第25話 魔族の生態

「あー、後処理面倒くせぇ!!まーさんあんたこれからどうするつもりだよ?」


「あー、お前まだいたのか異世界人殺し。」


「逃げるに逃げれねぇよ!!流れ弾を回避するので手一杯だったわ。まーさんこれ、どう説明したらいいんだよ。お前の後処理ぐらい自分か部下にやらせろよマジで。魔王にも成って自分のケツを拭けねぇのかよ。拭けないなら他種族の領土で暴れるのやめてくれよ。」


「…なんでおっさんとこの人が仲良さそうなの?」


「おっさんの母親がちょっと関係あるんだよ。そのツテで他種族の領土でコイツが馬鹿やった時の後処理までやらされてるんだよ。おっさん殺し専門なのに…。まぁー、おっさん勘は当たってた訳だし後は勝手にやってくれ。おっさんこれ以上狂人共の面倒見たくねぇ。上には適当に誤魔化しとくから後はお前らがどうにかしろ。おっさんこれ以上関わる気ないから!!」


「魔王をコイツ呼びって…。」


「別にいいだろ。コイツは頭おかしいから己を脅かす存在がポップしたら大事に大事に育てて収穫してるんだが、こっちからすると力を持った異世界人は皆馬鹿みたいな行動を起こすからすぐにぶっ殺してぇ所我慢してやってるんだから。おっさんの仕事は悪党の暗殺なのにそれを魔王如きの一存でやめてるんだからよ。マジでまーさんいい加減にしてくれねぇか。」


「魔王を舐め腐りすぎでは?」


「舐めてねぇーよ。互いに殺せない関係だからこうなってるんだよ。俺はまーさんが魔王に成った時点で殺せなくなったし、まーさんは俺が異世界人殺しを続けている限り不穏分子の排除と言う仕事をしている以上軽率に殺せない。てか、仕事辞めてもまーさんが俺を殺すと母親が出張ってまーさんもタダじゃ済まないからお互い手出し出来ない。分かる?」


おっさんは相当イライラしてるらしく魔王が目の前に居るのにこの態度である。因みに魔王は魔王に成った時点で魔王という肩書きが名前となるので意図していないがグレースも魔王を目の前で呼び捨てにするという無礼を働いているが魔王は一応敗者だと思っているので気にしていない。普段なら即刻処刑している。


「お前の母親には結構痛い目見させられたからなー。あのクソエルフなんで勇者や異世界人より遥かに強いんだよ…。一応、歴代最強とか謳われてるのに一方的にフルボッコよ。スキル頼りよりフィジカルと技術頼りのが怖い。おーし、とっとと買い物終わらせて戦争の準備するかー。」


「その魔女はまだ収穫する気ねぇーんだな。」


「まだまだ伸びしろがある。と言うか恐らく今の状態が初期値だと思う。少なくとも12の知識量では無いしその年で持ってていい技術でも無い。これからが楽しみよ。なんなら魔王軍にスカウトしてもいいぐらいだ。下手な魔族より全然強いし幹部級はかたいな。」


「お断りしまーす。私は争いなんかにロマン感じません。」


「殺し合いのセンスピカイチだと思うけどなぁ。それに楽しそうだったじゃん。もっと強くなってどんどん殺し合おうよー。」


「いい歳したおっさんがダル絡みしないでください。とっとと弁償して消えてください。」


「冷たー。俺娘にすらそんな扱いされた事ないのに…。なんなら、沢山殺し合い出来るから養子にしてやってもいいと思ってるぐらいはお前のことかってるのに…。」


「まーさん、流石にそれはキショい。何千歳なのかは知らないけどその歳で12の子供にその発言は完全にロリコン超えてる。赤ちゃんに発情してるみたいなもんだぞ。」


おっさんがグレースに耳打ちをする。


「魔族の殺し合い宣言は人間で言うところの告白に近い。魔族は生殖行為に快楽を覚える者は少なく、人間で言う生殖行為のノリで殺し合いしてお互いの相性を確かめ合う。お前は魔族の王に見定められた女って事よ。しかも、魔王が養子取るなんて前例は無いしそこまでの特別待遇をしてまで欲しい女って訳、気色悪いだろ?」


グレースの背筋に悪寒が走る。


「ちょ、何吹き込んだんだよ。俺がゴミを見るような目で見られてるんだが!?」


「自分で今日の発言後で振り返れ、殺し合い後の高揚の余韻が抜けた時ぐらいにな。じゃあ、俺は適当に誤魔化してくるからお前ら街ではやるんじゃねぇーぞ。わかってるな?俺はお前らの相手したくねぇーもん。特にまーさんな。俺の時はスキル封印とか言う縛りプレイしてくれねーんだもん。」


