第27話 堕天使の情報

「本当この世界クソ。魔王クソ。戦争が楽しみだ?頭イカれてるし、話合わない。時間感覚が別種。理解不能。」


グレースは非常にイライラしながら移動していた。堕天使との契約で入手した情報を元に最もロマンがありそうな遺跡がある場所を目指していた。


「流石にこの距離だと馬車とか借りるべき?この世界の文化水準から見て馬車が移動手段だろうし、でも私運転出来ないよ?無免許だし、そもそも馬に乗った事も操作したこともないし、この世界の通貨持ってないから借りる金も無い。…まずは馬車とそれを扱う人を雇うための金を作るのが先決か。適当にモンスター狩りでもする?いや、私殺し合い嫌いだし、そもそも装備無しで突っ込んだら痛いじゃん。ブッチした時は頭完全に飛んでるから全然痛み感じないけど、ブッチする訳にもいないし…。ギルド行って適当に安全なクエスト受けるか。いや、目的地の方向の護衛クエスト探していく方が目的地に近づけて金ももらえて一石二鳥だし、そっちだな。うん、でもこんな幼気な女の子にくれるかなー。」


因みに幼気な少女を自称しているが前世も今世も見た目は年相応だし、なんなら黙って何もしなければ美少女の部類である。と言うか何もしなければクラス一モテるのは間違いないだろう。まぁ、そんな事グレースが出来るわけが無いので魔女やら変人やらと形容されるに相応しい所業を普通に行うんだが…。

この混沌とした世界でも殺しに躊躇ない人材は魔族を除くと少ない。多少なりとも殺しに罪悪感を感じる者が多いのだがそれすらなくグレースは殺しを行える。当然そんな様子を見られれば相当な狂人と認識されるのは仕方がない話である。それが無くてもロマンロマン狂ったように口にして目的や作戦のためなら自傷や他人の犠牲などに躊躇ない所が目立つためどちらにせよ、グレースは現地人から見ても頭のネジが全部外れた狂人である。


「取り敢えず、隣の国に出てから考えるか。それまでは気ままに歩こう。えーと、地図によると隣国まで徒歩で数百キロ単位での移動…。やっぱ先に馬車だな。うん、百キロ程度なら歩いたけどその数倍はちょっと現実的じゃ無い。近くのギルドがありそうな街は…首都か。いや、王都って言った方が正しいのか?規模的にはそれぐらいっぽい。嫌だなー。首都とか警察沢山で面倒くさいんだもん。雪の街で全部済ませとけば良かった!!今更戻るのも王都行くより手間だし、王都行くけど警察面倒…。小言多いんだもん、警察嫌い。だって被害者私しかいないのにネチネチネチネチ…暇か?って言いたくなるレベル。そもそも私の体なんだから壊そうが無くそうが勝手じゃん。あー、昔のこと思い出したら更にイライラしてきた。」


パキパキ…。


「あーもう。この体質もクソすぎ。多少ムカついただけで目立つじゃん。モブで居続ける事がロマンを安全に追うコツなのに…。」


本人に自覚は無いが前世でも普通にモブではなかった。良くも悪くもどこでもその奇行が目立つため変わり者という評価をされていた。だが、それでも友人と呼べる存在は何人もいたため相当なコミュ強変人である。


「でも制御はしやすくなってるし…。と言うかこの世界に来てから疑問だったんだけど私の体力増えてない?昔は2、3日寝ないだけで相当な疲労が全身に溜まってたのに全然眠くならないし疲れない体になってる気がするんだけど。まー、王都へ急ぐか。この辺の地形的に野盗が出てもおかしく無いし、か弱い女の子なんて丁度いい獲物だし。」


因みにグレースの体力は増えていないし、か弱い女の子でも無い。前者は環境適応の効果で体が適応した結果であり、後者は魔王やその幹部とやり合える実力が証明している。見た目は年相応のためそう見えなくも無いが恐ろしい程の魔力量を持っているためある程度の修羅場を乗り越えてきた奴らには少女の皮をかぶった怪物にしか見えていない。


「ん、可能性なんて考えてたら頭パンクする。それより確実なロマンが待つ遺跡に!!あー、もう堕天使からもらった情報だけでも唆られる。頭が溶けそうなぐらい。だって、死がない堕天使の情報で最古の遺跡なんて言われたら行かない訳に無いじゃん。ロマン中のロマンよ。知らない世界で当然知らない歴史の生物が初めて作った遺跡…未知で満ちているに決まってる。あー、何があるのか早く見たい、知りたい!!さー急ごう急ごう〜♪ヤバいロマンが待っている〜♪」


グレースは急に不機嫌から上機嫌になると急いで王都へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る