのある柔らかい身体からして西洋の伝承におけるサキュバスの方が近い。性格は真逆そのもので、どこかアホの子を感じさせるのがこう…ギャップ?を感じさせる。
「はは〜ん? ダーリンは魔族に会うの初めてな人か〜♡」
「魔族?」
「ほらほらー! なんか魔王とか魔神とか闇堕ちした聖剣の騎士とかダークな存在がいるじゃん?? あーゆーの♪」
「あぁ、何となく分かった」
ゲームとかのボスみたいなモンを指しているんだろうな。
「…怖い?」
「怖い?」
急に低い声で言われて聞き返してしまったが、彼女から恐怖を感じた事はない。
「やっぱダーリンは素敵な人だね〜♡」
「…取り敢えず服着てくれ」
喜んでぴょんぴょこ動き回られるのはいいが、色々と恥ずかしいのでとにかく隠して欲しい。
「そういえば名前は? 俺はギンマル」
「私ー? んじゃね、ラヴ♫」
「(そんなわかりやすく偽名名乗る?)」
と問答している間にラヴは着替え終わっていた。武装の方が的確かもしれない。露出率の高いボディスーツにデカいベルトを巻いて、胸当てに当たる鎧(胸が全然収まっていない)と籠手を嵌めてその上から全身を隠すローブを纏う。武器らしい武器は持ち合わせていないし、護身用の装備なんだろう。
「じゃ、朝ごはん食べにいこ♪」
「あぁ」
————
「へー、ダーリンの愛するツバキちゃんって白薔薇の事だったんだ! なんか意外〜♪」
「どうゆう意味だ」
「ほら、昨日凄い私の身体で熟睡してたからー…大きい方が好きなのかな〜って♡」
「黙秘権を行使する」
「え〜教えてよ♪」
とチャレンジャー通りの一角にあるレストランに入った時だった。
「…あ? おーい、ニーチャン!! こっちこっち」
奥の方でヴォルペとラッツも朝餉を摂っていた。4人掛けの様なのでそのまま相席させて貰う。
「お前んちも中華屋だろ? そっちの方が落ち着くもんじゃないのか」
「母ちゃんがうるさいのなんの…頼んでない皿出して来るし、金なんかイイって頑なに受け取らないし!」
「…そうなのか」
他所様の家庭事情には詳しくない方だが、とても良い親御さんじゃないか。反抗期真っ只中らしい反応だ。
「リーダーのコイツの判断力が落ちれば俺らのパーティーはおしまいだからな! ガッハハハ」
「んでーそっちのネーチャンは? 珍しい種族みたいだけど」
「はーい♪ 珍しい種族のラヴでーす。ヨロシク〜♩」
ヴォルペがメニュー表をくれる。…見張られてない外食ってのは初めてだ。
「地底から来たのかいネーチャン? 久しく行ってないが賑わってるかい? サバトのあたりは」
「サバトー? 確か新しいダンジョンが見つかったとかで魔族以外の出入りも活発に〜って…友達が言ってたよん♪」
答えを受けてラッツは暫し懐かしそうな顔をして、それから湯気の立つスープを飲み干した。
「あ、私ダーリンと同じ奴ね♡」
「…この卵とベーコンのガレットにするか」
「ウチ追加でトーストとコーヒー」
「俺も食後のコーヒーを」
ん?
「え、リーダーはヴォルペなのか?! ラッツじゃなくて」
「おうニーチャン、喧嘩なら買うぜ?」
「ガッハハハ! 朝から元気だな、お前たち」
「あ、お姉さーん注文お願いしまーす♪」
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