第28話 王都のギルド
王都の検問にてグレースは引っかかっていた。
「えー、身分証?」
「はい。」
「ギルドの会員証じゃダメなの?」
「明らかにこれは偽造でしょう。貴方のような少女がSに分類されている訳ありません。これでも、王都の門を任される身、Aランクまでの者なら全て顔を覚えています。」
「うーん、ならいっか。歩けばいいや。」
くるっと方向転換し目的の場所へと徒歩で向かおうとすると後ろで凄い音が鳴った。具体的には人体が破壊される時に鳴る奇妙で独特な音、当然そんな音が聞こえれば振り返る。
「馬鹿者!!お前Sに喧嘩売るつもりなのか!!緊急報告聞いてなかったのか!?居るだけで周囲の気候を変える程の冷気を放つ事が出来る魔女。姿は水色ショートに白のワンピース、背丈は平均的な10〜12歳前後の女児。瞳は雪の結晶の形をしていて髪と同じく水色、口癖はロマン。社交的で無意味なトラブルを嫌うが邪魔をするなら殺害も躊躇しないなど。色々報告来てただろ!!この大馬鹿者が!!!」
「あらら、そんなに有名になっちゃったの?目立ちたく無いんだけど…。それにどんな化け物として報告されてるんだよ。私は普通の女の子なのに…。」
その後顔が変形した人に普通に通されて非礼を詫びられた。…この世界って割と簡単に身体変形するの?てか、あの状態でこの後の仕事続行出来るの?私の事とやかく言えなくない?顔が変形した人に話しかけられるの普通に怖いんだけど…。
取り敢えず入ることには成功したしギルド探して目的の仕事あるか探す。雪の街は世紀末みたいな人達が多かったけど王都ともなると普通の人とかいないかな。なんなら、イケメンがいてくれたら目の保養になるから嬉しいんだけどツラがよれば命の危機がある場所なんて来ないだろうし無意味な期待かな…。
そんな事を思いながらギルドに入るとまぁ、期待はことごとく裏切られることとなった。王都といえど世紀末。こわもて多すぎ。顔怖いし酒の匂いヤバい。鼻ひん曲がる。
「おお、噂の氷の魔女だ。」
「マジだ。手合わせしたい。」
「こんな場所に何のようかな?」
「私達殺しに来たとか?」
「でも、社交的で無意味なトラブル嫌うって噂だよ?」
「本当に見た目は少女なんだな。」
などなど、反応は様々であるが襲いかかってくる人は居ないし特に問題は無いかな。…って受付はむさ苦しいおっさんじゃ無くて顔もスタイルもいい美女。発育良すぎじゃない?整形かな?
んー、ここは邪推はやめて無邪気な少女演じるべきか。あまりにも根も葉もない噂が広がり過ぎてる。ここは王都のギルドだし新たな噂を流すにはうってつけ。ふふふ、魔女なんて不名誉を普通の少女に塗り替えるチャンス。逃すわけが無い。ロマンのためならプライドも肉体も何もかも捨て去る覚悟は既に出来ている!!
「おばちゃん、この国方向の護衛クエとかない?」
「おばちゃんでは無くお姉さんね?そちら方向でしたらそれなりに大手の商人が出しているはずですが応募しますか?」
「お願いー。」
「了解致しました。しばらくお待ち下さい。」
「はーい。」
「なぁ、手合わせしようぜ。手合わせ。お前強いんだろ?ヤバいんだろ?心踊るぜ。」
受付と話し終えるとガチムチの大男に声をかけられた。
「でも、貴方は見るからに魔法職じゃ無いでしょ。魔法使いに近距離なんて瞬殺、かと言って魔法使いの間合いで近距離職は瞬殺。無意味だよ。」
「いや、やろうぜ。手合わせしようぜ。お前強い、強い奴倒せればもっと強い奴。手合わせしようぜ。」
何?この世界戦闘狂がデフォなの?
「やめとけやめとけ、お嬢ちゃんが困ってるだろ。それにSにBはどう足掻いても勝てねーよ。疾風迅雷の魔法職にも敵わなかったんだから結果は目に見えてるだろ。」
「疾風迅雷?」
何故この世界で四字熟語が?言語完全に違うんだけど…、翻訳してそうなるって事は同じような言い回しの言葉がこの世界にはあるって事かな。
「あぁ、この国に滞在していた唯一Aランク冒険者だけで構成されていたパーティーの名前。全員スピードが他のAランクより頭二つ抜けてるぐらいのヤバさだから疾風迅雷。本人達が名乗ったわけじゃ無くてパーティー実績から二つ名としてつけられたパーティー名さ。」
「あー、あの色んな種族が居たチームの名前か。あのじゃれ合いはちょっと引いた。」
「え?あのパーティーに会ったのか。お前相当運がいいぞ。奴らはリスク管理が上手く基本的にどこに滞在しているかは不明、どこかの国で実績上げたと思ったら翌日にはそこから数千キロ離れた国で実績を上げたり移動速度もありえない程速い。コイツも幸運で会ってるんだよなー。俺も一眼見たかったなー。」
おー、あの人達割と有名らしい。それにしてと移動速度がおかしいのはこの世界の常識では無かったみたい。やっぱ、会う奴会う奴が皆上澄みなんじゃ無いか?運悪過ぎでは?
「お待たせしました。許可が降りたので三時間後に出発するとの事です。」
「おばちゃんありがとうー。」
「だから、おばちゃんじゃ無くてお姉さんね?」
「はーい。」
「わかってる?」
「うん!じゃあ、集合場所で待ってるから。今日はありがとねー。」
それだけ言うとグレースはギルドを出て軽く時間を潰しながら集合場所へと向かった。
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