第21話 取引完了
『さて、削りの作業に入りますよ。まぁ、聞こえてなんていないと思いますが。』
堕天使はそう言いながらグレースの胸に腕を突っ込み何かを取り出した。
『はーい、これが魂ね。やっぱあの方は仕事が雑いですね。おかげで私が得できるから良いんですが。上の方々の力を奪い取り吸収し続け私も上の方になりたいんでね。だって、お仕事面倒なんだもん。上の方々ミス多すぎ無能多すぎ皺寄せ来すぎ。それでいて、私は悪魔だのなんだので恐れられて悪者にされるんですよ。やってられねーです。』
ぶつぶつ文句を言いながら削りの作業へ入った。
「あぅ、あ、あ、あぁ゛ー!!!」
『発狂する程痛いでしょうが我慢してくださいねー。…あぁ、なんと愛らしい絶望と悲鳴。やっぱ、削りの作業の時は録画録音しておいて正解ですね。私、病みに虚無が混ざった瞳が大好きなんですよー。とても愛らしい。鉄とアンモニアの匂いがし始めましたね。この体の拒否反応もとても愛らしい。貴方は全てが検体になりうる稀有な存在全て採取させていただきます。特に血液は様々な使い道がありますし漏れ出てしまった分は頂きます。』
グレースの身体は常に悲鳴を上げながら皮膚の薄い部分からは血がとめどなく流れ出て、下腹部からは全てを吐き出すようにアンモニアが流れ出る。
『血は体温より少し高いぐらいが一番香ばしい。美しい…。見惚れてなどいられない。手元が狂えば折角の観察対象が死んでしまう。それは面白くない。』
堕天使は慎重にグレースの魂をいじくり回す。削る度に悲鳴は大きくなり、悲鳴が大きくなる度に堕天使は高揚を隠せなくなる。
『あぁ、頭がホワホワし始めました。そろそろ耳栓をした方がいいですね。身体が興奮し始めています。瞳がより深く病みより虚無へと変化しています。ダメです。身体がおかしくなりそうです。』
因みに堕天使は生物が悶え苦しむ姿がどうしようも無く好きであり、虚無と病みの瞳に限ってはコレクションが大量にある程好む。人間で言う所の性癖である。堕天使の私室には生物が壊れるまでを記録した大量の録画録音と血の中で浮かぶ本物の目玉が沢山置いてある。それ以外のモノはほとんどなく生活感は全く感じないが睡眠や食事などほとんどの事が必要無い堕天使にとっては至高の部屋である。
慎重に削り続ける事数時間、堕天使にとっては驚くべき事件が起きた。
「あははは、何これ滅茶苦茶痛いじゃん。なるほど、魂ってこんな感じなのね。」
『こりゃ、驚いた。魂削られながらも意識を取り戻し普通に話し出すとは…。私が言うのもなんだが本当に貴方生物?やってる事的に私達や上の方々ですら耐え難い苦痛の筈なんだけど…。』
「そこにロマンがある限り私は何でもするし出来る。あー、もう既に右目は見えないのね。仕事が早いね。」
『うーむ、折角眠らせておいたのに。起きた所で暫くはこの体勢のままですよ。今、慎重な作業が求められる場面なので余計な事をされて死なれても困りますから。』
「うん、魂弄ってるんだから邪魔したらどうなるかぐらい私でも想像つくしこのままでいいよ。流石に夢半ばでくたばるのはごめんだし。」
因みにグレースの体勢は大きな机っぽい所に手足と首に拘束具をつけれれて固定されている。漏れ出た体液は様々な魔法道具によって仕分けされ瓶に詰められている。そのため服などは全く汚れていない。
『まだまだ作業は続きますよ?静かに寝ていた方が精神が持つと思います。』
「問題無いー。ロマンが勝っている内はその他の事などどうでもいい。」
『あははは、ここまでくると狂気すら超えたナニカですわ。』
堕天使は一通り笑い終えた瞬間急に素に戻り作業に戻った。
「あはは、すっげ。意思に反して身体が暴れる。痛みなど強靭な意思で飲み下せ、体の反射をなど潰してしまえ。」
