第47話 最悪の再会

「待て待てお前魔女だよな?」


「おっさんのだる絡みは需要ない。とっとと去ね!!」


そう、魔王に発見されてしまったのだ。大方私が料理を食べる様子に違和感を覚え顔を確認したのだろう。…クソが!!


「それに気安く触らないで貰えます?普通に気持ち悪いんで。」


「おいおい、久しぶりの再会だってのに冷たいじゃないか。あれか、氷の魔女だから態度も冷たいのか?そうなのか?」


「知りません。あの傍迷惑な娘の方に絡んでください。私急いでるんで…。」


誰がこんなやつと関わりたいと思うか。おっさんの話ではこいつロリコンを超えたロリコンらしいし関わりたくない。私がロリって訳じゃ無いがロリコンって事実だけで不快感増し増しである。


「そう言うなよ。一杯奢ってやるからさぁ。」


明らかに関わり方が酔っ払ったおっさんである。逃げようとするグレースの腕を掴んでくるがその握力は酔っ払ってるせいか加減が出来ておらず普通にグレースの腕を折る程である。グレースは前世で欠損などの怪我ばかりしていたため痛みには強いが痛いものは痛い。余計な怪我は普通にしたく無い。


「ほら、他の客が見てるでしょ。お前の好感度ダダ下がりになる前に手を離した方が身のためだと思いますよ。」


「そう言うなよ。娘がさぁ、反抗期長くて…。うっ…。」


魔王ともあろうものが涙を浮かべている。親の悩みは万国共通で統治者だろうと変わらないらしい。


「気色悪い。側近とかに頼ればいいでしょ。まぁ魔族の性質的に皆元々一匹狼、それを統治している貴方の手に負えないのなら側近だろうと役に立たないでしょうけど。私に話す内容では無いでしょ。いい加減手を離して下さい。」


グレースは手を振り払おうと必死であるが魔王の握力には敵わない。かと言って自切するのは他の目がある以上魔女バレする可能性があるため難しい。魔女バレと言うのは魔女狩りという概念がある以上しない方が身のためであり、ロマンしか頭にない狂人とてそのリスクを考慮する事ぐらいはできる。だから、グレースは今下手に手を打てず、魔王自らが手を離してくれる事に期待するしかないのである。


「はぁ、取り敢えず現状どうなってるのか聞きましょうか。私はお前にもお前の娘にも大分迷惑掛けられたからな。」


一応、魔王襲来や今回の戦争の原因は多分あの巨大な龍を廃人にした事にあるため、魔王に殺され掛けた事は別に恨んで居ないが娘は違うだろ。うん、公的には両方の面で怒ってる風にするが…。


「あぁ、その節はどうも。娘は大分楽しんで居たぞ。今は頭を治している最中だがな…。娘に実質勝利するなんて俺の側近クラスはあるんじゃないか。…下手な四天王より全然強い。」


「それで、娘と喧嘩した理由は?」


「お前だ。」


「は?」


「お前の様な実力者と戦っておきながら教えなかったから怒ってるんだ。」


「意味不明。はぁ、ちゃんと殺しておくべきだったかな。」


「やめてくれ。お前の場合冗談じゃ無いだろ。本気で殺しに行くだろ。そこら辺狂ってるよな。」


「生きるために命を奪う事のどこが狂ってる?殺さなきゃ殺されるのにそこで躊躇するようならどの種族どの国どの時代だったとしても生き残れないぞ。お前みたいな圧倒的な力があるわけでは無い非力な存在に何を求めてるんだか。」


「どの口が言ってるんだよ。お前までも非力な存在になるのなら、ほとんどの生物は皆非力になるだろ。」


「当たり前だろ。頂点捕食者以外は皆食って食われる関係なんだから。」


「はぁ、まあいい。それで娘との亀裂を直すにはどうすればいい?」


「知るか。娘の喜ぶ様なことをしてやればいいだろ。お前の娘なんだから自分でどうにかしろ。別にグレてる訳じゃないだろ。なら問題ないだろ。それに最悪放置してても時間が解決するんじゃ無いか?」


「放置していた結果がこれなんだよ…。時間は万能じゃ無い。初めて思い知ったね。」


魔王は片手で酒を飲みながら話を続けている。…手を離した瞬間即座に逃げてやろうと考えているグレースからしてみれば非常に迷惑な話である。


「はぁ、私に聞くより子持ちの同族に聞いてみればいいだろ。私に子は居ないから何も分からないぞ。」


これは事実である。前世では彼氏ができる前、いや、腹に宿した命に責任が取れる年齢になる前に死んでいるため子が居た経験はない。妹は居たがそれを寵愛していた訳でもない。だから親の気持ちなど推し量る事すら出来ない。


「…そうだ。今からうちに来い。」


「何いいこと思いついたみたいな顔してるんだよ。ふざけんなよ。」


流石にそれは見過ごせない。魔女バレの危険性より魔王の本拠地の方が何十倍も危険だ。幸いにも既に会計は済ませている。自切逃げをしても問題は無い。うん、自切逃げの方がまだマシだ。

私は亜空間を使い自身の腕を切り離すと同時に身体能力強化を使い店の外に駆け出した。

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