第38話 商談?
それから一週間気配を極限まで消しながらの馬を走らせ続け今度こそ何事もなく目的地に到着することができた。その場で私以外の護衛は別れ依頼完了書を手にギルドへ向かった。私は残り、おっさんとの商談と言う名のバトルを馬車の荷台でしていた。
「今回の依頼で分かった事がある。やはりどの魔女もろくでもない奴だ。それはそれとして商談をしよう。」
「うん、その第一声は最悪だと思うよ。」
「お前はどんな皮肉も陰口も気にしないだろ。何を言われても全く動じない。そのぐらいこの依頼で骨身に染みるぐらい味わったわ。」
「そっか。で、流石に私が討伐したとは言えないから売れるの鱗とか牙とか角とかの落ちてても不思議では無い物になるけど、何が欲しい?」
「出来れば竜の血や肉も欲しいが仕方ないか。流石の俺も引き際は弁えてる。金貨一万枚でどうだ?」
「おー、急に金額大きいね。でも、足元見てるでしょ。最低でもその1.5倍は出してくれないと定価以下は売る気にならないよ。だって、お前に売るより他に売った方が得なんだもん。多少世間知らずな所があるからって流石に私を舐めすぎだ。」
私は苛立ちの表情を顔に貼り付ける。正直子供が舐められるのは前世でも嫌という程経験したので何も感じないが一応不快感を感じていると装わなければもっと酷い事になりかねないので表情を作る。
「いや、割と定価の筈。」
そう言いながら竜の鱗やら、牙やらをよく観察するとおっさんは声を上げた。
「あー、そう言う事か。確かにこれなら定価以下だわな。」
おっさんの目に映ったのは使い古された牙では無く、傷一つなく綺麗な状態になっている鱗である。グレースは先の戦闘で数枚の鱗を駄目にしただけでほとんどの鱗を傷つけずに討伐していた。本来ならば死闘を繰り広げ手にする竜の素材であるためこのような事例は珍しい。竜の巣に忍び込み古くなって剥がれ落ちた鱗を盗る方法もあるがそれも古くなって落ちただけなので鱗が綺麗な状態では無い。そのため当然、綺麗な状態の鱗と言うのは様々な面で価値が高くなるのは必然である。
「分かった。さっき提示した額の1.8は出そう。それでどうだ?」
「いいね。市場が飽和しない程度に売れよ。」
「誰に言ってるんだよ。俺は商人だぜ?売るタイミング及び売る数などは当然心得てるわ。」
因みに金貨一枚の価値は普通の四人家族が一ヶ月間三食おやつつきで生活しても余る程度である。
百銭→銅貨一枚、銅貨百枚→銀貨一枚、銀貨千枚→金貨一枚となる。
一般的な職種の一ヶ月間の給料の相場は銀貨三十〜四十である。
「さて、これだけあれば暫くの旅路の資金には困らないだろ。」
おっさんから受け取った金貨の山が入った袋を亜空間に放り込み。おっさんと別れ、私の目的に急ぐ。
「さーて、待ちに待った遺跡の調査だー!!拷問なんかより絶対楽しくて面白くて、ロマンに溢れたモノがあるぞー!!」
私は着いたばかりだと言うのに走って街を抜け出し、目的地へ向かった。
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