いつ、こう言う攻撃してくる敵が出てくるか分からない以上慣れは必要。内臓が一気に複数潰れるのは背後から不意打ち突撃を猪にされた時に経験してるし、その後も普通に殴り殺せるぐらいの体力は残ってたから基本的肉体の欠損や損傷によるパフォーマンスの低下は無いけど、これはキツイ。話が別。
『凄いね貴方痛みとか感じないの?』
「滅茶苦茶痛いから涙目になって意思に反して身体が動いてるんじゃん。」
『意思が魂すらも凌駕してる…。おっかしいなぁ。こんな事例聞いた事ないよ。自分を曲げないと言うより、曲がる事を知らないって感じか。一度決めた事は死ぬまで貫き通す。頑固とかとはまた違う…。あー、もう、これだから生物は面白い。創造主の想定や想像すら超える奇行を見せる。スペック的には一般人と変わらぬ肉体でありながらそれ以上の実力が出ていた要因判明か。うーん、これは一回創造主の方に資料渡した方がいいな。』
そのままグレースが再び意識を失う事無く魂を削る行為は終わり、対価を受け取った堕天使は契約通りこの世界に蔓延るグレースがロマンを感じるであろう情報を全てグレースの脳に刻み込んだ。
『さて、これがあんたのバトルスタイルに合った装備。全部持ってていいよ。と言うか装備していきなよ。私はホクホクで機嫌がいいから終わったら入り口まで移動させてあげる。…そんな疑いの目で見なくてもただのサービスだから安心して。』
「装備と言うかただの白のワンピースと付け爪?」
『そうなのね。偽装上手いでしょ。着てみればわかるよー。』
取り敢えず今着ている服を亜空間にしまい渡された物をつけてみる。
「軽い…通気性よし動きやすやよし。つけ爪の方は?」
『凄いでしょ。その見た目でその辺の国宝よりも性能いいんだよ。つけ爪の方は魔力流し込んでみな。真価を発揮するよ。』
言われた通りにしてみるが何も変わらない。
「違いがわからない…。」
『その辺の壁握ってみなよ。』
言われた通りにするとまるで豆腐のように壁が崩れた。
「わー…。」
思わず引いてしまった…。素手なのに破壊力おかしいだろ!?
『凄いでしょ。貴方の場合咄嗟の時に素手で殺そうとする癖があるからそこをちょちょいと終わるようにしたの。だって、貴方戦いなんかにロマン感じてないでしょ?』
「それはそうだけど、これを生物の身体でやるとなると…。」
『なると?』
「時短でロマン探しに割ける時間が増えて良し!!」
『殺しとかに躊躇しないのね。平和な世界から混沌とした世界に送られた生物は他者を害することを恐れ淘汰されるのが常なのに。』
「逆に聞くけど何で邪魔してきたモノを壊しちゃダメなの?」
『あー、うん。そうだね。そうそう、その装備達は魂に紐付けされてるから譲渡や売買とかは出来ないから気をつけてねー。いい取引だったよ。…また何か必要になったらおいで。』
「はーい。」
『帰還する時はその魔法陣の上に乗れば良いだけだから。』
「わかったー。」
堕天使との取引を終えた私は指示に従い魔法陣の上へと移動し長ったらしい階段をスキップして一階へと戻った。
『ふふふ、本当にいい取引をした。彼女が向かう破滅の道はこの目のように暗く空虚になるか。あの目のように明るく…は無理。まぁ、観察対象は後回しでいいや。それよりも混ざった者の分泌物の解析を先にするか。ふふふ、魂に混ざったのが肉体にどう影響が出ているか。久しぶりに楽しくなるぞ!』
堕天使はぶつぶつ言いながら壊れた扉を瞬時に直すと、グレースから採取したサンプルを無数の魔法道具を使い解析し始めた。それと同時進行でダンジョンの再構成及び新層の生成を行い研究中に冒険者が最下層に来れないように手を打った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます