第37話 反省会

「はい、すみませんでした。調子乗りました。」

「反省。」


無事地面に着地しひと段落ついた時にグレース達はおっさんに説教をされていた。まぁ、当然である。


「オロロロロ…。」


「そっちはいつまで吐いてるんだよ!?」


説教されてる二人を他所に着地してからずっと吐いている女はぐったりとしている。


「どんだけ胃に詰め込んでたんだよ!!」


女はおっさんが説教を中断し突っ込んでしまう程度の時間と量を吐き出していた。

それから暫く説教は続き、説教が終わっても尚嘔吐を続けていたため三人はそれが終わるまで待つ羽目になった。


暫くしてそれが終わると馬車は動き出した。


「明らかにお前の体積以上の物量吐き出してたけどお前の胃袋どうなってんだよ。」


「五月蝿いわね。冒険者ってのは仕事中何も食えなくなるかもしれないから食い溜めしとくのが普通でしょ。」


「馬鹿かお前。あそこまでの量食い溜めするなんて見たことも聞いたこともないぞ。量ってもんがあるだろ!!」


商人のおっさんは至極真っ当な事しか言っていないが懐疑の視線が向けられる。


「なんだその目は!!明らかに体積以上の物量を吐き出していたらこれが当たり前の反応だろ!?」


「ふう、すきっりしたし行こ。だいぶ先まで進んだけどここどこ?」


「あー、ここは目的地まで一週間って所だな。うん、お前らが無茶な運転してくれたおかげで納期よりだいぶ前に着きそうだ。」


「良かったじゃん。」


おっさんが笑顔のままグレースの頭を鷲掴みにして持ち上げる。


「良かったと思うか?なぁ、護衛依頼なのにこっちは死にかけてるんだぞ?なぁ?」


おっさんの静かな怒りをグレースにぶつけるが警察に怒られ慣れているグレースには全く響かないし、ビビりもしない。


「時間短縮は出来てるし荷物には傷どころか汚れ一つついてない。おっさんも怪我してないのにそんなに怒る意味がわからない。依頼内容はきっちり守ってるよ?」


それどころか怒られて腹が立ったのか若干の煽りまでしてくる始末である。


「女は皮肉屋が多いのか?まぁ、いい。今回だけは見逃してやる。実際、お前達が無茶をしなければ魔王の娘の襲撃を受けていた訳だし、荷物も俺も無事で済んだかわからん。」


「ほらね、結果良ければ全てよしって奴だよ。」


「なんだそれは。」


「うーん、言葉通りの意味だよ。結果がいいのならば過程などどうでも良かろうって先人の教え。」


「どんな蛮族だよ。魔族ですら過程も大事にするぞ。殺し合いを好む魔族ならではなのかもしれないが…。」


魔族にとって殺し合いは自己表現にして、生理的欲求である。ただ、相手を無惨に殺したいわけでは無い。お互いを殺す過程の中でお互いを知り交流を深める事を目的としているため、相手を殺せればいいっと言う結果だけを重視している訳ではない。


「まぁ、ここがばれる前に早く目的地に行こうよ。ずっと吐いてた奴も治ったし、再び馬で全速力した方がいいと思う。」


「お前に言われずとも分かってるわ!!」


魔王の娘を騙す事で距離を稼げているがいつ追いつかれるか分からない以上急ぐに越したことはない。それがこの場にいるものたちの総意だった。

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