「お前の場合ほとんどスキル持ってないし、使うデメリットの方が大きすぎる。」


「当たり前だろ!!そうしてくれないと勝てないぐらいの実力差があるんだからな。魔女の方は勝率1%ぐらいはあるしまだマシだがほぼ死ぬしやりたく無い。おっさん調子乗った異世界人とガチ犯罪者以外殺す気ないし、おっさんがガチで殺す気で行っても再生に毒も呪いも効かない魔女なんて返り討ちがオチ。嫌だよ体の半分以上消し飛ばされても頭飛ばされても動いてくるし、スキル封印出来なきゃ秒で治る奴殺せとか。そんな無茶で馬鹿な行為はするつもりねぇーんだわ。じゃーな。」


それだけ言い残すとおっさんは一瞬で消えた…。やっぱこの世界って瞬間移動がデフォなの?


「アイツの息子だなぁ…。」


「キモ…。」


おっさんがおっさんにしみじみしている光景はなんとも言えない空気感だった。


「お前やっぱ性格悪いだろ。初対面の相手にキモは無いわー。マジないわー。」


「初対面の相手を言いがかりで殺そうとしてくる方があり得ないだろ!?」


「いやだって、痕跡はお前が犯人って言ってるし、お前の使うスキルとか色々観察してもお前が犯人なのに他に誰を疑えと?しかし、救難信号を出す暇もなく消された所を見るに一瞬の出来事の筈なのにお前の手札だと全然殺せるけど一瞬は無理だし意味わからん。」


「意味分からないのはこっちだよ!!魔王の威厳皆無じゃん。」


「うん、だって部下居ないし別にいっかなーって。それにしても戦争楽しみだなぁー。あぁー、誰が俺を殺してくれるのかな。この前の戦争とは趣向を変えてみようかな?この前は後ろでドンっと構えて待ってたけど誰も来なかったし今度は前線に…。でも、他の奴の楽しみを奪う訳にはいかないから武器は縛って…。」


魔王は魔王と思えない程ニコニコでそんな事を話していた。当然殺されるまで平和な世界で生きていたグレースはドン引きだが魔族にとっては戦争は娯楽の一つ、殺し殺され圧倒的な実力か運がいい奴だけが生き残る。戦場は魔族にとっては理想郷なのだ。しかし、魔族とて他種族と仲悪くなりたい訳では無いのでその理想郷を手放してまで他種族に足並みを合わせようとしたが四天王一人暗殺と言う裏切り、当然溜まっていた不満が爆発。犯人がどうあれ戦争が始まるのは時間の問題だった。


「勝手に盛り上がるのはいいけど早く動いてくれません?お前といるとロマンの方から逃げてる気がしてならないから早く別れたいんだけど。とっとと街行って店行って弁償するだけなんだかさ。」


「はいはい。女の子はみんなせっかちで困っちゃうよ。」


「ぶっ殺すぞ!!」


「殺し合いなら喜んで。てか、女の子なのに女の子扱い嫌なの?」


「違うわ。一々一言多いんだよ!!おら、いつまで経っても動かないなら引っ張ってく。」


「あらら、困った体質だね。俺の腕凍りついてるよ。抵抗ない奴なら秒で全身氷漬けに出来るだろうね。…あれ、割と君って短気?魔力は感情の強さによって吹き出し、質も変わるけど、お前戦ってた時より…痛い痛い痛い。分かった分かった。」


「口ではなく足を動かせ。」


「ひえー、怖い怖い。こんなグイグイ来るのは妻を思い出すなー。怒らせるたび半殺しにされてたっけ。あの頃は楽しかったなー。あの頃は…。」


「おっさんの思い出話なんて微塵も興味無いからもう喋るな。」


グレースは魔王を引きずりながら目的地へと向かった。



作者解説“種族について”

この世界には大きく分けて七種類の高い知能を持った人型種族が暮らしている。

魔族…角や縦長の瞳孔が特徴。

人族…一番数が多い。

獣人族…動物の特徴を持っている。

小人族…子どもぐらいの身長しかない。

耳長族…金髪しかいない。

魚人族…ウロコやヒレがある。

亞人族…雑種。

“天寿を全うした場合の寿命”

人族<魚人族<<獣人族<<<小人族<<<<<耳長族<<<<<<<<<魔族

“実際の寿命”

魚人族<人族<<獣人族<小人族<<<魔族<<<<耳長族

※亞人族は交配によるため除外。

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