第26話 魔王の秘密
グレースは魔王に弁償させて飯屋で昼食を魔王と共に食べていた。
「娘に甘えられた事ないし新鮮だったな。難点はキレるたびに内部から氷漬けにしようとしてくる所ぐらいか。」
「お前が一々神経逆撫でするような事言ったりするからだろ。年頃の女の子に対する配慮が無い。あまりにもなさすぎる。」
「そうか?俺の若い頃は…。」
「おっさんの話的にお前の歳で若い頃なんて語られたら紀元前じゃん。そこ基準にされても誰もついてこれないに決まってるじゃん。」
「いやいや、俺の若い頃なんて数百代前の魔王が元気に統治していた時代だし、つい最近の話だぞ?」
「あー、うん。そだね。」
「なんだその全てを諦めたような顔は!俺何か変な事言ったか?言ってたのか?」
「ご飯食べてる途中にそんな顔近づけんな。気色悪い。後普通に行儀悪いし。」
「お前はこれからどうするんだ?」
「どうするもこうするも旅を続けるけど。遺跡の情報があったからそっち行くつもり。」
「ん?その辺にある遺跡なら何がどうあったかその正体はなんなのか。その程度のこと教えてやるぞ。同族やエルフが言う遺跡に該当しなければ大体現物を見ているからな。」
「それじゃあロマン無いじゃん。私は正体が知りたいんじゃなくてロマンを摂取したいの!!未知、どうしてそうなったか想像もつかぬ程の謎。そこには無限のロマンが詰まってるのにそれが分かったらロマンが霧散するじゃん!!」
「?」
「はぁーー!!やっぱお前と一緒にいるとロマンの方から逃げていくって予感も当たってたのか。勘じゃなくて予感まで的中し始めてる…意味分かんない。」
「勘も予感も同じようなものだろ。」
「勘はバンって何がどうなるって言うのが来るけど、予感はほわほわって感じで確実にこれ!!って感じじゃ無いから全然違う。」
「同じことだろ?」
「…はぁ。ご馳走様。」
グレースは体表から冷気を出し目眩しをして魔王の前から姿を消した。
「最後まで演出凝ってるな。割と造形センスがあるのか?スキルの熟練度も年齢に不相応、魔力や魂の熟成度から見て新芽なのは間違いないから嘘では無い筈だがこれが天賦の才って奴か。才能ある奴は羨ましい。ある程度才能があれば自力をひたすら鍛え続けるハメにならないからな。マスター、コーヒーもう一杯くれ。」
魔王はおかわりしたコーヒーを嗜みながら呟く。
「悪魔との契約すら容赦なくやってしまえる精神異常者、その牙が最も鋭くなった時、今度こそその命を頂こう。」
『彼女と同じく私と契約している君が言う?スキル封印なんてチートスキルを手に入れるためにどれ程の贄を払ったか忘れたの?彼女が払ったのは精々自分の片目と魂の一部だけ、君に比べれば無傷みたいなモノでしょ?』
「五月蝿い目玉コレクター。魔王とは絶対者、大地に背中をつけることは許されないんだよ。俺は強くなければならない。されど、殺し合いはしたい。それが魔族としての本能なのだから。それにどんなに我慢を重ねても本能には抗えない。」
『ふふふ、君が何を望み何をしようと別にどうでも良いよ。私は貴方が破滅するまでを見たいだけ。私達は暇なんだよ。生も死も娯楽も何も無い世界でただひたすらに世界維持のための仕事と上との橋渡し、つまらない。つまらなすぎる。私達は皆生き物の一生に飢えているんだよ。どう足掻いても成れないモノへの憧れは酷い渇きと飢えだけを与えてくるのだから。それに私達を悪魔呼びは酷いと思うよ。私達は君達生物と違い嘘は付かない。こちらから契約破棄もしない。そういう風に出来ているから。…私はただ美しいモノを愛でながら君達の人生と言う一本の映画を鑑賞したいだけさ。悪魔なんて呼び方より鑑賞者とでも言って欲しいね。』
「あれだけ好き勝手やって鑑賞者ね…。」
『労働の対価を請求しただけさ。君の人生はあまりにも平凡で面白味にかけるから適正価格を請求しただけさ。全てを取り返したくば人生と言う名の舞台で精々醜く舞い踊り私の想像を超えてみよ。我々との契約などと言うドーピングがなくとも我々を楽しませることが出来ると証明して見せろ。まぁ、私は気長に待ってるよ。魔王の因果と因子を持たぬ魔王よ。』
「…本当お前達は身勝手で無責任な奴らだな。」
魔王はコーヒーを飲み干すと会計を済ませ何処かへと消えてしまった。
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