第31話 早速トラブル
王都から出て数時間、最初の問題が発生した。
「うーん、囲まれてない?」
「囲まれてるわね。」
「だな。」
「包囲。」
「殺して大丈夫?」
「問題ない。」
「んじゃ、お仕事だねー。」
「殲滅。」
「二人とも見かけによらず血気盛んね。」
護衛組の中では一番歳上であろう女の人が抜刀の構えをする。…てか、なんで日本刀あるの?
そして刀を抜いたかと思うと一瞬で野盗達の身体を細切れにした。
一番血気盛んなのは貴方なのでは?
そんなことを思っていると突然骨肉が潰れる嫌な音が鳴り響いた。
「ぐちゃぐちゃ。」
散り散りに逃げようと一人一人人だったモノに変化していく。
「二人とも怖ー。私の出番無いじゃん。」
そう言いながら私は凍結魔法を利用し足元の空気を固め空中散歩すると同時に取り逃がしをこれまた凍結魔法で処理していく。この時こっそり何人かは亜空間送りにしておいた。後々使うかもしれないし、廃人になっても命はあるから生贄とかに利用出来ると思うし。…どうせ死ぬんだから私の為に死んでもいいよね?
「飛距離どうなってるの!?てか媒介具は?」
刀の女の人が私の魔法を見て驚いている。
「少し長いんじゃ無い?」
「魔法だろうと矢だろうと距離による威力減衰はあるしあんな軌道は描かない。ってそんな事より媒介無しにどうやって魔法を放ってるの!?」
「媒介?さっきから何言ってるの?」
「おいおいおい、お嬢ちゃん魔女なのに媒介具も分からんのか。杖とか指輪とか人形とかの魔法使いが魔法を使う上で魔力を圧縮および変換の器具の事だぞ?」
「これは体質だし、正確には魔法じゃ無いよ?強いて言うなら表皮?」
「「は?」」
「仰天。」
「因みにこの体質のせいで魔法はこれしか使えない。何をしても凍るから不便。」
「…待って、ヤバい奴がこっち来てる。」
「「「?」」」
「具体的に何がだよ。モンスターの巣も国軍の進軍ルートも全て避けたルートだぞ。それにまだここは王都も近いから定期的にモンスターの殲滅が行われている比較的安全な土地の筈。野盗だって人に専念出来るからこの場所に生息していたのでは?」
「天空の支配者、竜。気まぐれであっちこっちに出ては多くの国や街を壊滅させている生きる災害。Aランク冒険者である私達でもタダじゃ済まない。」
「なるほどー。竜って強かったんだ。でも、魔王の配下に大量に居なかったっけ?何で世界壊滅してないの?」
「魔王軍の竜は邪龍から生まれ落ちた粗悪品。百匹ぐらいでようやく本物の竜と数の優位も含めて戦力的に互角になれるレベル。魔王の配下の方はBランクでも頑張れば狩れるのよ。でも本物は違う。知能も能力も高い誰にも制御出来ない化け物。」
「壊滅。」
「積荷も俺もお前達も詰みって事か。…リスクは全て計算しておいた筈なんだがな。」
「違うわよ。タダじゃ済まないだけで狩れない事もない。私だって何回かパーティー組んで殺してる。当然死人も毎回のように出ているけど。」
「追い払うだけでいいの?」
「それが出来れば苦労しないし、こんなに焦んないわよ!!」
「お前に聞いてない。雇い主に聞いてるの。」
「あ、あぁ。」
「了解。」
「ちょっと、一人でどうにかなると思ってるの!?いくら貴方が Sとは言え…。」
「無駄だ。何故既に人外なAランクの上のランクが作られたと思う?…その目で確かめてみろ。 Sランクに相当すると初見でギルマスに評される程の実力を…。」
次の瞬間辺り一体温度が氷点下まで一気に下がったのかと錯覚する程の怖気が走る。
「失せろ。この道は私が通る。」
相手に魔力をぶつけるだけのシンプルな威圧。それ故に相手はグレースとの力量差を強制的に理解させられる。知能が無い奴らは多少ビクつくだけだが知能がそれなりにあるものがくらえば本能が逃走を選択する。
『面白い。貴様程の強者ならば我を喰らい尽くしてみるがいい!!』
だが、一定以上の知能を持ち尚且つ魔族的な破滅思考を持ち合わせているのなら、話は別である。
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