第51話 反乱の犠牲者
「クソーどこ行きやがった。魔王様にバレたら俺の命だけじゃ足りないぞ…。」
兵士は辺りを重点的に捜索している様子だった。
(何故ここを重点的に探す!!)
「おかしいな。さっき人影っぽいの見えた気がしたんだが…。絶対この辺にいる筈なのにどこにも歩いてないわ、足跡ないわ。魔力で追うのも無理だわってアイツ運ありすぎじゃねぇか?」
(見られていたとは…。処理の速さが足りなかったかな。でも、魔王にはバレてないみたいだし大方問題ない。あとはこれが諦めて報告に行った辺りで動けばいいか。ここら辺にはいませんでしたって報告してくれれば逃走楽だし。)
草むらの中や岩の後ろなど子どもが隠れそうな場所を探してる…。おい、そんなに私ガキに見えるか!?ガキなのは年齢的に否定しないけど…。私的にはちょっと大人びた感じが出てると思ったんだけどなぁ。
「いねぇー。はぁ、魔王様が帰って来たら本末転倒だし魔王様が帰ってくる前に上に言ってもう少し人員増やしてもらおう。」
そう言うと兵士は私が逃げ出して来た方向へと戻っていった。
(よし行った。)
流石にここでぬか喜びしてタイムロスするのが不味い事ぐらい私でも分かるので喜びたい気持ちをぐっと抑え、再び歩を進めた。しかし、運がいい時もあれば悪い時もある。私は再び最悪な存在を目にする。
(く、帰宅ルートと被ったか。いや、普通に考えて魔王の本拠地が北にあったとしたら南から帰ってくるのは当たり前だ。あれは他種族もいるってのに人間の可能性にベットしてる変態だからな。でもまぁ、これでこっちの方向に人間の領土があるのはほぼ確定したと言っていいだろう。)
グレースは息を殺し魔王に気づかれない事を祈りながらその場に留まる。すると、案外気づかれないのか魔王は普通に通り過ぎていった。
(よし、今回は逃亡成功だ!!さて、魔族なんて言うど変態殺し合い集団の領土からは離れるぞー。)
魔王が通り過ぎ見えなくなったのを確認した後そそくさと木の上での移動を再開し、魔族以外が住まう土地を目指した。
ーその頃の魔王ー
「慌ただしいな。どうした?前の声明が気に入らず攻めて来た人間でもいたか?」
自身の邸宅にいる部下達に帰宅早々問いただす。
「人間の一部が反乱をしたのは事実ですが少将と中将と十数人の兵士で鎮圧は既に完了しています。それに伴い残念ながら少将と中将が死亡しました。それより、捕らえていた魔女が脱走しました!」
「はぁ?あの空間は開いたモノ以外には出口が見えず永遠に広がっていく筈だがどうやって脱出したんだ?」
「それが分かりません。」
「では、脱出を想定せず部屋の前に兵士を置いておかなかったのか!?一応何人か指名したよな。勝手に人員を変更したのか?」
「いえ、ちょうど交代の時間でして…。」
「馬鹿者が!!魔女を甘く見るな。なんで交代を現場でやらなかった!?」
「それは当人達に聞いていただかないと…。」
「…確かにその通りだな。では、こちらに攻め込んできた反乱分子共の氏名のリストはあるか?」
「はい、ここに。」
「ご苦労。戻っていいぞ。」
「はい。」
魔王は自身の書斎に入るとリストアップされた氏名に目を通す。
「Aランク冒険者も死んだか。奴らは前回我々と戦うのを恐れ、いや、リスクとし戦う事を避けた者達の筈なんだが。何か腐敗臭がプンプンするな。これも、それも、あれもか。パッと見た感じだが明らかにおかしい。性根が腐った連中の気配を感じる。膿はあらかた処理できたと思っていたのだが…。はぁ、詐欺師共が…。ギルドともグルか。ギルドの信用を利用した巧妙な罠を張ったか。」
書斎には魔王の憤る声だけが木霊する。その殺意は邸宅中に蔓延していたグレースの魔力の痕跡すらも掻き消し部下達をビビらせたと言う。
人間の死亡者リスト
・ピーターAランク冒険者
・パールAランク冒険者
・アークAランク冒険者
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